2019年8月23日金曜日

2019 J1リーグ 第23節 ヴィッセル神戸戦

今回予習した試合は無し。
この試合も神戸まで現地観戦に行ったことや札幌戦を書き上げるのに時間を要したことや単純に敗戦のショック(これが最も大きい)等も理由としてあるが、戦術以外のイレギュラーが気になって時間をかけて分析する意義が少なく思えたため。

映像確認による予習を一切しない代わりにデータを確認。
33得点39失点という数字はリーグワーストの清水の42失点に次ぐ失点数。
運動量はあまりなさそう。
平均ポゼッションは57%。
ただし現監督就任以後、つまり15節以降のみで計算すると53%。
ちなみに神戸が今季最高を記録したのは8節レッズ戦の70%。

例によって夏の大補強を敢行しスタメンだけで酒井、飯倉、フェルマーレンの3人が。
サブも含めれば藤本と計4人ものメンバーが夏の補強により加入した選手で埋まった。
システムは前節大分戦だけ見ると3バックで面食らうが、ガンバ戦、マリノス戦、湘南戦は4バックなのでこっちが主体なのだろうと思って蓋を開けたら当日は前節同様の3バックだから驚いた。
スタメンはウェリントンを田中に、初瀬を酒井に代えてきた。
ミッドウィークの天皇杯からはGK飯倉を除くと大崎、山口、田中のみが連戦。
一方レッズは長澤を杉本に代えたのみ。
天皇杯からの連戦はGK西川のみで他はフルターンオーバー。
この日は札幌戦でしつこく指摘した宇賀神と関根の配置を入れ替え、左に宇賀神、右に関根でスタート。

序盤は神戸がボールを握る。
レッズは前線のプレスが全くかからず主にサンペールからレッズDFラインとの間に上手く配球される。
サンペールが自由にプレーできた原因は、酒井が加入したことでも飯倉がビルドアップに参加して数的優位を作ってくることでもなく、リーグ戦では6試合ぶりのスタメンとなった杉本のプレスの拙さとエヴェルトンのマークが甘かったことと思われる。

15分を過ぎたあたりから飲水タイムでの監督の修正の効果か、サンペールのマークが徹底されたせいか、武藤と興梠が左右入れ替わったせいか、ようやく前プレスが機能し始める。
GK飯倉までボールを戻させ長いボールを蹴らせることにも何度か成功。
決定機と呼べるほどの崩しは成功しないものの徐々にシュートが増えていた前半終了間際に失点。
前掛かりになったところをカウンター一発で沈められるというミシャ体制下を彷彿とさせる失点シーンだった。

後半も引き続きリスクをかけて前掛かりに攻撃を仕掛け相手を敵陣に押し込み(1度だけ)決定機も作ったが58分に神戸に追加点を奪われる。
こう書くとリスクをかけて前掛かりになったのなら失点は仕方ない、さぞ鋭いカウンターを食らったのだろうと思われることだろうが神戸の2点目はレッズの守備がセットされた状態から生まれた。
起点はやはりサンペール。
前半途中から前プレスと徹底マークによりサンペールに自由に持たせず出させずできていた守備がこの瞬間のサンペールは完全にフリーで浮いていた。
そしてサイドチェンジで一気に前線へ供給し西→田中→山口と繋いでゴール。
山口にマウリシオが全くついて行けずこちらもエリア内で完全にどフリーだった。

おそらくイニエスタを警戒して戻りが遅れたであろうマウリシオ
エヴェルトンがサンペールに、青木が山口についていればよかったようにも見えるが・・・


その後、宇賀神を山中に、エヴェルトンを柏木に、興梠をファブリシオにそれぞれ交代したものの状況は全く好転せず。
むしろシュート数もポゼッションも失点前より低下し、ついにはPK献上によりダメ押しの3点目を奪われる。

