2021年5月26日水曜日

2021 J1リーグ 第15節 ヴィッセル神戸戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは柴戸が敦樹に、小泉が汰木に変更。神戸は前節から前川が飯倉に、井上がイニエスタに、中坂がリンコンに変更。

■おおまかな流れ
今季リーグ戦全試合スタメンだった小泉がベンチスタートということでレッズは立ち上がりに後方からつなぐビルドアップができずロングボールを前線へ放り込むシーンが目立つ。ターゲットは主にユンカーだが相手のライン間に蹴ってもライン裏へ蹴っても容易に収められずボール保持は安定しない。そのため立ち上がりから神戸がボールを握る展開。

神戸のビルドアップは(神戸から見て)右サイドの狭いスペースに相手を密集させてから早めに左へ展開し相手がスライドする前に縦に早くボールを出してエリア内へ進入。その際キーになるのは山口。3:09と10:43には右から左へのサイドチェンジを酒井へ展開。5分に古橋から始まった連続ワンタッチにも山口は絡み最後にイニエスタから酒井の裏抜けは実に鮮やか。シュートは岩波が止めたが。
山口はビルドアップだけでなく守備においても要所要所でレッズの攻撃を寸断。8:55に阿部への前を向かせないプレス。11:26に武藤の股抜きを読んでしっかり股を閉じてタックル。

12分あたりからレッズにもつなぐビルドアップが見られるようになる。キーは汰木。9:10に田中へのサイドチェンジ、12:10に岩波から長い縦パスを受けて前を向いて明本へ出す。汰木はカウンターの局面でも誰より反応が早く走り出してボールを受けていた。
だが肝心なところで一部の選手に小さいミスが多発しなかなかシュートまで辿り着けない。崩し切ったとは言えないまでも攻撃を何度かシュートで終えた神戸とは対照的。

前半をスコアレスで終えるとレッズは後半頭から阿部と武藤を下げ小泉と柴戸を投入。すると後半開始2分でレッズに先制点が生まれる。あまりに早い先制点のため双方ハーフタイムにどんな修正をしどんな変化をつけようとしていたのかがわからなかったが、先制ゴールの一連の流れに小泉と柴戸が絡んだことは確か。
失点した側は前への圧を強め先制した側は少し受けに回ることによって失点した側にボールを持たれ押し込まれるような展開になることはJリーグでよく見る光景だが、先制後のレッズは容易くボールを手放すことなくボールを握り続ける展開になる。この点に関しては確かに交代選手、とりわけ柴戸投入の効果がはっきり出ていた。

その後神戸は佐々木ら複数の選手にアクシデントが発生し55分に一気に3枚替えを敢行。イニエスタの強行突破によって一度危険な場面を作られるものの鈴木と槙野の奮闘でゴールを死守。84分にはレッズが追加点を決める。その後88分にも一度相手に危険なシュートを許してしまうが岩波がブロック。なんとかクリーンシートで試合を締めた。

■ポジティブ
仙台戦にしろ徳島戦、大分戦にしろ、たとえ前半に良くない内容で試合を折り返したとしても後半に結果を出す試合がこうも続くと、リカルド監督のハーフタイムにおける修正力が秀でていることは最早疑いようがない。さらにピッチの中で選手自身の判断で修正し徐々に押し返すサッカーが出来ている。監督自身はそんな選手が揃っていることを「幸運」と言ってはいるものの筆者は監督の指導の賜物だと思っている。強くなるとはただ結果を出すことではなく現実的にはこういう成長のことを指すのではないかと思っている。

■気になった選手
鈴木
スタメンとして出た仙台戦からのことだが危険なボールを通そうとして自陣で奪われるシーンが1試合で2度以上見られる。スキル的な問題は無いと思われるが判断力のところでまだ未熟さが残る。
武藤
ボールを持った時にヘッドアップできないことが今の武藤の一番の課題。ずっと足元のボールを見ながらでないとキープができない。
汰木
ビルドアップではいい位置で受けてサイドへ前線へと上手く供給するし、危険な位置で受けて相手のプレスを受けても簡単には奪われないし、見事なクロスで1アシストを記録しているし攻撃面ではマンオブザマッチ級の活躍と言っていいほど。一方守備時の対応がどうしても気になる。1on1で圧倒してくれとは言わないので2対2や3対3の局面ではもう少し味方とやり方を詰めてほしい。
山中
AT含め30分程度の出場にとどまったが試合終盤に見せたタックルが悉く成功し実に珍しいことに守備での活躍が目立った。
槙野
体を投げ出すシュートブロック等守備でいつもながらの貢献は見せていたがこの日はむしろ攻撃面で目立っていた。こぼれ球に対しダイレクトで鋭く縦に入れて前線の選手に供給する場面が3度以上見られた。総合的に見てマンオブザマッチ


