2019年7月27日土曜日

2019 J1リーグ 第20節 ジュビロ磐田戦

仙台戦は結果が出てから相手チームについて前の試合の振り返りを行なったが、今回は試合開始前に相手チームの予習をしてからの観戦。
17節川崎戦で名波監督が解任になったので鈴木秀人新監督が就任した18節鹿島戦からの2試合を予習した。

鹿島戦は2-0の敗戦。
松本戦は0-1の勝利。
勝ち点こそ17で鳥栖、松本と同率最下位なものの13得点23失点という数字は1試合少ないとは言えレッズの15得点24失点と大差ない。
両者とも決定力不足という同じ問題を抱えているように思われたがこの2試合を見た感想はレッズの抱えるそれとは質が異なるものだった。
直近の川崎戦の数字だけを比較してもそれは明らかで1-3の敗戦ではあるものの17節の磐田のシュート数は15に対し、14節のレッズのシュート数は9。
その他の試合を見ても磐田は勝っても負けても相手と同等かそれ以上のシュート数を常に出している。
にもかかわらずリーグワースト3位の得点数というのは単純にフィニッシュの精度の問題。
鹿島戦はまさにそんな試合だった。
一方レッズは相手によってはろくにシュートも打てず為す術なく負けている試合が多い。
明確に得手不得手がはっきりした試合を監督が交代した今でも続けている。
ではレッズにとって磐田はどちらになるかをこの予習で探ろうとした。

・・・が、ここまで書いたところでタイムアップ。
試合が始まってしまった。
前2試合の確認は終わっていたもののまとめるまでは間に合わなかった。
というわけで箇条書きで2試合の感想。

<鹿島戦感想>
  • ビルドアップは実にスムーズ、自ら運んでも長いボールを蹴らせても上手い高橋
  • 降りてきてシンプルにはたいても、ポストしても、スルーパス出しても、サイドに流れてクロス上げても、何やらせても優秀なロドリゲス
  • カウンター時にしっかり追い越す動きで人数をかけている
  • 陣形がコンパクトでインターセプトも多くセカンドボールの回収率が高い
  • テクニックはあるがフィニッシュの精度の低さが目に付く山田
  • 失点後も攻守のバランスを極端に崩さずその後も変わらずボールを握り続け最後まで相手ゴールに迫り続けた磐田
  • レッズと磐田の最大の違いはただボールを支配するだけでなくきっちりシュートを打ち切れること

<松本戦感想>
  • 再三決定機を外した山田がベンチスタートなのはともかくロドリゲスもベンチスタートというのは?
  • 序盤はお互いに長いボールばかり蹴り合って落ち着かない立ち上がり
  • 磐田の高いラインの裏をとられてGKと一対一になるシーンも
  • 鹿島戦同様セカンドボールを回収してからの二次、三次攻撃が上手くシュートで終われる磐田
  • 磐田はCKからあわや失点というシーンが前半だけで2度見られる(序盤の誤審とATのヘッド)
  • カミンスキーのミスを大井が値千金のヘディングセーブ
以上からレッズとしては
・2トップ外国人に要注意
・高いラインの裏を狙いたい
・シュートだけはバンバン打ってくるのでファーストディフェンスはしっかり
この程度のことしか思いつかなかった。

そしていざ当日スタメンが発表されてみると前節殊勲の決勝ゴールを叩き込んだロドリゲスがまさかのベンチ外。
アダイウトンまでもベンチスタートで大久保が11試合ぶりのスタメン復帰。
自分がレッズ指揮官ならこれは意表を突かれる起用。
後から怪我でも戦術的な理由でもないことがわかって拍子抜けしたが。
前節に決勝点を挙げたFWロドリゲスも今週の練習中の態度を問題視してメンバーから外した。
上原の追撃弾実らず J1リーグ第20節・磐田|静岡新聞アットエス

レッズはレッズで2年ぶりに復帰した関根がいきなり先発起用。
前節から阿部に代わって柴戸、ファブリシオに代わって武藤が先発した。

開始5分こそ五分の戦いであったものの徐々にレッズがボールを握る時間が増え開始9分と早い時間に先制に成功。
レッズは磐田のフォアチェックに対して1枚かわして縦に出したりサイドチェンジを駆使したのに対し、磐田はレッズのプレスに屈しバックパスでボールを下げ後ろから長いボールを蹴らされていた。
それとレッズは磐田DFラインの裏への意識がかなり強く序盤から関根や長澤が再三スルーパスを出していた。

