2021年9月20日月曜日

今の浦和レッズは本当に堅守かどうか

J1リーグ戦は29節を終え残り9試合になった。浦和レッズは15勝8敗6分け勝ち点51で6位。直近5勝1分けで6試合負け無し。しかも天皇杯、ルヴァンカップ共に勝ち残っている。絶好調と言っていい。だからこそあえて警鐘を鳴らしておきたい。リーグ戦を4分の3終えたレッズが本当の意味で試されるのはここからだということを。

今のレッズ好調の要因はリーグ戦直近6試合で8得点1失点のスコアを見て分かる通り守備にあると言っていい。スコアだけを見れば堅守と言って差し支えない守備力だが本当に堅守かどうかはここからの9試合の結果を見てから判断するべき理由が以下の表になる。


この表は今の順位を得点数で並び変えたものだが、レッズは今季ここまでの得点数上位5クラブとの試合をまるっと残している。今季ここまで得点を稼げていないクラブ相手なら最悪引き分けでもクリーンシートで終えることは可能かもしれないが、順位こそレッズより下であっても40得点以上稼いでいる今季得点数上位5クラブを相手にそれができるかどうか。真の堅守が試されるとはそういう意味になる。事実、得点数6位の鳥栖には1失点。ルヴァンカップでは得点数1位の川崎相手に2戦合わせて4失点している。無論目的は勝つことであり無失点に抑えることではないためどちらも目的は達成できていることを思えば悲観的になる必要はない。

ちなみにレッズは33得点で12位だが、6位から10位までの5クラブのうち札幌以外の4クラブに勝っていること。うち3試合がクリーンシートであることもポジティブな材料と言える。得点数で言うと昨日が6位のセレッソ、次節が5位の東京、さらにその次が4位の神戸、11月には川崎、鹿島、マリノスと上位3クラブとの3連戦が組まれているのはまるでこうなることを見越して組んだかのような日程で、日程くんの調整力には恐れ入るばかり。

個人的な一番の楽しみは今のレッズと全く同じ33得点で得点数11位を記録しながら3位につけている名古屋との試合。しかもこれがなんと最終節というのもこれまた何の因果か。失点数は名古屋が22でレッズが26の4点差。勝ち点にしてたったの2差。東欧から加入した新戦力は公式戦9試合7ゴールでブレイク中と何から何まで親近感を覚える成績ぶり。来季のACL出場権を賭けて争うことにでもなった日には万難を排して最終節は現地参戦したいが果たして世情が許すかどうか。もっともコロナ収束が見込めなければACLに出場できても楽しさ半分以下なのでやはり一日でも早いコロナ収束を願うのが先か。

2021年7月20日火曜日

2021 J1リーグ 第19節 柏レイソル戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは鈴木が西川に、西が宇賀神に、明本が山中に、槙野がトーマスデンに、金子が柴戸に、大久保が汰木に、田中が関根に、小泉が武藤に、ユンカーが興梠に変更と大幅なターンオーバー。柏は前節から仲間が瀬川に、神谷がイッペイに変更。

■おおまかな流れ
立ち上がりから目まぐるしく攻守が切り替わるオープンな展開。開始10分までに計3本のシュートを放った柏が序盤の主導権を握ったように捉えられるかもしれないが個人的には五分の序盤だと感じた。柏の3本のシュートは枠内は最初の1本だけであとは枠外。打った位置も全てエリア外から強引に打ったシュートだった。
ではレッズの攻撃はどうだったかというと、まず7分までに2度のシュートチャンスを作った。結局その2度のチャンスでどちらも打つ前に潰されてはいるがどちらも柏のDFラインの裏に抜け出しエリア内でチャンスメイクできていたことが大きい。とは言え序盤に明確に相手を崩した場面はこの2回きりなのでやはり一進一退の五分と見るのが妥当か。

柏は長いボールを蹴っ飛ばすにしろ前線から下りて受けに来させるにしろ最初の選択肢がまずアンジェロッティにボールを預けることがあった。ルヴァンカップGS5節に柏との試合でアンジェロッティにやられっ放しだったせいかこの日のレッズは彼への警戒心が異常に高かった。後ろ向きでボールを受けようものなら絶対に前を向かせないよう背後にへばりつき、トラップをミスろうものならすかさずボールをかっさらい、放り込みには気合と根性で悉く跳ね返していた。アンジェロッティを抜きにしてもこの日のレッズのネガトラは即時奪回もディレイ対応も上手く機能していた。

10分以降は互いにシュートを打てない時間が続く。飲水タイムまでの13分間で3度のエリア内進入と2本のクロスと1本の強引な枠外ミドルを打たれているためここは柏の時間になった。

飲水タイム後の27分に興梠の裏抜け成功からヒールで汰木がダイレクトで合わせて枠外シュート。これを皮切りにレッズの反撃開始。38分に敦樹のロングカウンターからシュート。飲水タイム後に改善したのは守備。圧倒的に敵陣でボールを奪える回数が増えた。ただそこから速攻で相手ゴールに迫ろうという意思は感じられず少し勿体ない気も。43分に山中のクロスから武藤のミートしないシュートを最後に前半終了までの間柏に押し込まれる時間になるがシュートは打たせず。

後半立ち上がりにトーマスデンのフィードから興梠が裏抜けに成功し枠外シュートを放ったのを最後に特に見せ場なく武藤と共に60分にベンチに下がる。すると直後のユンカーのエリア内でのシュートに続き3分後には見事レッズが先制に成功する。先制ゴールの一連の流れにユンカーが直接かかわったわけではないが周りの選手の攻撃へのスイッチ、ギアの上げ方が選手交代後目に見えて変わったのがはっきり見て取れた。

その後飲水タイムを経ても交代カードを切っても流れが柏に傾くこともなく、76分にトーマスデンによる自作自演のピンチとなる瀬川のシュートを辛うじて止めると80分にCKから柴戸の追加点が決まりその後も流れが変わることなく試合終了。

■ポジティブ
前節から9人入れ替えのターンオーバーで完勝できたこと。惜しむらくはいつもは控えに甘んじているサブ組がもっと結果を残せれば良かったがそれができたのは宇賀神だけだった。

■課題
相手のセットプレーで簡単にゴール方向へボールを飛ばされたシーンが複数回見られたこと。何度かあった決定機をものにできず試合を難しくしたこと。特に後者は監督の悩みの種として今後もしばらくつきまといそう。

■気になった選手
トーマスデン
ビルドアップのミスが多過ぎる。前節ビルドアップのミスが即失点につながるシーンをその目で見ていながら臆さず強気で長い縦の楔を入れていく姿勢は買いたいが成功率はもっと上げるべき。少なくとも「今そのチャレンジ必要か?」という状況を見た判断力は早急に身に付けなければならない。ただ守備面では76分に中途半端にクリアしたボールを収められてシュートを打たれたシーン以外は致命的なミスもなく最後まで集中してしつこく厳しい守備対応を見せた。
興梠
ひたすら裏抜けを狙って走り出すプレーは素晴らしい。だが持ち場を離れてボールを受けに下りて来る回数が相変わらず多いし、受けに来たからボールを出したのにもかかわらずワンタッチバックパスをミスして奪われているのではチームにとって不利益しかもたらさない存在となってしまいかねない。
山中
先制点をアシストした関根へクロスを上げたのが山中。追加点のCKを蹴ったのも山中と攻撃面で結果を残した山中だがどちらかと言えば相手の長いボールやクロスを跳ね返したりプレスバックでボールを奪うシーン等、守備面での貢献が目に付いた。
伊藤敦樹
トーマスデンと同じか或いはそれ以上にミスが多かった。特に後半のミスが多かったのは疲労によるものかも。
汰木
前半攻撃面でいいプレーを見せていて決定機も訪れていただけに結果を残せなかったことだけが悔やまれる。