以下は感想になるが、3連続ドローからの3-0での敗戦、しかも相手は低調な神戸ということで悲観する声が多いようだが個人的にはそこまで悲観的な敗戦だと思っていない。
アウェイ札幌、アウェイ水戸、アウェイ神戸というかなりの移動距離のあるレッズのアウェイ3連戦に対し、神戸はアウェイ大分、アウェイ大宮、そしてホームと多少マシなスケジュールであったこと。
17節アウェイ大分戦も為す術なく負けていることからも大槻監督はアウェイ連戦に弱いのではないかということ。
16節ホーム鹿島戦から漠然と感じていたことになるがマウリシオ、エヴェルトンといった助っ人外国人のパフォーマンスがこの酷暑で低調のままなのではないかということ。
これらの理由から必然では無かったにせよ負けるに足る理由は揃っていたと見ている。
アウェイ連戦はこの先も待ち構えているし、涼しくなるまで調子が上がらないから助っ人を使えないままではさらに苦しくなるだけなのでどちらも見過ごせる問題ではないが。

しかしより問題なのはやはり失点の仕方だろう。
1失点目はあの時間帯に失点すること自体が大問題だが前掛かりになって攻めた結果と思えばまだ理解できなくもない。
ただ札幌戦の失点と同じような失点だったことは時間帯と同レベルの問題として捉えるべき。
致命的なのは2失点目。
カウンターを食らったわけでもなくレッズの選手全員が自陣に揃っているはずの状況で、サイドチェンジ一発で前線で起点を作られた挙句ガラガラのエリア内でフリーでボールを収められてしまったあのシーン。
後半ATのヘロヘロになって体力も集中力も切れてしまう時間帯というわけでもないにもかかわらず。
この試合唯一のポジティブな要素としては、序盤の一方的な展開を耐え修正し盛り返したこと。
しかし2失点目はその修正したはずの問題が再び露呈していた。

今のレッズは「相手が下位だから」とか「相手が低調で連敗中だから」とか相手によって勝ち負けできるフェーズになく、攻守のバランスを見失いかけているように見える。
次節松本戦からはまた5連戦が始まる。
連戦中の修正ほど難しいこともないため23節と24節の間のこの期間が5連戦全てに備える重要な時間になるはず。
重みが増した松本戦に一層注目したい。

2019年8月17日土曜日

2019 J1リーグ 第22節 北海道コンサドーレ札幌戦

この試合は現地観戦のため札幌まで赴いたこともあって札幌の予習は1試合もできなかった。
結果が出てから21節広島戦を見てその後初めて映像でレッズと札幌の試合を確認という流れ。

<広島戦感想>
  • ジェイと武蔵のツインタワーは脅威の高さと強さ
  • 菅と白井の両WBはクロスも抜け出しも上手い
  • 前半は確実に効いていたはずのシンプルなサイド攻撃を何故か捨てた後半の札幌
正直前半と後半で何故攻め方を変えたのかよくわからなかったが、レッズ戦でも同じ戦い方をするつもりなら
・相手の両WBを自由にさせないこと(5バックでサイドに蓋をするとか)
・深い位置まで運ばれたら中を固めて死ぬ気で空中戦に勝つこと

札幌は前節からのメンバー変更は深井を前節累積警告で出場停止だった荒野に戻したのみ。
レッズは体調不良や負傷でメンバー変更を余儀なくされた前節から前々節鹿島戦とほぼ同様のスタメンに戻り、おそらくはこれが現状の大槻監督が選ぶベストメンバーに。
唯一の違いは橋岡に代わって宇賀神が出たこと。

札幌は言わずと知れたミシャサッカーということで圧倒的にボールを握るスタイルかと思いきや、今季ここまでのスタッツを見ると言うほどでもなく平均では五分で49%のレッズと1%しか変わらなかった。
30得点、27失点という数字は札幌が前節対戦した広島と比較すると失点の多さが目立つ。

ここ2試合立ち上がりの悪さが特に目立つレッズは前半1分にCKから早くも決定機を作られ早速西川のファインセーブ。
その後もレッズのビルドアップは悉く中盤で奪われ前線までボールが届かない。
前半だけで4,5回は繰り返された光景が、
(レッズから見て)右サイドへのコースを切って左へ追い込む