2021年5月19日水曜日

2021 J1リーグ 第14節 ガンバ大阪戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは敦樹が柴戸に、関根が田中に変更。ガンバは前節からチュセジョンが宇佐美に、パトリックがチアゴアウベスに変更。
レッズは前節仙台戦からは中6日の日程。ガンバはACLの日程の関係で4日前に試合があり中3日の日程。水曜の敗戦の2日後には宮本監督の解任を発表し松波強化アカデミー部長の暫定監督就任を発表した。

■おおまかな流れ
ガンバは立ち上がりから激しく体をぶつける勢いでプレスをかけレッズのボール保持は安定せずガンバにボールを握られる。
ガンバのビルドアップはSBにタッチライン際で相手のラインの間くらいに立たせてCBからSBにボールが入ったらSHとのコンビネーションからアーリークロスや、SB自らカットインしてチャンスを創出する形が何度か見られた。
左右でやや作り方が異なり右サイドではあまり有効な形を作れていなかったが左では複数のパターンでボールを前進させていた。
7:45はSB黒川がライン際に立ってCBからのボールを受けているが、10:14にはSHの宇佐美が同じ位置で受けている。ガンバ側の選手の特性が左右で違うこともあったがレッズ側の守備の対応も左右でまた違っていたように見えた。
西は決して最終ラインから飛び出そうとせず常にCBとの距離間を保っていて大外レーンの対応は全て田中に任せていたように見えたが、一方逆サイドの明本は飛び出して奥野にプレスをかける場面も見られた。

一方序盤のレッズのビルドアップで目立ったのは小泉。中間ポジションに立って2:16には西から長い縦パスを引き出し、3:39にも岩波から、5:12には槙野からそれぞれ長い縦パスをフリーで受ける姿が見られた。
唐突に生まれた先制点も槙野のロングフィードを小泉が頭で落とし、さらに大外レーンに開いて西からの縦パスを引き出しボールを前進。その後、柴戸から左の阿部へ展開し武藤へ縦、ユンカーへのクロスは誰も触れず流れたボールを田中が拾って柔らかい山なりクロスを後ろに跳びながらユンカーが頭で合わせて先制ゴール。

速攻カウンターも今までにないほど綺麗な形で素早く効果的に決まっていた。
どのカウンターにも絡んでいたのがユンカー。2:43には右から斜めに切り込み武藤へのラストパス、8:23にはこぼれ球を拾って中央を持ち運んで右の田中へ出し自らはクロスを待ってゴール前へ飛び込む、17:12には前線から下りて三浦を背負いながらワンタッチでボールをコントロールして前を向いて爆走、その後バイタルで小泉へのラストパス。
追加点も全てカウンターからで2点目はユンカーのサイドチェンジから。3点目は田中のクロスにユンカーが左足で流し込むだけのフィニッシュ。
相手がハイラインだったことも簡単に裏をとれた理由になっているがそれにしてもほぼ全てのカウンターにユンカーが絡んでいるのは驚異的。しかもフィニッシュだけではなく起点になるプレーが多かった。

監督からすれば理想的ではないものの3点差をつけて折り返した素晴らしい前半からすると後半の内容は褒められたものではなかった。
特に小泉とユンカーを同時に交代させて以降は守って逃げ切るのかダメ押しの追加点を取りに行きたいのかもはっきりしなかった。その次の阿部と武藤を下げた交代にしてもどちらもポゼッションを上げたいというのが交代の意図としてあったと思われるが状況は好転しなかった。
後半の飲水タイムを経てやや改善されたもののレッズ側の修正というよりは相手の交代策がハマらなかっただけのようにも見えた。
とは言え、決定機を作らせず失点もなかったのでもたらした結果は十分と言えるが。