2021年7月5日月曜日

2021 J1リーグ 第18節 湘南ベルマーレ戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは山中が大久保に、関根が田中に、武田が敦樹に、柴戸が金子に変更。湘南は前節から富井が谷に、岡本が畑に、中村が田中に、町野がタリクに変更。

■おおまかな流れ
立ち上がりから終始ボールも主導権もレッズが握る展開。後ろで回す時間がやたらと長い数字だけのポゼッションではなくしっかりと敵陣内でのパス数など内容を伴うポゼッションで湘南を圧倒。ゴール自体の再現性は乏しいものの、開始8分で先制点という形で実を結ぶのも必然だった。先制点のシーンとその5分前のシーンでどちらも重要な動きを見せたのが小泉。左のハーフレーンで浮いて一度目は大久保にワンタッチで縦に、二度目は明本に縦のスペースに出してクロスを上げさせている。
湘南は序盤から目立ったのがファウル。レッズの先制点も田中達也へのファウル後のFKのセカンドボールを拾ったところから生まれている。

先制後少し相手にボールを持たれる時間になるがシュートは打たせない。むしろ気になったのはレッズのボール保持。飲水タイムまでに何度か後方からのつなぐビルドアップが見れたがどれもかなり危なっかしかった。体力と走力を頼みに前からの、特にバックパスに対しては容赦ない前プレスをガンガンかけてきた湘南に対しレッズのビルドアップは出口まで辿り着けずに苦戦した。
そして21分にあわやの事故になりかけたシーンを見せた金子のミスから26分に同点弾を許してしまう。この金子のパスミスになってしまったシーン、最初に槙野に出そうとしているが田中聡が遠目から槙野へプレスをかける素振りを見せているだけで金子は槙野へのパスを諦めて岩波へ方向転換している。落ち着いて見えていれば岩波とウェリントンとの距離のほうが近いことに気付けたはずだが。理想を言えば金子自身へのプレスをかけに来たタリクをかわして縦に出すことが出来ればそれが一番だがそれが無理でも鈴木へ戻すことも選択肢としてはあったはずだが結局この時は一番リスキーな選択をしてしまった。

その後カウンターにロングフィードにクロスと複数のパターンで相手ゴールへ迫り決定機も作りシュートも打てていたがゴールは奪えず前半終了。
後半も立ち上がりからレッズがボールを握り攻め立てていたが53分にカウンターから勝ち越しゴールを奪う。その後もユンカーのポスト直撃弾や大久保のカットインからのシュートなど攻め手を緩めないレッズ。

後半の飲水タイム直後の69分に畑のアーリークロスからウェリントンが中で合わせて同点ゴールを奪われる。それまで右のWBを務めていたはずの畑が61分に町野と名古が交代で入ったあたりから逆サイドの高橋と入れ替わっていた。右にいる間、対応する明本は畑との1on1が何度も発生しほぼ完封していたのだがこの失点シーンでの西の対応は何の制限もかけられないままクロスを入れさせてしまった。飛び出して触れなかった鈴木や競っていない槙野も同様に残念だったが。
その後レッズがボールを握り攻め続ける時間が続いていたが86分、またも後方からのビルドアップのミスによるボールロストから逆転弾を許す。その後結局シュートを打つことはできず試合終了のホイッスル。

■ポジティブ
内容の伴ったボール保持ができたこと。

■課題
同点直前に左右のWBが入れ替わった畑と高橋。一方天皇杯とルヴァンカップを経て久々にリーグ戦のスタメンに抜擢されたが失点の引き鉄になるミスを犯した金子。奇しくも監督の采配に差が出た試合だった。確かにカップ戦での金子のパフォーマンスは悪くなかったがこの湘南を相手にスタメン起用するのは相応しかったのかどうか。カップ戦の2試合で金子のプレス耐性は試されていたのかどうか。GKからのビルドアップで湘南の前プレスを事前に想定できていたのかどうか。

■気になった選手
大久保
3週間ぶりのリーグ戦ということで2人の選手がその間の天皇杯とルヴァンカップを経てこの試合に抜擢されていた。1人は金子でもう1人がこの大久保だが前半の大久保は何も持ち味を発揮できなかった。後半多少改善され逆サイドの田中よりも長い時間ピッチに残ることになったが結果を残せたわけではない。
明本
この日何度も発生した畑との1on1では42分に許したマイナスクロスたった1本を除いてあとは畑を完封。ボール保持でも決してサボらず上下動を繰り返し先制点の起点になるクロスも入れた。
ユンカー
この日も確たる結果を残したチームトップスコアラーが問答無用のマンオブザマッチ
小泉
中間ポジションをとって素早く縦。少し運んでパスコースを作って縦。針の穴を通すスルーパス。この日の小泉はあらゆる攻撃のスイッチ役になり存分にタクトを振るった。ユンカーに次ぐマンオブザマッチ


2021年6月20日日曜日

夏場にゴール数が減った外国人ストライカーがいるか調べてみた

浦和レッズに移籍して以降ハイペースでゴールを量産しJリーグを席巻しているキャスパー・ユンカー選手。あまりにも絶好調過ぎるからか彼に対する心配のコメントで最近やたらと見かけるのが「日本の夏ガー」「暑さへの慣れガー」といった文言。涼しい北欧出身の選手だからアフリカ人でもキツイと言われる日本の夏に適応できるか?という疑問は確かにわかる。しかしここまで心配されるというのは「北欧の選手は暑さに弱そう」という短絡的な思い込みだけではなく、夏場に大きく調子を落とした具体的な過去の選手名をJリーグサポーターは思い浮かべているのかもしれない。何しろ筆者は2012年以降のJリーグしか知らないのでそういう選手が過去にいたとしても不思議ではない。そこでJリーグに来た外国人選手を調べてみることにした。

全外国人選手をしらみ潰しに調べるのは無理なので
・北欧から来た選手
・J草創期と今とでは同じ夏場でも気温差があるので2000年以降
・J1でシーズン11ゴール以上を記録
以上に絞って調査開始。
なおソースは全てJリーグデータサイト。Jリーグデータサイトには試合ごとの気温が載っているため気温ごとの出場時間とゴール数をグラフにした。

まずはノルウェーのフローデ・ヨンセン。計13ゴールを挙げた2007年の名古屋グランパスでの気温ごとのゴール数。

計12ゴールを挙げた翌年のグラフ。

少なくともヨンセンに関しては暑くても涼しくても点が取れている。
さすがにサンプルが1人では説得材料として弱いので本当は当初シーズン12ゴール以上としていた条件を11ゴールにしてギリギリひっかかったスウェーデンのシモヴィッチの場合。計11ゴールを挙げた2016年のこれまた名古屋の記録。

シモヴィッチに関しては気温が低いほど点が取れているのが見て取れる。北欧出身で11ゴール以上縛りだとこの2人のみになるので欧州の中でも比較的涼しいイングランドから来たジェイも調べてみた。計14ゴールを挙げた2016年のジュビロ磐田での記録。

ヨンセン同様暑くても涼しくても点が取れている。出場時間当たりのゴール数では若干気温が低い方がゴールが増える傾向にはあるが。
念のため北欧縛りを除外し2人のブラジル人でも調べてみた。まずは2005年にガンバ大阪で計33ゴールを挙げたアラウージョの場合。