槙野に蹴らせて関根へ

一気に囲んで関根か武藤へ出したところでボールを奪う
というお手本のようなゲーゲンプレスで何度も札幌にボールを奪われていた。
どう見ても右より左が得意なはずの宇賀神をわざわざ右に配してでも関根を左で使いたかった大槻監督の思惑と、左サイドに追い込んでボールを奪いたかったペトロビッチ監督の思惑が合致してしまったが故の完全にハマった札幌の守備だった。
関根のレッズ復帰後、サイドの単純な質的優位で敵陣深くまでボールを運んでいたレッズにとって、進藤を相手にした関根がサイドで何もできないのは大槻監督にとって大きな誤算だったのでは。

しかも奪ってからの高速カウンターがこれまた速い札幌。
高精度のロングボールとジェイ、武蔵らの上手さから前線で収まってダイレクトプレーが次々成功。
序盤こそマウリシオのマークで未然に阻止できていたが次第に捕まえきれなくなりレッズのファウルと札幌の決定機が増える。
30分に体を当てにきたマウリシオをジェイが逆に吹っ飛ばし武蔵へのスルーパスに抜け出し成功、西川と1対1でシュート。
36分に狭いスペースで荒野、武蔵、ジェイとワンタッチで繋いでエリア内でシュート。
40分にロングボールを荒野がエリア内で落としてつま先でシュート、と危険な場面を作られるようになる。

後半札幌はビルドアップのやり方に変化を加えGKが参加するようになる。
レッズのプレスが別段変わったようには見えなかったのであくまでハーフタイムの指揮官からの指示によるものと思われる。
ところがクソンユンのフィードは前半面白いように通っていた菅や福森のそれと比べやや精度に欠け、3本目にして荒野に出した直後岩波に奪われカウンターを食らう。
この時に得たCKをエヴェルトンがものにして3試合ぶりの先制ゴール。

およそその10分後に同点ゴールを決められるわけだが、きっかけは関根の無謀な仕掛けからだった。
やはり前半何もできなかったことが余程腹に据えかねたと思われこの一連の流れの関根はとても冷静には見えなかった。
得点を重ねリードを広げれば楽に試合を進めるのはわかるがカウンター一発で失点してしまうほどのリスクをかける場面だっただろうか?
例によってあっさり食いついてボールに触ることもできずに味方を巻き込んでずっこける岩波も大問題だったが。
先制直後の58分にリードしたのに縦に急いで即ボールロストしたシーンといい、先制してからの試合運びの拙さがいつまで経っても改善されないのは何故なのか。
結果論に過ぎないがやはり関根を左で使ったメリットが見えない割に、デメリットが大きく露呈したように思えた。

追いついてからも札幌は引き続きひたすら長いボールを蹴ってジェイに当ててセカンドボールを拾って一気にゴールに迫る。
レッズは前半にも一度だけ見られた西川のパントキックという強力無比な武器を繰り出しこれまた長いボールで中盤を省略。
互いに大味なサッカーを展開する。
後半はやはりお互いにリスクをかけて勝ち点3を獲りにいったこともあり時計が進むにつれてどんどんオープンな展開になる。
結局その後スコアは動かずドローで終わる。

以下個人的に気になったのは、先制点を挙げたエヴェルトンだが先制シーン以外は酷かった。
長澤に代わって入ったファブリシオも興梠のクロスからフリーでシュートを打ったシーン以外はチームに貢献できたとは言えず。
関根に依存するだけで勝ち点を積み上げられると思ったら大間違いだということに気付かされたことと、冴え渡る西川のパントキックが戦術兵器として十分通用しそうなことがこの試合の収穫か。

2019年8月12日月曜日

2019 J1リーグ 第21節 名古屋グランパス戦

16節鹿島戦から中3日で21節名古屋戦というのは、さすがに最近実践しているこの対戦相手の予習スタイルにはあまり時間が割けない。
それでも鹿島戦の予習を完了してから16節キックオフまでの短い時間でなんとか18節湘南戦の予習をできた。
16節の感想を書き上げた後に20節ガンバ戦の前半だけ予習できたところで21節名古屋戦のキックオフの時間になってしまった。
19節セレッソ戦を予習しなかった理由はシャビエル不在、後に怪我で離脱する米本が出ていた等のイレギュラー要素が多いと思ったため。