■課題
後半交代で入った選手が状況の改善も違いを作ることもできず無為に時間を費やしたこと。
リーグ戦の途中出場はエリートリーグのフル出場よりも価値のある時間に思えるが選手にとってはそうではないのかと疑う内容だった。

■ポジティブ
久々となった田中のスタメン起用が直前のエリートリーグのパフォーマンスから来ていることは試合後の監督のコメントからも確認され、ますますエリートリーグの重要性と有用性が実証されたこと。
理想とするサッカーを実現できなくとも別のサッカーを現場の選手たちで選択し実行できたこと。そしてその結果勝利したこと。

■気になった選手
ユンカー
抜群の決定力を持っていることはここ3試合で十分証明されたがフィニッシュワーク以外にも多彩なスキルを持っていることが確認された。多少のプレスでも奪われず倒されないフィジカルや、相手DFを背負っても正確に落とせるポスト能力、小泉へラストパスを出せる冷静さ、狭いスペースからサイドチェンジを出せる視野の広さ、チアゴアウベスを振り切るスプリント能力。非の打ちどころが無いとは彼のためにある言葉。文句なしのマンオブザマッチ
田中
1ゴール2アシストという確かな結果を残しユンカーより20分も長くピッチに残ったのだからマンオブザマッチでも遜色ない活躍と言える。ただ開幕当初に田中のプレーに抱いた不満は解消されなかった。すなわちビルドアップの関与だがこの試合に関して言えば田中がライン際に張ってたから小泉が内のレーンで縦パスを受けられたのかも。何せリーグ戦スタメン出場が2節以来だし79分も出たのは今季初なのでもう少し見守りたい。
小泉
ビルドアップで最終ラインからの縦パスを引き出す抜群のポジショニングが際立っていた。惜しむらくは次のプレーに周りが呼応できなかったこと。近くに武藤がいれば仙台戦のような連携が見れたと思えるが右サイドで受けることが多く武藤とは距離があった。
明本
今やすっかりSBとして定着した感のある明本はこの日もフル出場。前半武藤とのコンビでチアゴと奥野を抑え込んだ守備は完璧だった。1アシストという結果も残しますますこのポジションが確固たるものとなりつつある。


2021年5月13日木曜日

2021 J1リーグ 第13節 ベガルタ仙台戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは西川が鈴木に、柴戸が阿部に、興梠がユンカーに変更。仙台は前節から真瀬が蜂須賀に、赤崎が氣田に変更。

■おおまかな流れ
レッズはボールを持ったら強引に最前線のユンカーへロングボールを蹴っ飛ばすシーンが序盤から度々見られる。3分に武藤、3分に関根、4分に岩波、5分に鈴木と開始6分までで4度も蹴っ飛ばしていたが1本もユンカーへは通らなかった。
ロングボールを簡単に相手に奪われネガトラも効かず攻め込まれるため立ち上がりは仙台が主導権を握る。

5:53にレッズのスローインから左ペナ脇で受けた小泉が中央へ斜めに長いボールを入れるとこれを氣田が奪う。すぐさまエリア内の西村へ縦に出し槙野が寄せる前に左足シュートを放つも2,3歩前に出た鈴木が体に当ててゴールを割らせない。結果的にはこのビッグセーブで前半を無失点で折り返せたことが、ひいては試合全体の勝敗を左右したように思われた。

13分を過ぎたあたりからポゼッションも向上し徐々にレッズの反撃開始。
13:52に中央で受けた小泉がロブパスを入れると間で受けたユンカーが胸で落として左の武藤へ。武藤は縦に仕掛けてエリア内で左足クロス。ユンカーが頭で合わせるもボールはバーの上。
15:40にレッズのスローインを奪って仙台のカウンター。中央を縦に早くつないで最後は槙野に前に立たれながら強引に加藤の左足シュート。鈴木が右に倒れながら両手でキャッチ。
17:28にレッズの右スローインからユンカーが落として槙野へ戻す。槙野は左の小泉へ。小泉は左サイドを単独で持ち上がって中央の武藤へ斜めのパス。これを後ろ向きで受けて一度前を向くも右へバックパス。阿部がダイレクトでグラウンダーのミドルを放つも左のポストを逸れて枠外。

前半の飲水タイムを挟んでようやくレッズに後方からつなぐビルドアップが増え始める。
31:05に関口に対し阿部がプレスをかけ敦樹のプレスバックでひっかけたボールが氣田に拾われる。そのまま前進してペナルティアークで右足ミドルを放つも鈴木がキャッチ。
レッズもその後シュート2本を計上するも相手GKのセーブを必要とするシュートは打てない。