気温が高くなるほどゴールを量産している。もう一人のブラジル人は2018年の名古屋のジョーの場合。

31℃以上の試合で2度もハットトリックを達成しているジョー個人の成績もさることながら、この年は30℃越えの試合が6度もある地獄の猛暑シーズンだった。ちなみにこの2人を選んだ理由は年間33ゴールが最多記録だったことと、年間最多ゴール数を順に並べて割と最近のデータを選んだ場合2018年のデータが相応しかったため。昨シーズンはクラブ数が20だったり大幅な中断期間や降格なし等イレギュラーが多すぎるため通算28ゴールのオルンガはあえて除外。

「気温だけじゃなくて湿度も考慮に入れるべきだろ」とか「日本人外国人関係なく調べるべきじゃね?」とかそういう感想を抱く人もいそうな調査内容であることは認めるが、結論としては「夏場に極端にゴールが減った外国人ストライカーなど存在しなかった」という結論に至った。

そもそもユンカーのリーグデビュー戦となった5月9日の仙台戦は(レッズの)今季最高気温の27.6℃で、つい10日ほど前の天皇杯富山戦は26.2℃でユンカーはどちらもゴールを挙げている。なので正直なところ暑さへの不安視をするくらいなら他にもっと懸念事項はあるのではないかというのが個人的な感想になる。このまま使い詰めでもコンディションは落ちないか、休ませるならどのタイミングか、休ませた時にユンカーが来る前までのサッカーを表現できるか(既にユンカーに依存しすぎてはいないか)といった懸念になる。しかしそれらの懸念を吹き飛ばしてくれそうなさらなる大型補強も既に発表されている。いちサポーターとしては今の浦和レッズには大きな期待しかない。

2021年6月9日水曜日

2021 J1リーグ 第17節 名古屋グランパス戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは汰木が山中に、田中が関根に、敦樹が武田に変更。名古屋は前節から相馬が長澤に、齋藤が山崎に変更。

■おおまかな流れ
立ち上がりこそ五分の内容で攻め合っていたものの7分ぐらいから名古屋が確実にゴールに迫り始める。
名古屋はまずビルドアップにおいて蹴っ飛ばすのをやめて後方から丁寧につなぐことを選択。起点は左SB吉田。名古屋は柿谷山崎の2トップの関係が非常に良く7分と17分の決定機はどちらも2人の連携によって演出されていた。ただし、どちらも鈴木のファインセーブによって失点を阻止。
名古屋はネガトラにおいてもハマり始めそこからのショートカウンターでゴール前までボールを運ばれていた。特に米本の出足の速さが光っていた。
名古屋は守備も前からのプレスがハマりレッズは再三ボールをGK鈴木まで戻させられロングフィードを蹴らされ早々にロストしていた。

控えめに言っても防戦一方のレッズはビルドアップではロングボールを蹴っ飛ばしあっさりロスト。守備においては前からのプレスもハマらず簡単に押し込まれ最終ラインで何とか跳ね返すばかり。ネガトラは多少成功したシーンもあったものの、奪ってからのポジトラにおいては多くの選手にミスが多発しこれまたロスト。

後半頭から武田を下げて敦樹を投入。これがいきなり奏功してか立ち上がりはレッズがボールを握り名古屋を押し込む時間が増える。
前半と比べ最も変わったのは守備。前半はボール非保持でユンカーと武田で前からプレスをかけていたのが武田が交代になり小泉がこの役目を担うと後ろの連動性が前半と全く変わり見事に守備のスイッチ役として機能していた。あるいは監督がもう少し前から守備に行くようハーフタイムに修正があったのかも。
前からの守備がハマり出すと中盤でのセカンドボール回収率も上がりこれもまたポゼッションが上がる効果になった。名古屋のビルドアップでボールをランゲラックまで戻させて長いボールを蹴らせて奪うシーンも何度か見られ前半と逆の構図になった。

ボール保持においても選手一人一人の落ち着きが前半と段違いで圧倒的にミスが減った。60分の槙野や65分の柴戸のフェイント等は前半のビルドアップ時には一切見られなかったプレーだった。

後半、試合の流れは支配できていたものの相変わらずシュートが殆ど打てない。しかも後半2本のシュートは2本とも関根の宇宙開発。一番ゴールが生まれそうだったシーンは70分に汰木の裏抜け成功からのユンカーへのクロスを入れたシーン。結局お互い決定機は作れずスコアレスドローで決着。

■ポジティブ
これまで再三課題として挙げてきた交代カードを切ってからの守備強度低下の問題だが、この試合に関しては交代で入った選手が組織として機能し交代前までの流れを途切れさせることなく最後まで締まった内容で試合を終われた。勿論ゴールを奪えれば理想的ではあったもののコンディション向上の兆しが見えただけで今は満足。もうここまで来たらはっきりと言ってしまうと興梠のことなのだが前節の試合後コメントで「近いうちに取れるだろうという思いはありました」とか「もっと良くなると思います」とか言っていたのでようやく調子が上向いてきたのは間違いないものと思われる。

■気になった選手
鈴木
前半2CBがいいようにあしらわれ柿谷や山崎に簡単に抜け出されるせいでこの日の鈴木は大忙し。前半だけで2度のファインセーブ。防戦一方と言って差し支えない内容で勝ち点1を取れたのは間違いなく鈴木の尽力が一番大きかった。マンオブザマッチ
小泉
鈴木の次にゴール前で最も相手のチャンスを摘み取ったのが小泉。危機察知に長けているというか攻め込まれると最後はいつも小泉がラストパスを中央で止めていた。一方で攻撃面は不発。
敦樹
足元のない選手というのはボールを止めて収めることが苦手でラフなボールをワンタッチで返して次の受け手にもラフなまま出してしまうことが多い。今季ここまで敦樹の試合を見てきた個人的な評価で言えば敦樹には足元がある。なので受け手に負債を負わせるパスを減らして欲しい。
関根
判断力の悪さ遅さばかり目立った。リーグ戦は4試合ぶりのスタメンなのにこの出来では再びベンチ生活に戻ったとしても不思議ではない。


2021年6月3日木曜日

2021 J1リーグ 第16節 サンフレッチェ広島戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは阿部が柴戸に、武藤が小泉に変更。広島は前節から柏が東に、川辺が柴崎に、浅野が長沼に、青山がハイネルに、森島がエゼキエウに、浅野が長沼に変更の大幅なターンオーバー。
また、レッズは前節から中3日の日程に対し広島は中2日。しかも第7節の4月3日から17連戦中の16試合目。

■おおまかな流れ
立ち上がりはお互いに長いボールを蹴り合って中盤でのセカンドボール争いが多発。広島のロングフィードのターゲットは主にジュニオールサントス。サントスへのボールはマンマークのタスクを与えられたかのように槙野が徹底的に跳ね返す。一方レッズのロングフィードは主にユンカーがターゲット。広島同様ユンカーまでボールを届けることはできない。

8分くらいからお互い最終ラインから最前線へ一気のロングフィードは止めて後方からつなごうとするビルドアップが見られ始める。ただここでもお互いにビルドアップを完結し崩しの局面まで持っていくことはできない。