ボールを縦に入れたら自分も上がってまた受ける。
長澤は先制した時に見せたこの動きを先制する3分前にも見せて好機を演出していた。
磐田の守備の話をすると、とにかく磐田はマークが甘くバイタルエリアという危険地帯であってもレッズの選手を易々とフリーにしパスもシュートも自由に打たせているような守備で、ボールの奪いどころをどこに設定しているのかわからなかった。

先制後もレッズがボールを握り続けるもののなかなかシュートまで辿り着かない時間が続いたが10分弱で追加点。
興梠の空振りフェイントで1枚食いつかせたのときちんと逆から詰めた橋岡へのご褒美。
3点目は事故のようなゴールではあるものの、こぼれ球に詰めた長澤と、タックルにいった足とは逆の上げなくてもいい足をわざわざ上げて引っ掛けて長澤を転ばせた新里と、1点目に続きまたしても股下からゴールを許してしまうカミンスキーのゆるさがゴールに繋がった。

後半に入ると繋ぐビルドアップが減り長いボールを蹴ったりミドルやロングを放って簡単に相手にボールを渡すシーンが増える。
そのせいか徐々にオープンな展開に傾き磐田のシュート数が増えていく。
最も大きい変化はやはり後半頭から中山に代わってアダイウトンが投入され前線で起点が作れるようになったことか。
武藤に代わって入った柏木、興梠に代わって入ったファブリシオ等、逆にレッズの交代策は攻撃にも守備にも大して効果が無かったことは対照的。

57分に試合を決定付ける4点目のチャンスでは武藤の裏抜けからのエリア内でのカミンスキーによる武藤転倒に対するジャッジはレッズにとってはその後の展開を難しくさせた。
逆に66分に一瞬の隙を突かれアダイウトンに単独でエリア内に持ち込まれあわや失点のピンチに槙野がシュートを打たせる前にノーファウルで阻止したこともターニングポイントになったように思える。

特に後半のレッズは前半に比べファウルが非常に増えていた。
橋岡とアダイウトンのデュエル、柴戸と田口のデュエルといった局地戦が各所で展開されていたことが原因だが、これが鈴木監督の指示によって意図的に仕掛けられたものかアダイウトンを投入したらたまたまこうなっただけなのかまではわからなかった。
とにかくそうして得た数々のセットプレーの一つを68分のCKでついに磐田は結実させる。
しかもこれはセットプレーを得るだけに止まらずその後累積警告による退場まで誘発させる。
その後も押し込まれシュートを打たれ何度もゴールを危険に晒すがDF陣の奮戦もありなんとか逃げ切りに成功。
ほぼ満点と言っていい前半の内容と対照的に課題の残る後半となった。

この中で最も問題視すべきはやはり交代策の不発のように思われる。
興梠と武藤という攻守においてチームトップの働きを見せる選手の代わりがいないことが問題だ。
とは言え2ヶ月ぶりの復帰で病み上がりの柏木は致し方ない面もあるとは思うが、ファブリシオの投入は監督からのメッセージとしてはブレが生じていたのでは。
このまま逃げ切るのか止めを刺しに前に出るのか、という意味で。
柴戸の退場と阿部の投入で図らずも前者に統一されたのは怪我の功名と呼んでいいかどうか。
次に前半からリードに成功した時は大槻監督の采配に注目してみたい。


2019年7月13日土曜日

2019 J1リーグ 第18節 ベガルタ仙台戦

実はこの日は現地観戦していたがウノゼロで勝ったにもかかわらず正直かなりフラストレーションの溜まる試合だった。
先制する前も後もあまり効果的に相手のゴールを脅かすプレーをできているように見えなかったため。
ただ、帰宅後冷静になって仙台の直近の試合を振り返ってみると、
・直近4試合全てで先制
・直近4試合全てでポゼッションで劣る
・3位、12位、1位、5位に勝利(ただし名古屋はジョー不在、松本は前田不在、東京は久保不在、札幌はチャナティップ不在)
そんな仙台を相手に大学生相手とは言えミッドウィークに天皇杯をこなした連戦の中で、12位のレッズがこれまでの対戦相手同様ポゼッションしながら先制を許さず逆に先制点を挙げ、その後も相手にチャンスらしいチャンスを与えずしっかり試合をクローズして見せたことは十分賞賛に値する結果ではないかと思えてきた。