後半立ち上がりは仙台もやや前からの圧を強めたか五分以上の内容で押し返されるレッズ。
50:10にはCKをフリーで合わせられる危険なシーンも。
56:41、敵陣で関根からボールを奪った関口の右足ミドルは枠外。
57:36、西から右大外関根へ縦、左の武藤へ、ターンして小泉へ縦、2人食いつくが武藤へフリックワンツー、武藤はさらにワンタッチでユンカーへ、エリア内フリーで抜け出し左足で止めて左足のアウトサイドでゴール左隅へ沈め待望の先制点。
この先制点と似た形は後半開始早々にも同じく武藤、小泉のコンビで作られていた。どちらのシーンも最終ラインから大外レーンに開いたウイングの選手にボールが入った瞬間にはその隣のレーンにいた選手、この場合どちらも武藤だが彼が描いたゴールまでのイメージとそれに呼応できた小泉の関係が素晴らしかった。

先制後も引き続きボールを握るレッズ。
67:35、敵陣で西から関根に縦、前を向いて左の興梠へ、ワンタッチで右の阿部へショートロブパス、阿部も頭でワンタッチで相手の最終ライン裏へ、明本が抜け出し左足を伸ばしてトラップするも平岡のタックルによりシュートは打てず。
69:12、槙野のオーバーヘッドは手が吉野の顔に入ったためファウルの判定。ファウルが無かったとしてもボールはGK正面でスウォビクは両手でキャッチ。
72:25、敵陣で小泉がファウルを受け吉野にイエローカード。ここで得たFKを阿部が直接叩き込み追加点。

結果的にクリーンシートで試合を終えたもののラスト15分の内容は「しっかりクローズ」とは言い難い内容。75分には岩波がエリア内で相手を倒すPK献上ものの守備、81分と88分に鈴木のフィードが自陣でマルティノスに奪われる場面、91分には相手のCKに飛び出してボールに触れない鈴木と危ないシーンが何度か見られた。相手が仙台でなければ、この日の主審が別の人ならば、これらは失点に繋がっていたかもしれない。
ともあれ決定機は作らせずにクリーンシートで試合終了。

■課題
課題とは言えないが、試合序盤にレッズが見せたサッカーが意味するものは何なのか。あれをどう捉えるかでこの試合の評価も分かれそう。狙いはともかく事実として狙いを達成することは一切出来なかった。それは間違いない。無理と悟って即座に方針転換しピッチ内の選手で、あるいは監督の修正によっていつものレッズのサッカーに戻ったことはポジティブに捉えていいと思う。問題は何らかの調整を加えて次の試合でも同じチャレンジをするのかどうか。これっきりで終わるならただの失敗として切って捨てるだけの過去になるが。

■気になった選手
伊藤敦樹
柴戸の負傷離脱中、その代役を求められることになるであろう選手こそ敦樹になると勝手に予想しているのだがこの試合に関して言えば不合格と言わざるを得ない。ネガトラに関しては蹴っ飛ばすのをチーム全体でやめてからはマシになったが、ビルドアップに関しては柴戸ほどの貢献は最後までできなかった。ただし隙あらば前に出てシュートを打とうとする積極性は○。
関根
ボールロストが多い。バックパスも多い。相手を見た優位性ある正しいポジショニングが出来ているように見えない。先制点のシーンも武藤の体の後ろにパスを出してしまっているせいで無駄なターンが必要になっていることばかり気になった。
西
非の打ちどころのない完璧超人と思われた選手だが50分に仙台のCKでマークしてるはずの選手にフリーで頭で合わせられたシーンには肝を冷やした。これだけが唯一の弱点であってくれれば実に些細な問題だが。
武藤
7節鹿島戦以来全試合スタメン起用され重用されてきた武藤だが鹿島戦ほどのパフォーマンスを発揮できたと言える試合はここまで無かった。この試合では見事にあの日の輝きを取り戻すクオリティを見せた。問題は相手が鹿島、仙台だから出来たプレーなのか、ユンカーという最後のピースがはまったから出来たのか、単に武藤のコンディションが絶好調なだけだったのか。これらのうちどれによってもたらされた結果なのかで今後の評価も変わってくる。とは言えマンオブザマッチ
鈴木
序盤のビッグセーブは分水嶺になったと言っても過言ではないほどのプレーだったが試合終盤で見せたプレーはまだまだ年齢相応の甘さが出たと言える。それらのミスが相手の決定機にも失点にも繋がらなかったのは仲間に助けられたためであることはしっかり自覚すべき。