そんな中、レッズがこの試合初めてラインブレイクできた13分に最初のチャンスをいきなりものにしたユンカーが先制点をあげる。どちらかと言えば撤退守備をベースにした堅守のイメージがある広島だがこの試合に関して言えばラインは高めに設定されていて、その高いラインの裏のスペースを狙った田中とそれに呼応した小泉のスルーパスがまず見事。こぼれ球にしっかり詰めて左から再度クロスを上げた汰木も、そして倒れた後すぐに立って押し込む準備が出来ていたユンカーも良かった。
おそらく広島としてはトランジションに全集中の呼吸で中盤でボールを奪ったら速攻でカウンターをかけて一気にゴール前に迫りたい意図があり、そのための高いライン設定だったのではと思われる。

流れの無い中から不意打ち気味に先制点を食らった広島だがその後ほどなく同点にする。左CKをハイネルが直接ねじ込んだ。
問題は試合を振り出しに戻されたこの後の展開。ポゼッションは確かにレッズが上だったがピッチの中では広島の選手の方が手応えを感じていたのではないかと思えるほどレッズのビルドアップは上手くいかなかったし、対照的に広島のビルドアップはアタッキングサードまでボールを運ぶことに成功していた。もっともシュートは殆ど打たせなかったが。

レッズのビルドアップが何故上手くいかなかったかは広島の守備がハマっていた以上のことはわからなかったが、広島のビルドアップが何故上手くいっていたかは幾つか思い当たる節があった。
1つはCBである野上と佐々木が思い切って前に出る回数が多いこと。サイドの攻防において数的有利を作ることに成功していた。
2つ目に中盤でボールを持てて簡単に後ろに下げない選手が何人かいたこと。
最後にユンカーの前からのプレスが弱いこと。時折気まぐれにユンカーがプレスをかけると中盤で奪い返せることが多かったのでもっと行って欲しかった。

後半に向けて見えた僅かな光明もあって、それこそが前半終盤に小泉が見せた前線からの守備のスイッチ。小泉が前からプレスをかけた場合は中盤でボールを奪うことに成功していたシーンが実は前半終盤だけでなく16:35や18:20のシーンなど序盤にもあった。

後半、広島は小泉に対し佐々木がマンマーク気味に再三背後からプレス。そのせいか前半から引き続きレッズのビルドアップはままならない。立ち上がりに2度カウンターを仕掛けるシーンがあったがどちらも決定機には至らず。後方から細かくつなぐことを諦めたように無茶なスルーパスを通そうとするも前の選手は触れずにロストするシーンが増える。「光明」と表現した小泉の前プレスは後半も見られたが前半ほどのボール奪取は成功せず。

広島のボール保持は立ち上がりこそ上手くいかないものの57分に浅野と川辺を投入すると57分に浅野のフリックでエゼキエウにラストパス、61分に川辺のチャンネルランで裏抜け即シュート、63分に川辺のスルーパスに浅野の裏抜け成功とそれぞれアタッキングサードで決定的な仕事を再三見せてレッズゴールを脅かした。

後半飲水タイムの前後にユンカーが少し下りてビルドアップが成功するシーンが計3度見られるがいずれもシュートは打てず。惜しまれながらもユンカーは興梠と交代。
その興梠が83分にエリア内で荒木のハンドを誘いPKを獲得し自らこれを決める。その後AT7分を含めた残りの13分ほどは完全にポゼッションを放棄し相手に一方的に攻められ続ける時間が続く。徐々に徐々に危険なシーンを作られATに川辺のミドルによって失点。そのままドローで試合終了。

■課題
別の試合の課題でも何度か挙げているように、途中交代で入った選手が状況を改善させられなかったこと。確かに2点目は交代で入った山中のフィードと同じく交代で入った興梠の折り返しによるPK獲得だった。だがそのPK獲得のシーン以外で試合の流れを取り戻すまではいかなくとも相手の攻撃をもう少し制限をかけるくらいの働きはできなかっただろうか。ダメ押しの追加点を取りに行く素振りすら見せず完全に逃げ切る意思統一はチーム全体でできていたはずだがそれでも耐えきれず失点してしまった。前半を無失点で耐え後半に攻守の要を同時投入し相手に主導権を渡さないまま2ゴールを奪い快勝した前節との名采配ぶりと比べると今節はあまりにも残念過ぎる結果に終わってしまった。

■気になった選手
汰木
前節前半にビルドアップの機能不全を何とかしようと一人で打開してくれたあのプレーをこの日ももう一度と期待しながら見ていたが期待したプレーは最後まで見られなかった。
槙野
サントスへのフィードを何度も跳ね返し。抜かれた明本のカバー。クロスをクリア。ドリブルをブロック。1試合に1度くらい見せる持ち上がってのビルドアップが成功すれば完璧なのだがまあそれが無くても十分な働き。マンオブザマッチ
ユンカー
あっさり先制点を奪ったシーン以外前半は殆どボールを届けられなかったが、後半関根にレイオフ、フリックで柴戸へつなげて決定機のお膳立て、間で受けて前を向いてサイドに流して中央へ飛び込む等、前線で張ってるだけでも十分な脅威になるが下りてビルドアップの出口になってもしっかりと前線へつなげフィニッシュの一歩手前まで漕ぎつけていた。何か起きるとすれば彼だけのように見えたのでできれば90分最後まで見たかった。
柴戸
いつもより前を向く回数が少なかったかなとは思うものの、パフォーマンス自体に大きな不満は無い。ただもう少しプレースタイルを変えて欲しいと思うシーンが目立つ。接触プレーや交錯シーンによって倒れ足を痛めているシーンが多々見られた。体を張ってボールを守らねばならない重要なポジションであることは重々承知しているものの、自らを危険に晒すプレーを続けているといつか取り返しのつかない怪我をしそうで見ていて怖い。替えのきかない選手だけにどうしてももっと体をいたわるプレーを願わずにいられない。


2021年5月26日水曜日

2021 J1リーグ 第15節 ヴィッセル神戸戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは柴戸が敦樹に、小泉が汰木に変更。神戸は前節から前川が飯倉に、井上がイニエスタに、中坂がリンコンに変更。

■おおまかな流れ
今季リーグ戦全試合スタメンだった小泉がベンチスタートということでレッズは立ち上がりに後方からつなぐビルドアップができずロングボールを前線へ放り込むシーンが目立つ。ターゲットは主にユンカーだが相手のライン間に蹴ってもライン裏へ蹴っても容易に収められずボール保持は安定しない。そのため立ち上がりから神戸がボールを握る展開。

神戸のビルドアップは(神戸から見て)右サイドの狭いスペースに相手を密集させてから早めに左へ展開し相手がスライドする前に縦に早くボールを出してエリア内へ進入。その際キーになるのは山口。3:09と10:43には右から左へのサイドチェンジを酒井へ展開。5分に古橋から始まった連続ワンタッチにも山口は絡み最後にイニエスタから酒井の裏抜けは実に鮮やか。シュートは岩波が止めたが。
山口はビルドアップだけでなく守備においても要所要所でレッズの攻撃を寸断。8:55に阿部への前を向かせないプレス。11:26に武藤の股抜きを読んでしっかり股を閉じてタックル。

12分あたりからレッズにもつなぐビルドアップが見られるようになる。キーは汰木。9:10に田中へのサイドチェンジ、12:10に岩波から長い縦パスを受けて前を向いて明本へ出す。汰木はカウンターの局面でも誰より反応が早く走り出してボールを受けていた。
だが肝心なところで一部の選手に小さいミスが多発しなかなかシュートまで辿り着けない。崩し切ったとは言えないまでも攻撃を何度かシュートで終えた神戸とは対照的。