<湘南戦感想>
  • ラインが高く裏が狙われる名古屋
  • ビルドアップはスムーズなものの崩しで詰まる名古屋
  • 前田とシミッチが攻守に躍動
  • ファウル数名古屋10に対し湘南22(カードなし)で湘南は常に球際を厳しくプレス

<ガンバ戦感想>
  • 相変わらずラインが高くネガトラも遅いため前半からカウンターを何本も食らう名古屋
  • 湘南戦と比べるとミドルの浮き球フィードを多用
  • 太田がCBに入った最大の恩恵は吉田を1列前で使えるようになったこと、左サイドからの攻撃が目立つ名古屋
  • セットした状態の守備はガンバより余程強固で整っていた名古屋
これら2試合と他のスタッツを見た感想が
・相手はとにかくボール保持命・・・の筈
・とにかくラインが高いので裏への飛び出しと奪ってからのカウンターは常に狙っていきたい
・ガンバ戦はにわかに復調傾向か?

ここまで書き上げた現時点でレッズ戦の結果は出てしまったので結果論になるが、湘南戦とガンバ戦の2試合しか見れなかったのがやはり残念だった。
印象論の域を出ないが今の名古屋は新戦力が加わったこともあってか変化の最中にあるように見えたため。
勝手なイメージでは、ひたすらボールを握って攻めダルマになるしか能がないのが名古屋というイメージだった。
ところが、ガンバ戦ではある程度相手にボールを持たせる時間を作って引いてブロックを作っても試合をコントロールする術を見出そうとしているかのように見えた。
そしてレッズ戦でも名古屋はそれを見せた。

ガンバ戦で何故シャビエルがベンチスタートだったかまではわからないが「戻ってくればこうなるであろう」という予想されたスタメン通りの名古屋。
一方レッズは前節エヴェルトンに代わって柴戸、長澤に代わってファブリシオ、マウリシオに代わって鈴木と前節から大きくメンバー変更。
中3日で酷暑の連戦を考えれば妥当とは言えるがベンチ入りすらしていないマウリシオにはすわ負傷離脱かと肝が冷えた。

戦前、メンバー的にもスタイル的にも参考になるのはガンバ戦のほうでポゼッション的にも五分の似たような展開になることを予想した。
開始早々の失点こそ同じではあるものの予想していた名古屋の左サイドからの攻撃はガンバ戦ほど機能したとは言い難く、むしろ右サイドの前田の仕掛けや裏抜けの方が有効打になっていた。
2失点目のシャビエル等、左サイドを使うのは使っていたが当初予想していた吉田の攻め上がりよりも太田やシャビエルのほうが目立っていた。
レッズは高いラインの裏を狙う意識については皆無ではないものの決定機には繋がらなかった。

前半は25分までに被シュート数3本で2失点、ポゼッションは五分という数字以上に名古屋に完全に押されていた。
レッズもそれなりに相手ゴールに迫るシーンも作れてはいたもののゴール前でのクオリティの差が名古屋より明らかに低かった。
武藤は目の前の相手を無視するように強引な縦パスを引っ掛けるシーンが何度も見られ、ファブリシオはまずドリブルで仕掛け囲まれ苦しくなってからでないとパスを出さない独善的なプレーが目立ち、どちらも成功率の低い賭けを繰り返すばかりで得点は絶望的に思われた。
そんな中前半唯一と言っていい決定機を作ったのが青木。
パートナーが柴戸だからなのか、相手が名古屋だからなのか、最初の失点に絡んでしまった責任感からなのか、この日の青木は積極的に前に出て攻撃参加し37分の興梠へのファークロスで決定機を演出。