2021年5月8日土曜日

2021 J1リーグ 第12節 アビスパ福岡戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは杉本が興梠に、山中が敦樹に変更。福岡は前節から金森がジョルディクルークスに代わったのみ。

■おおまかな流れ
序盤からレッズがボールを握って攻める。5分までに何度かアタッキングサードまで運べていたがシュートはなし。5分までに2回武藤のロストと2回岩波のロングフィードが直接ラインを割る。

6:45にビルドアップの過程で敦樹が中盤危険な位置でロスト。それから失点する7:30までの間に後ろにボールを戻させてやり直させることは出来てもボールを奪い返すことは一度もできなかった。

12:20に小泉のクロスに関根が飛び込んでジャンプして合わせた右足のシュートと、14:20にショートコーナーから武藤がカットインしてタックルした奈良の足に当たってループシュート。失点後もレッズがボールを握り続けたが結局前半のシュートはこの2本で終わった。

前節大分戦同様、ビハインドを背負った展開になると後方からのロングフィードやクロスの放り込みが増えていたが意外とそれが通っていた。相手の脅威になる攻撃は出来ていたが決定機を作ることは出来ずシュートも打てなかった。
ただ、これも前節同様だが見え見えの長い縦パスを足元に出して背後から潰されてロストするシーンも90分に渡って複数回見られたのは気になる。大分戦後に修正されなかったのだろうか。

後半のレッズのビルドアップは後方で何度もやり直しながら機を見て前線へ放り込むロングフィードが増える。前半と比べるとかなり拙攻。関根と交代で汰木が入ると前線が活性化しやや良化。しかし2失点目でそれも無駄になる。

後半のシュートは56分と57分にどちらも山中がFKから直接ゴールを狙った2本と、66分に山中のファークロスに西が飛び込んだ1本、89分にエリア内右から西がこぼれ球に合わせた1本。

■課題
やはり依然としてアタッキングサードでの振る舞いが改善しない。ビルドアップはやれている。ゴール前までボールは運べる。だがどうやってゴールを奪うかについて有効な手だてを見せることが最後までできなかった。
西川のミスにより試合が難しくなったのは事実だが得点でミスをチャラにする時間は十分にあった。決定機を作れなかったわけでもなかった。だが結果的にはレッズのゴールはゼロ。
開幕節と比べると今のレッズは怪我人の復帰もあってようやく理想のスカッドが完成したように見える。つまりこれ以上はメンバーの組み合わせだけで問題が解決するとは思えない。ユンカーとトーマスデンの2人で解決できればそれに越したことはないがそれでも叶わなかった時がリカルド監督の真価が問われる時かもしれない。

■気になった選手
興梠
前線から下りてきすぎ。ビルドアップに関わろうとしすぎ。昨季まではそうしなければまともにビルドアップが成立しなかったため身に付いてしまった悪癖とも言える。だが今は興梠が関わらなくとも前線にボールを届けることができる。要我慢。
武藤
常にゴールに背を向けてボールを受けてしまっている。38分にはせっかく前を向いて受けたのに自ら背を向けてしまうシーンも。背後からのプレスに潰されながらもフリック一発でつなげるシーンがあればそれでも十分脅威になり得る選手だが鹿島戦以来それも見られない。
小泉
判断の遅れと選択ミスから来るボールロストがいつもより多かったかも。クロスが直接ラインを割るシーンもあった。今季J2から加入したばかりの新戦力が今やすっかり攻撃の軸なので小泉の出来にレッズの攻撃の成否が直結してしまうのはさすがに頼りすぎか。というか小泉対策がどのチームも完成しつつあるのかも。
柴戸
獅子奮迅とはまさにこのことと言わんばかりの働き。特にボール保持における鬼キープ。簡単にパスを出さず相手ゴールに背を向けずプレスを受けながらゴリゴリ突き進んでボールを運ぼうとしていた姿が強烈。負傷交代で前半だけのプレーではあるもののマンオブザマッチ