前半をスコアレスで終えるとレッズは後半頭から阿部と武藤を下げ小泉と柴戸を投入。すると後半開始2分でレッズに先制点が生まれる。あまりに早い先制点のため双方ハーフタイムにどんな修正をしどんな変化をつけようとしていたのかがわからなかったが、先制ゴールの一連の流れに小泉と柴戸が絡んだことは確か。
失点した側は前への圧を強め先制した側は少し受けに回ることによって失点した側にボールを持たれ押し込まれるような展開になることはJリーグでよく見る光景だが、先制後のレッズは容易くボールを手放すことなくボールを握り続ける展開になる。この点に関しては確かに交代選手、とりわけ柴戸投入の効果がはっきり出ていた。

その後神戸は佐々木ら複数の選手にアクシデントが発生し55分に一気に3枚替えを敢行。イニエスタの強行突破によって一度危険な場面を作られるものの鈴木と槙野の奮闘でゴールを死守。84分にはレッズが追加点を決める。その後88分にも一度相手に危険なシュートを許してしまうが岩波がブロック。なんとかクリーンシートで試合を締めた。

■ポジティブ
仙台戦にしろ徳島戦、大分戦にしろ、たとえ前半に良くない内容で試合を折り返したとしても後半に結果を出す試合がこうも続くと、リカルド監督のハーフタイムにおける修正力が秀でていることは最早疑いようがない。さらにピッチの中で選手自身の判断で修正し徐々に押し返すサッカーが出来ている。監督自身はそんな選手が揃っていることを「幸運」と言ってはいるものの筆者は監督の指導の賜物だと思っている。強くなるとはただ結果を出すことではなく現実的にはこういう成長のことを指すのではないかと思っている。

■気になった選手
鈴木
スタメンとして出た仙台戦からのことだが危険なボールを通そうとして自陣で奪われるシーンが1試合で2度以上見られる。スキル的な問題は無いと思われるが判断力のところでまだ未熟さが残る。
武藤
ボールを持った時にヘッドアップできないことが今の武藤の一番の課題。ずっと足元のボールを見ながらでないとキープができない。
汰木
ビルドアップではいい位置で受けてサイドへ前線へと上手く供給するし、危険な位置で受けて相手のプレスを受けても簡単には奪われないし、見事なクロスで1アシストを記録しているし攻撃面ではマンオブザマッチ級の活躍と言っていいほど。一方守備時の対応がどうしても気になる。1on1で圧倒してくれとは言わないので2対2や3対3の局面ではもう少し味方とやり方を詰めてほしい。
山中
AT含め30分程度の出場にとどまったが試合終盤に見せたタックルが悉く成功し実に珍しいことに守備での活躍が目立った。
槙野
体を投げ出すシュートブロック等守備でいつもながらの貢献は見せていたがこの日はむしろ攻撃面で目立っていた。こぼれ球に対しダイレクトで鋭く縦に入れて前線の選手に供給する場面が3度以上見られた。総合的に見てマンオブザマッチ


2021年5月19日水曜日

2021 J1リーグ 第14節 ガンバ大阪戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは敦樹が柴戸に、関根が田中に変更。ガンバは前節からチュセジョンが宇佐美に、パトリックがチアゴアウベスに変更。
レッズは前節仙台戦からは中6日の日程。ガンバはACLの日程の関係で4日前に試合があり中3日の日程。水曜の敗戦の2日後には宮本監督の解任を発表し松波強化アカデミー部長の暫定監督就任を発表した。

■おおまかな流れ
ガンバは立ち上がりから激しく体をぶつける勢いでプレスをかけレッズのボール保持は安定せずガンバにボールを握られる。
ガンバのビルドアップはSBにタッチライン際で相手のラインの間くらいに立たせてCBからSBにボールが入ったらSHとのコンビネーションからアーリークロスや、SB自らカットインしてチャンスを創出する形が何度か見られた。
左右でやや作り方が異なり右サイドではあまり有効な形を作れていなかったが左では複数のパターンでボールを前進させていた。
7:45はSB黒川がライン際に立ってCBからのボールを受けているが、10:14にはSHの宇佐美が同じ位置で受けている。ガンバ側の選手の特性が左右で違うこともあったがレッズ側の守備の対応も左右でまた違っていたように見えた。
西は決して最終ラインから飛び出そうとせず常にCBとの距離間を保っていて大外レーンの対応は全て田中に任せていたように見えたが、一方逆サイドの明本は飛び出して奥野にプレスをかける場面も見られた。

一方序盤のレッズのビルドアップで目立ったのは小泉。中間ポジションに立って2:16には西から長い縦パスを引き出し、3:39にも岩波から、5:12には槙野からそれぞれ長い縦パスをフリーで受ける姿が見られた。
唐突に生まれた先制点も槙野のロングフィードを小泉が頭で落とし、さらに大外レーンに開いて西からの縦パスを引き出しボールを前進。その後、柴戸から左の阿部へ展開し武藤へ縦、ユンカーへのクロスは誰も触れず流れたボールを田中が拾って柔らかい山なりクロスを後ろに跳びながらユンカーが頭で合わせて先制ゴール。

速攻カウンターも今までにないほど綺麗な形で素早く効果的に決まっていた。
どのカウンターにも絡んでいたのがユンカー。2:43には右から斜めに切り込み武藤へのラストパス、8:23にはこぼれ球を拾って中央を持ち運んで右の田中へ出し自らはクロスを待ってゴール前へ飛び込む、17:12には前線から下りて三浦を背負いながらワンタッチでボールをコントロールして前を向いて爆走、その後バイタルで小泉へのラストパス。
追加点も全てカウンターからで2点目はユンカーのサイドチェンジから。3点目は田中のクロスにユンカーが左足で流し込むだけのフィニッシュ。
相手がハイラインだったことも簡単に裏をとれた理由になっているがそれにしてもほぼ全てのカウンターにユンカーが絡んでいるのは驚異的。しかもフィニッシュだけではなく起点になるプレーが多かった。

監督からすれば理想的ではないものの3点差をつけて折り返した素晴らしい前半からすると後半の内容は褒められたものではなかった。
特に小泉とユンカーを同時に交代させて以降は守って逃げ切るのかダメ押しの追加点を取りに行きたいのかもはっきりしなかった。その次の阿部と武藤を下げた交代にしてもどちらもポゼッションを上げたいというのが交代の意図としてあったと思われるが状況は好転しなかった。
後半の飲水タイムを経てやや改善されたもののレッズ側の修正というよりは相手の交代策がハマらなかっただけのようにも見えた。
とは言え、決定機を作らせず失点もなかったのでもたらした結果は十分と言えるが。

■課題
後半交代で入った選手が状況の改善も違いを作ることもできず無為に時間を費やしたこと。
リーグ戦の途中出場はエリートリーグのフル出場よりも価値のある時間に思えるが選手にとってはそうではないのかと疑う内容だった。

■ポジティブ
久々となった田中のスタメン起用が直前のエリートリーグのパフォーマンスから来ていることは試合後の監督のコメントからも確認され、ますますエリートリーグの重要性と有用性が実証されたこと。
理想とするサッカーを実現できなくとも別のサッカーを現場の選手たちで選択し実行できたこと。そしてその結果勝利したこと。