2失点した後も名古屋に決定機を作られるシーンが複数回ありさらなる失点も時間の問題かと思われたが、前半ATに1点返したこともあってか後半は立ち上がりからボールを握り、シュートを放ち、相手陣内に押し込む時間が続く。
近い距離でショートパスを確実に繋ぐことと、受けてから落ち着いて前を向くことと、名古屋のプレスが弱くなったこと等が原因と思われた。
時折、不用意なボールロストから名古屋のカウンターを許すことになるが単発で終わらせ前半のように立て続けにシュートを浴びることはなくなる。

柴戸に代わって入った長澤は終始ミスを連発。
ファブリシオに代わって入った杉本はアシストすることしか頭になく、山中以外の交代策はこの日も不発に終わったように見えた。
その山中も何故か杉本が投入されてからパッタリとボールが回ってこなかった。
結果的には鹿島戦同様シンプルなクロスが決定打になった訳だが、せめて杉本を投入したらサイド攻撃一本に絞るといった割り切りも必要ではないか。
杉本の武器はそれだけではないし、それだけに拘らなくともゴールに迫れていたのもわかるが成功率を見ればどちらに賭けるべきかは明白。
監督にはチームとしてやるべきことの共有と徹底を頼みたい。
もっとも、ロクにボールが回って来なかったのは前田に代わって入った金井のマークと山中のポジショニングが悪かったのもあるのでそこも含めて改善の余地があるが。

最後にマンオブマッチはこの日も再三ビッグセーブでチームを救った守護神西川。

2019年8月4日日曜日

2019 J1リーグ 第16節 鹿島アントラーズ戦

16節鹿島戦に向けて17節広島戦、18節磐田戦、20節鳥栖戦を予習した。
何故19節仙台戦だけ見ないかというと、浦和戦で乱暴狼藉を働いて出停を喰らい主力2人を欠いた仙台を相手に大勝した試合を見てもあまり参考にならないと思ったため。

3試合のスタッツだけを見ると鹿島はボールを持ちたがるとも持たせたがるとも言えない絶妙なバランスをとっている。
ただ、どちらに転んでもしっかり結果を出せるあたりやはり鹿島。
今シーズン19試合をこなし34ゴールという数字はマリノスに次いでリーグ2位。
マリノスのように圧倒的にボールを保持してシュートもバンバン打つわけではないためシュート成功率がかなり高くこちらもリーグ2位の数字。
まあ直近の磐田戦と仙台戦の結果が押し上げているのは言うまでもないが。

<広島戦感想>
  • クイックリスタートに警戒
  • 右SB永木は攻守に難あり
  • リーグ戦では4節以降ゴールの無い伊藤の決定力
  • 広島の守備が上手いせいかロブパスで前線へのフィードが目立つ鹿島

<磐田戦感想>
  • おそらくは次の仙台戦とこの試合のスタメンが現状の鹿島のベストメンバーでは
  • ひたすらボールを保持され守勢に回っていたが、危険なシュートも打たれていたため持たせていたようには見えない鹿島
  • 流れのないところから点が取れる小池のロングシュートに警戒

<鳥栖戦感想>
  • 4-4-2同士でシステムが噛み合うと滅法強い鹿島
  • お互い繋ぐことにこだわらずに浮き球のフィードが多い
  • 鹿島にしては珍しくオープンな展開になる後半
これら3試合を見た感想が
・繋ぐビルドアップはあまり得意ではないため浮き球や長いボールに対ししっかり寄せて前を向かせない
・流れのないところからゴールが奪えるため試合を優勢に進めていてもボールを支配していても油断できない
・ホームの高い勝率に対してアウェイでは若干落ちる
・スタメンが読み難い

個人的に最も参考にしたいと思ったのは広島戦。
これを書いている現時点では既に見れなくなってしまったが広島は繋ぎも崩しも他の2チームより優れていた。
もっとも、ACLで2戦してからの3戦目という条件付きのためこの試合だけを見て判断するのは不安ではあるが。

読みづらかった鹿島のスタメンだがレオシルバに代わって名古が入った以外は(こちらの想定する)ベストメンバーといった布陣。
レッズも前節からは柴戸に代わってエヴェルトンが復帰。