2021年5月1日土曜日

2021 J1リーグ 第11節 大分トリニータ戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは敦樹が杉本に代わったのみ。大分は前節から高木がポープに、高畑が香川に、長谷川が小林裕紀に、高澤が伊佐に代わったのみ。

■ボール保持
開始2分で先制に成功する今までにない展開を迎えたレッズ。開始早々のリードという慣れない展開のせいかビルドアップ時に後方から強引に長い縦パスを入れて逆に奪われるシーンが何度も見られた。逆転を許した2失点目も、相手の前からのプレスがかかっていたとは言え実はこのパターンでのボールロストがきっかけになっていた。そのため数字上はレッズのポゼッションが上だったもののその実試合を優勢に進めていたのは大分だった。

後半は頭から杉本に代わって敦樹が投入されたこともあり敦樹が最終ラインに下りることでビルドアップが安定。数字と内容が伴ったレッズの攻撃の時間が長くなるが相変わらずなかなかシュートまで漕ぎつけられない。前半は封印していたのかショートパスへの強いこだわりだったのかわからないが、後半のボール保持は明らかに放り込む回数が増えていた。後方からのロングフィードにしろ単純なクロスにしろ。

■ボール非保持
レッズの守備は全員で前からプレスをかけ積極的にボールを奪いに行く場面が前半から見られた。大分のボール保持で脅威になったのは右WBの松本。シンプルな足の速さを活かしトップスピードでボールを受けることに専念すれば簡単にぶち抜くことが可能で、9分・11分・15分と前半だけで3度もレッズの左サイド深くを抉られてマイナスクロスを許してしまっていた。ただし15分のは山中のタックルでしっかり防いだため未遂ではあるが相手にCKを与えることになった。22分の失点も松本のオーバーラップからのアーリークロスがきっかけになっていて結局失点するまでレッズは松本のスピードに対応することができなかった。

後半大分はボール保持において手数をかけず時間をかけず人数をかけず分かり易くポゼッション放棄。但しこちらのミスは見逃さずしっかりカウンターを仕掛けてきた。

■攻→守
前半はあまり上手くいかなかったネガトラが後半交代で入った敦樹の守備が効いて何度もボールを奪い返した。

■守→攻
決勝点になったカウンターは直前のルヴァンカップでも汰木が見せた形と酷似していた。汰木からのボールを受けたのは福島ではなく明本。メンバーが変わっても同じ形を再現できるのは普段のトレーニングで戦術が落とし込まれている証拠。

―まとめ―

■ポジティブ
前半は完全に事前対策で上を行かれたがハーフタイムの修正と交代策によって勝ち越しに成功した。徳島戦でも言われていたがリカルド監督はハーフタイムの修正力が秀でている。マリノス戦や川崎戦のような後半の失点も過去にあるため否定する意見もあるかもしれないが、その2チームほどの実力差が無ければ監督の手腕だけで引っくり返すことは十分可能なことがここ数試合で証明された。

■課題
以前から課題として挙げていたビルドアップの拙さだが、これまではギリギリのところで選手個人の踏ん張りで耐えてなんとか失点には至らず済んでいたのが今回ついに失点に繋がってしまった。シーズン中に個人のスキルを伸ばすのも難しいし飲水タイムによる監督の修正ではあまり効果が出ないこともわかっている。小泉のコメントにもあるように今は選手個々のピッチ内での修正によってなんとかするしかないのが現状だろう。

■気になった選手
柴戸
チーム1の走行距離を出すほどよく走りよく奪っていたが、ボール保持においてはあまりボールに絡めなかった。18分に伊佐を引き連れてボールホルダーに近寄って関根のスペース消して結局ロストしたシーンに象徴されるようにボールサイドに顔を出し過ぎなのでは。
武藤
前節セレッソ戦に引き続きミスが目立つ。味方の意を感じ取れずボールロストするシーンも。
山中
前半何度も松本に裏を取られたのは山中一人の責任ではないが後半トラップ際を松本に奪われカウンターを食らったシーンはあってはならないミス。わずか3分後に汰木と代えられてしまった事実はどれだけ致命的なミスだったか明白。
敦樹
後半開始から投入されビルドアップと守備の両方の安定をチームにもたらした。特にネガトラ時の守備対応では幾度もピンチを未然に防いだ。