■気になった選手
ユンカー
抜群の決定力を持っていることはここ3試合で十分証明されたがフィニッシュワーク以外にも多彩なスキルを持っていることが確認された。多少のプレスでも奪われず倒されないフィジカルや、相手DFを背負っても正確に落とせるポスト能力、小泉へラストパスを出せる冷静さ、狭いスペースからサイドチェンジを出せる視野の広さ、チアゴアウベスを振り切るスプリント能力。非の打ちどころが無いとは彼のためにある言葉。文句なしのマンオブザマッチ
田中
1ゴール2アシストという確かな結果を残しユンカーより20分も長くピッチに残ったのだからマンオブザマッチでも遜色ない活躍と言える。ただ開幕当初に田中のプレーに抱いた不満は解消されなかった。すなわちビルドアップの関与だがこの試合に関して言えば田中がライン際に張ってたから小泉が内のレーンで縦パスを受けられたのかも。何せリーグ戦スタメン出場が2節以来だし79分も出たのは今季初なのでもう少し見守りたい。
小泉
ビルドアップで最終ラインからの縦パスを引き出す抜群のポジショニングが際立っていた。惜しむらくは次のプレーに周りが呼応できなかったこと。近くに武藤がいれば仙台戦のような連携が見れたと思えるが右サイドで受けることが多く武藤とは距離があった。
明本
今やすっかりSBとして定着した感のある明本はこの日もフル出場。前半武藤とのコンビでチアゴと奥野を抑え込んだ守備は完璧だった。1アシストという結果も残しますますこのポジションが確固たるものとなりつつある。


2021年5月13日木曜日

2021 J1リーグ 第13節 ベガルタ仙台戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは西川が鈴木に、柴戸が阿部に、興梠がユンカーに変更。仙台は前節から真瀬が蜂須賀に、赤崎が氣田に変更。

■おおまかな流れ
レッズはボールを持ったら強引に最前線のユンカーへロングボールを蹴っ飛ばすシーンが序盤から度々見られる。3分に武藤、3分に関根、4分に岩波、5分に鈴木と開始6分までで4度も蹴っ飛ばしていたが1本もユンカーへは通らなかった。
ロングボールを簡単に相手に奪われネガトラも効かず攻め込まれるため立ち上がりは仙台が主導権を握る。

5:53にレッズのスローインから左ペナ脇で受けた小泉が中央へ斜めに長いボールを入れるとこれを氣田が奪う。すぐさまエリア内の西村へ縦に出し槙野が寄せる前に左足シュートを放つも2,3歩前に出た鈴木が体に当ててゴールを割らせない。結果的にはこのビッグセーブで前半を無失点で折り返せたことが、ひいては試合全体の勝敗を左右したように思われた。

13分を過ぎたあたりからポゼッションも向上し徐々にレッズの反撃開始。
13:52に中央で受けた小泉がロブパスを入れると間で受けたユンカーが胸で落として左の武藤へ。武藤は縦に仕掛けてエリア内で左足クロス。ユンカーが頭で合わせるもボールはバーの上。
15:40にレッズのスローインを奪って仙台のカウンター。中央を縦に早くつないで最後は槙野に前に立たれながら強引に加藤の左足シュート。鈴木が右に倒れながら両手でキャッチ。
17:28にレッズの右スローインからユンカーが落として槙野へ戻す。槙野は左の小泉へ。小泉は左サイドを単独で持ち上がって中央の武藤へ斜めのパス。これを後ろ向きで受けて一度前を向くも右へバックパス。阿部がダイレクトでグラウンダーのミドルを放つも左のポストを逸れて枠外。

前半の飲水タイムを挟んでようやくレッズに後方からつなぐビルドアップが増え始める。
31:05に関口に対し阿部がプレスをかけ敦樹のプレスバックでひっかけたボールが氣田に拾われる。そのまま前進してペナルティアークで右足ミドルを放つも鈴木がキャッチ。
レッズもその後シュート2本を計上するも相手GKのセーブを必要とするシュートは打てない。

後半立ち上がりは仙台もやや前からの圧を強めたか五分以上の内容で押し返されるレッズ。
50:10にはCKをフリーで合わせられる危険なシーンも。
56:41、敵陣で関根からボールを奪った関口の右足ミドルは枠外。
57:36、西から右大外関根へ縦、左の武藤へ、ターンして小泉へ縦、2人食いつくが武藤へフリックワンツー、武藤はさらにワンタッチでユンカーへ、エリア内フリーで抜け出し左足で止めて左足のアウトサイドでゴール左隅へ沈め待望の先制点。
この先制点と似た形は後半開始早々にも同じく武藤、小泉のコンビで作られていた。どちらのシーンも最終ラインから大外レーンに開いたウイングの選手にボールが入った瞬間にはその隣のレーンにいた選手、この場合どちらも武藤だが彼が描いたゴールまでのイメージとそれに呼応できた小泉の関係が素晴らしかった。

先制後も引き続きボールを握るレッズ。
67:35、敵陣で西から関根に縦、前を向いて左の興梠へ、ワンタッチで右の阿部へショートロブパス、阿部も頭でワンタッチで相手の最終ライン裏へ、明本が抜け出し左足を伸ばしてトラップするも平岡のタックルによりシュートは打てず。
69:12、槙野のオーバーヘッドは手が吉野の顔に入ったためファウルの判定。ファウルが無かったとしてもボールはGK正面でスウォビクは両手でキャッチ。
72:25、敵陣で小泉がファウルを受け吉野にイエローカード。ここで得たFKを阿部が直接叩き込み追加点。

結果的にクリーンシートで試合を終えたもののラスト15分の内容は「しっかりクローズ」とは言い難い内容。75分には岩波がエリア内で相手を倒すPK献上ものの守備、81分と88分に鈴木のフィードが自陣でマルティノスに奪われる場面、91分には相手のCKに飛び出してボールに触れない鈴木と危ないシーンが何度か見られた。相手が仙台でなければ、この日の主審が別の人ならば、これらは失点に繋がっていたかもしれない。
ともあれ決定機は作らせずにクリーンシートで試合終了。

■課題
課題とは言えないが、試合序盤にレッズが見せたサッカーが意味するものは何なのか。あれをどう捉えるかでこの試合の評価も分かれそう。狙いはともかく事実として狙いを達成することは一切出来なかった。それは間違いない。無理と悟って即座に方針転換しピッチ内の選手で、あるいは監督の修正によっていつものレッズのサッカーに戻ったことはポジティブに捉えていいと思う。問題は何らかの調整を加えて次の試合でも同じチャレンジをするのかどうか。これっきりで終わるならただの失敗として切って捨てるだけの過去になるが。

■気になった選手
伊藤敦樹
柴戸の負傷離脱中、その代役を求められることになるであろう選手こそ敦樹になると勝手に予想しているのだがこの試合に関して言えば不合格と言わざるを得ない。ネガトラに関しては蹴っ飛ばすのをチーム全体でやめてからはマシになったが、ビルドアップに関しては柴戸ほどの貢献は最後までできなかった。ただし隙あらば前に出てシュートを打とうとする積極性は○。
関根
ボールロストが多い。バックパスも多い。相手を見た優位性ある正しいポジショニングが出来ているように見えない。先制点のシーンも武藤の体の後ろにパスを出してしまっているせいで無駄なターンが必要になっていることばかり気になった。
西
非の打ちどころのない完璧超人と思われた選手だが50分に仙台のCKでマークしてるはずの選手にフリーで頭で合わせられたシーンには肝を冷やした。これだけが唯一の弱点であってくれれば実に些細な問題だが。
武藤
7節鹿島戦以来全試合スタメン起用され重用されてきた武藤だが鹿島戦ほどのパフォーマンスを発揮できたと言える試合はここまで無かった。この試合では見事にあの日の輝きを取り戻すクオリティを見せた。問題は相手が鹿島、仙台だから出来たプレーなのか、ユンカーという最後のピースがはまったから出来たのか、単に武藤のコンディションが絶好調なだけだったのか。これらのうちどれによってもたらされた結果なのかで今後の評価も変わってくる。とは言えマンオブザマッチ
鈴木
序盤のビッグセーブは分水嶺になったと言っても過言ではないほどのプレーだったが試合終盤で見せたプレーはまだまだ年齢相応の甘さが出たと言える。それらのミスが相手の決定機にも失点にも繋がらなかったのは仲間に助けられたためであることはしっかり自覚すべき。