そもそも仙台は1位、3位、5位を相手にポゼッションを許しながらどうやって勝ったのか。
興味がそっちに移ってきたためその4試合をできる範囲で確認してみることにした。
これを書き上げている7月9日現時点で既に名古屋との試合は見れないし、見れたとしても90分×4試合全てはさすがにチェックし切れないので「ハイライト」と「スタッツ」と「戦術ブロガーたちのレビュー」を頼りにどんな試合だったのかをそれぞれ振り返ってみた。

現地で見ていた感想としては「これだけポゼッションしてチャンスらしいチャンスも与えなければ勝って当たり前」くらいのものだったが、仙台の直近3試合を振り返るとそれは誤りであったことがよくわかる。
何故なら仙台は相手を押し込んでいたり優勢に試合を運べている時間帯でなくとも前後の脈絡なく点を取って勝っていたから。
こう書くとセットプレーに異様に強いか、切れ味鋭いカウンターが持ち味なのかと思いたくなるがそうでもない。
長いクロスを放り込んできた時の精度の高さ、一番の脅威はそれができる永戸。
永戸ばりのコントロールを持ちながらさらに圧倒的なデュエル勝率を誇るシマオマテ。
そしてJリーグ屈指の高さを誇る長沢は長いボールの絶好のターゲットになる。
長沢や石原がポストした時にボックス内で仕事ができるのが絶好調の関口。

まず目に付いたのはレッズのプレッシングの速さ。
これはやはり誰が持った時に誰が行くかがはっきりしていたということか。
被カウンター時に石原や長沢等の危険な選手に入ったボールも槙野やマウリシオがきっちり潰して危険の芽を摘んだ。
これはレッズの守備の話。
一方の仙台の守備の第一印象はやたら荒い。
松本、東京、札幌の3試合と比べてもこの試合は特別に荒い。
レッズのファウル数10回に対して仙台は19回と数字にもはっきり表れている。
何故ああいう試合の入りをしたのか、そこに戦略的な意図があったかどうかまではわからなかった。
だが仮にあったとしてもそれは仙台にとって有利に働いたようには見えなかった。

次に攻撃の時。
前半序盤は最終ラインから宇賀神や橋岡のWBをターゲットに長いボールのダイレクトプレーを選択。
前半中盤あたりから岩波から武藤へ縦にボールが入るようになるもそこに橋岡やファブリシオが絡んでもフィニッシュまで辿り着けない。
前半終盤にようやくこの布石が結実し岩波からの楔を武藤がターン一発で2人かわしスルーパスでもう1人出し抜きエースの美技で見事フィニッシュ。
とにかく武藤はよく動いて相手最終ラインの手前で浮いていたため何度も縦パスが入った。
後半は退場者が出て仙台が一人減ったものの相変わらず押し込んでからの崩しの連係がいまいちで追加点が取れない。
小さな変化として橋岡が仕掛けて強引に突破を試みるようになる。
一方の仙台の攻撃は、最も警戒していた長いボールの放り込みがレッズDFラインの裏をかくようなものではなく単純な中央ブロックで跳ね返すだけで最後まで失点を許さなかった。
セットプレーのほうがシマオマテの危険度が如実に現れていて見ててハラハラした。

以下その他トピック。
  • ファブリシオはシュート4本全て枠外ということでまだまだまだまだリハビリが必要、守備は杉本より献身的
  • この日は珍しくセットプレーから得点の可能性を感じた、右はいいが左から蹴る時のキッカーは再考の余地あり
  • 岩波は昨季好調時のパフォーマンスに戻りつつあるように見えるが浮き球のロングフィードがまだ少なくグラウンダーの楔が目立った
  • 杉本は本当にポストが上手い、ただ守備は途中出場ならもっと動いて欲しいかも
  • 後半の攻撃は実にお粗末な出来、せめてカウンター仕掛けたらシュートまで持っていっていただきたい
  • シュミットダニエルは神セーブ連発でこの日のMOMは彼でもいいと思った、ファウルもしないし
  • 試合に勝ったはいいが次節エヴェルトンと(多分)武藤を欠いた状態で2位の相手との対決は気が重い