レッズはマウリシオのパスミス、橋岡のクリアミス、CKで競り負けてバーに救われるといった最悪の立ち上がりを見せるものの何とか落ち着きを取り戻し決定機を2度作った。
開始5分の間に作った2度の決定機はどちらも左サイドからのクロスによるものだった。
この日の鹿島はラインが高い割にトランジションが遅いように見えた。
そのためDFラインの裏を取れるシーンが前半から複数回見られた。

鹿島のビルドアップは事前に予習した通りロングボールが多かった。
ターゲットへの寄せについては、そもそもこの日のロングボールは精度が低く簡単にボールを手放すシーンが何度か見られた。
その代わりカウンター、セットプレー、スローイン等のプレーには非常に集中していてレッズはゴールを脅かされた。
回数は多くないものの鹿島は強引なドリブル突破による前進も効果的だった。

前半途中からエヴェルトンにミスが目立つようになる。
前半限りで宇賀神と交代してしまったマウリシオもパスのズレが目立ち調子は悪そうだった。
最悪の立ち上がり然り、2度の決定機を逸する場面然り、鹿島のビルドアップ然り、この日はお互いに序盤からミスが多発。
ナイトゲームにもかかわらず気温31度という今季最高気温でのキックオフとなったこの日の環境がそうさせていることは想像に難くなかった。
全体的にボールコントロールや体のキレだけでなく集中力も散漫だったせいか序盤からオープンな展開が続きカウンターの応酬が見られた。

後半頭からマウリシオに代わって入った宇賀神は慣れ親しんだはずの武藤や槙野との連係が合っておらず度々ボールロストする。
そして暑さに疲れも加わったせいかお互いにファウルが増える。
それまで殆どミスの無かった関根に立て続けにミスが発生する。
前半に輪をかけてオープンになる。
と、後半は立ち上がりから様々な変化が見られ一気に試合が動きそうな様相を見せ始める。

結果的には采配が明暗を分けたように思える。
伊藤を投入してから明らかにシュート数が増えた鹿島と山中を投入してから失点したレッズとの差。
確かに後半からミスが増え疲れが見えていた関根を下げる判断は一見妥当にも思える。
だが山中投入後、鹿島は露骨にレッズの左サイドを狙って攻撃を仕掛けていたことからも山中の守備的不安は最早周知の事実。
最終的には左サイドを土居に突破され悠々クロスを上げさせてしまったことからも、あくまで結果論に過ぎないながらも山中投入は失策だったように思える。

とは言え山中投入には2重3重の意図があったことも付け加えておきたい。
第一に前述した関根の疲労。
第二に攻撃面で全く上手くいっていなかった宇賀神。
あの出来ならいっそ右に回して山中を使ったほうがマシと考えるのも無理はない。
第三にその後に投入予定だった杉本を活かすためのクロッサーとしての役割。
これはその後実を結ぶので半分成功といったところか。
本を正せばマウリシオが負傷交代してしまったことがそもそもの誤算だったはず。
そのため橋岡を1列下げざるを得ずその橋岡も失点に絡んでしまった。
もし、マウリシオが負傷しなければ・・・。
もし、ベンチに鈴木が居たならば・・・。
もし、宇賀神のパフォーマンスがもう少し良ければ・・・。
たらればは尽きないが様々な要因が絡み合っての失点だった。

もっともレッズの失点が交代策が原因なら鹿島の失点も同様に交代策が原因だったと見ることも可能ではある。
何故なら同点時の山中のクロスに対して正対していたのは交代直後の遠藤だったから。
それまであのポジションで山中が持った際に対応していたのは永木だったが失点シーンのみ遠藤が付いていた。
とは言え永木が対峙していても79分に山中のアーリークロスにニアに飛び込んだ杉本が決定機を作っているので永木なら常に完璧に対応できていたわけでもないが。

劇的幕切れを多く演出している大槻監督が勝負師としての勘や豪運を持っていることに疑いの余地は無いが、物事には裏表があるためメリットだけに目を向けていては本質は掴めない。
今回は監督として打った博打に半分負けて半分勝ったというところだろう。
あとは想定外の事態とそれを予見する分析力、判断力の精度をさらに高めていければ勝率も上がってくるはず。