2021年5月8日土曜日

2021 J1リーグ 第12節 アビスパ福岡戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは杉本が興梠に、山中が敦樹に変更。福岡は前節から金森がジョルディクルークスに代わったのみ。

■おおまかな流れ
序盤からレッズがボールを握って攻める。5分までに何度かアタッキングサードまで運べていたがシュートはなし。5分までに2回武藤のロストと2回岩波のロングフィードが直接ラインを割る。

6:45にビルドアップの過程で敦樹が中盤危険な位置でロスト。それから失点する7:30までの間に後ろにボールを戻させてやり直させることは出来てもボールを奪い返すことは一度もできなかった。

12:20に小泉のクロスに関根が飛び込んでジャンプして合わせた右足のシュートと、14:20にショートコーナーから武藤がカットインしてタックルした奈良の足に当たってループシュート。失点後もレッズがボールを握り続けたが結局前半のシュートはこの2本で終わった。

前節大分戦同様、ビハインドを背負った展開になると後方からのロングフィードやクロスの放り込みが増えていたが意外とそれが通っていた。相手の脅威になる攻撃は出来ていたが決定機を作ることは出来ずシュートも打てなかった。
ただ、これも前節同様だが見え見えの長い縦パスを足元に出して背後から潰されてロストするシーンも90分に渡って複数回見られたのは気になる。大分戦後に修正されなかったのだろうか。

後半のレッズのビルドアップは後方で何度もやり直しながら機を見て前線へ放り込むロングフィードが増える。前半と比べるとかなり拙攻。関根と交代で汰木が入ると前線が活性化しやや良化。しかし2失点目でそれも無駄になる。

後半のシュートは56分と57分にどちらも山中がFKから直接ゴールを狙った2本と、66分に山中のファークロスに西が飛び込んだ1本、89分にエリア内右から西がこぼれ球に合わせた1本。

■課題
やはり依然としてアタッキングサードでの振る舞いが改善しない。ビルドアップはやれている。ゴール前までボールは運べる。だがどうやってゴールを奪うかについて有効な手だてを見せることが最後までできなかった。
西川のミスにより試合が難しくなったのは事実だが得点でミスをチャラにする時間は十分にあった。決定機を作れなかったわけでもなかった。だが結果的にはレッズのゴールはゼロ。
開幕節と比べると今のレッズは怪我人の復帰もあってようやく理想のスカッドが完成したように見える。つまりこれ以上はメンバーの組み合わせだけで問題が解決するとは思えない。ユンカーとトーマスデンの2人で解決できればそれに越したことはないがそれでも叶わなかった時がリカルド監督の真価が問われる時かもしれない。

■気になった選手
興梠
前線から下りてきすぎ。ビルドアップに関わろうとしすぎ。昨季まではそうしなければまともにビルドアップが成立しなかったため身に付いてしまった悪癖とも言える。だが今は興梠が関わらなくとも前線にボールを届けることができる。要我慢。
武藤
常にゴールに背を向けてボールを受けてしまっている。38分にはせっかく前を向いて受けたのに自ら背を向けてしまうシーンも。背後からのプレスに潰されながらもフリック一発でつなげるシーンがあればそれでも十分脅威になり得る選手だが鹿島戦以来それも見られない。
小泉
判断の遅れと選択ミスから来るボールロストがいつもより多かったかも。クロスが直接ラインを割るシーンもあった。今季J2から加入したばかりの新戦力が今やすっかり攻撃の軸なので小泉の出来にレッズの攻撃の成否が直結してしまうのはさすがに頼りすぎか。というか小泉対策がどのチームも完成しつつあるのかも。
柴戸
獅子奮迅とはまさにこのことと言わんばかりの働き。特にボール保持における鬼キープ。簡単にパスを出さず相手ゴールに背を向けずプレスを受けながらゴリゴリ突き進んでボールを運ぼうとしていた姿が強烈。負傷交代で前半だけのプレーではあるもののマンオブザマッチ


2021年5月1日土曜日

2021 J1リーグ 第11節 大分トリニータ戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは敦樹が杉本に代わったのみ。大分は前節から高木がポープに、高畑が香川に、長谷川が小林裕紀に、高澤が伊佐に代わったのみ。

■ボール保持
開始2分で先制に成功する今までにない展開を迎えたレッズ。開始早々のリードという慣れない展開のせいかビルドアップ時に後方から強引に長い縦パスを入れて逆に奪われるシーンが何度も見られた。逆転を許した2失点目も、相手の前からのプレスがかかっていたとは言え実はこのパターンでのボールロストがきっかけになっていた。そのため数字上はレッズのポゼッションが上だったもののその実試合を優勢に進めていたのは大分だった。

後半は頭から杉本に代わって敦樹が投入されたこともあり敦樹が最終ラインに下りることでビルドアップが安定。数字と内容が伴ったレッズの攻撃の時間が長くなるが相変わらずなかなかシュートまで漕ぎつけられない。前半は封印していたのかショートパスへの強いこだわりだったのかわからないが、後半のボール保持は明らかに放り込む回数が増えていた。後方からのロングフィードにしろ単純なクロスにしろ。

■ボール非保持
レッズの守備は全員で前からプレスをかけ積極的にボールを奪いに行く場面が前半から見られた。大分のボール保持で脅威になったのは右WBの松本。シンプルな足の速さを活かしトップスピードでボールを受けることに専念すれば簡単にぶち抜くことが可能で、9分・11分・15分と前半だけで3度もレッズの左サイド深くを抉られてマイナスクロスを許してしまっていた。ただし15分のは山中のタックルでしっかり防いだため未遂ではあるが相手にCKを与えることになった。22分の失点も松本のオーバーラップからのアーリークロスがきっかけになっていて結局失点するまでレッズは松本のスピードに対応することができなかった。

後半大分はボール保持において手数をかけず時間をかけず人数をかけず分かり易くポゼッション放棄。但しこちらのミスは見逃さずしっかりカウンターを仕掛けてきた。

■攻→守
前半はあまり上手くいかなかったネガトラが後半交代で入った敦樹の守備が効いて何度もボールを奪い返した。

■守→攻
決勝点になったカウンターは直前のルヴァンカップでも汰木が見せた形と酷似していた。汰木からのボールを受けたのは福島ではなく明本。メンバーが変わっても同じ形を再現できるのは普段のトレーニングで戦術が落とし込まれている証拠。

―まとめ―

■ポジティブ
前半は完全に事前対策で上を行かれたがハーフタイムの修正と交代策によって勝ち越しに成功した。徳島戦でも言われていたがリカルド監督はハーフタイムの修正力が秀でている。マリノス戦や川崎戦のような後半の失点も過去にあるため否定する意見もあるかもしれないが、その2チームほどの実力差が無ければ監督の手腕だけで引っくり返すことは十分可能なことがここ数試合で証明された。

■課題
以前から課題として挙げていたビルドアップの拙さだが、これまではギリギリのところで選手個人の踏ん張りで耐えてなんとか失点には至らず済んでいたのが今回ついに失点に繋がってしまった。シーズン中に個人のスキルを伸ばすのも難しいし飲水タイムによる監督の修正ではあまり効果が出ないこともわかっている。小泉のコメントにもあるように今は選手個々のピッチ内での修正によってなんとかするしかないのが現状だろう。

■気になった選手
柴戸
チーム1の走行距離を出すほどよく走りよく奪っていたが、ボール保持においてはあまりボールに絡めなかった。18分に伊佐を引き連れてボールホルダーに近寄って関根のスペース消して結局ロストしたシーンに象徴されるようにボールサイドに顔を出し過ぎなのでは。
武藤
前節セレッソ戦に引き続きミスが目立つ。味方の意を感じ取れずボールロストするシーンも。
山中
前半何度も松本に裏を取られたのは山中一人の責任ではないが後半トラップ際を松本に奪われカウンターを食らったシーンはあってはならないミス。わずか3分後に汰木と代えられてしまった事実はどれだけ致命的なミスだったか明白。
敦樹
後半開始から投入されビルドアップと守備の両方の安定をチームにもたらした。特にネガトラ時の守備対応では幾度もピンチを未然に防いだ。


2021年4月25日日曜日

2021 J1リーグ 第10節 セレッソ大阪戦

■スタメン
レッズは前節から中6日。ACL組のセレッソは水曜日に試合があり中3日のスケジュールになった。レッズは前節から武田が柴戸に代わったのみ。一方セレッソは一切変更なし。

■ボール保持
セレッソは3連勝した調子のいい時期のポゼッションは五分で6節以降の5試合は9節福岡戦を除いて全て相手に持たせている。なのでボールを持ちたいレッズがボール保持の時間が全体的に長くなる。レッズのこの日のビルドアップの要は西。何せ西はちょっとやそっとのプレスじゃ奪われないし、いざとなったら自分で持ち運ぶことも可能だし、長短のボールも自在に出せると安定感抜群。右サイドで相手が密集した狭いスペースをショートパスをつないで前進していた。セレッソの前半の守備はボールを奪うラインをかなり低く設定していた様子でアタッキングサードまでは比較的楽に前進していた。最後の崩しでは相変わらずシュートに持ち込めないシーンが多かったが。

■守→攻
後半になるとセレッソは最終ラインへのプレスを前からかけてくる。ディフェンスラインも上げたため裏のスペースを突いてレッズのカウンターも増える。ただそれもセレッソが先制するまでで先制後はしっかり帰陣しセット守備。必然的にカウンターチャンスは減少。

■攻→守
前線への長いボールが入った対応もショートパスでつなごうとしてきた対応もどちらも素早くプレスをかけていた。奪い切るプレスではなくディレイ対応が多め。前半このネガトラ対応は実に上手く機能していて相手の速攻を許さず後ろからやり直させる守備対応ができていた。

後半は相手がプレス開始を早めラインを上げて中盤を圧縮してきたためトランジションが多発したこともあり前半ほどのセカンドボール回収率はなくなりオープンな展開になる。レッズは失点後攻撃に比重を置き前がかりになったこともあり相手のボール保持に制限をかけられずディフェンシブサードへの進入を許しシュートを打たれる回数が増える。

■ボール非保持
長いボールを放り込んできた時の対応が最後まで完璧。負けたもののセット守備が崩された場面は無し。

■失点
失点はCKから。

―まとめ―

■ポジティブ
負けはしたものの相手に決定機は作らせなかったこと。失点後前がかりになってカウンターを受けるシーンは増えたもののセットした守備を崩されたシーンは無かった。ボールを失った際の素早い切り替えからのプレスがよく効いていてこの日は全体的に守備が上手く機能していた。

それとシンプルなクロスで決定機を作りシュートで終えることが出来ていたこと。

■課題
前回課題として挙げた左からのビルドアップは前節よりは多少増えていた。だがやはり右サイドほどのスムーズさは無かった。ボールが出た瞬間に優位性を持てる立ち位置を取れていないように思われる。ボールスキルと違ってポジショニングにスキルはいらない。チームメイトがそれぞれ持つ特性を相互に理解することが重要なのでは。後方でバッファを作って前線にそれを残したままボールを届けることができないとフィニッシュまで持ち込めない。ロングフィードばかり上手くなっても再現性も成功率も上がらない。

そしてこれも前回課題に挙げた交代枠をフルに使えない問題。前節は3人までしか使わなかった交代枠がついにはこの日2人までとなってしまった。直近3試合と異なり久々にビハインドを背負った展開ということもあって難しさは当然あったはず。だがあらゆる展開を想定して組んでいるはずのスカッドがリードした展開でもビハインドを背負った展開でもどちらでも使われなかった選手が現実に存在した。この事実は見る側としても勿論のこと、それ以上にやはり選手本人からするとショックな出来事ではないか。幸いにしてここからはルヴァンカップが3週連続で平日に組まれている。エリートリーグも加えたそれらの試合で確たる結果を残せなければ現状の打開はかなり厳しいものと思われる。

そしてラストの崩しも未だ未熟なままだった。

■気になった選手
武藤
ビルドアップに関与すると上手くつなげるのは間違いないが、一方でフィニッシュワークが全て空振りに終わった。ファーストタッチを上手くコントロール出来ない場面が目立つ。チャンスを棒に振った回数が多すぎるためワーストプレーヤー。ただし68分興梠に合わせたクロスだけはゴールの可能性を感じた。
山中
クロスもショートパスもひっかけすぎ。背後から足を出されたのならまだしも目の前に立っている相手を無視して強引にボールを出してボールロストを連発するのはいただけない。課題に挙げた左サイドのビルドアップの問題も殆どが山中のポジショニングの問題。
西
この日のビルドアップで最もボールに絡みボールを前進させた。ネガトラ対応もその鋭い予測をもって危険な選手への素早いプレスを実行し相手の前進を遅らせた。78分の関根へのクロスで決定機まで演出。
関根
シュートを5本放ち枠外3本。西のクロスに頭で合わせに行ったシーンはともかく同じ角度から2本のシュートを2本とも宇宙開発は残念すぎる。


2021年4月18日日曜日

2021 J1リーグ 第9節 徳島ヴォルティス戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは柴戸が敦樹に代わったのみ。徳島は前節から田向が鈴木大誠に、岩尾が藤田に代わったのみ。

■ボール保持
ポゼッションで劣った試合で勝つこともあればポゼッションで勝っても試合に負けることもある徳島。基本的にはお互いにボールを持ちたいはずなので序盤は中盤での激しいボールの奪い合い。ほぼ五分の主導権争いの中、6分に武田が負傷交代すると杉本が投入される10分まで1人少ない状態で試合再開していたこともあって流れは徳島が掴む。徳島は積極的に前からのプレスもかけていたこともあって序盤のレッズのビルドアップは長いボールが多くなっていった。ビルドアップのスタートはやはり岩波。岩波は相手の前からのプレスを受けて時間を確保できないとボールの精度が落ちる傾向がある。33分には徳島の決定機を許すハメになる致命的なミスを犯す。

その後も危ういシーンが続いたがギリギリのところで西川のビッグセーブに救われ辛くも無失点で前半を折り返す。前半終了間際にはエリア内でのシュートにも成功しいい流れで後半を迎える。その掴みかけた流れを手放すことなく後半レッズのボール保持は改善されポゼッションも回復する。そしてセットプレーから見事先制に成功。

■ボール非保持
徳島の前半のビルドアップは福岡が鋭い縦パスを中央から通すか、上福元のフィードを岸本に放り込むかの2パターンが多かった。一方後半は徳島は岩尾を投入したからかビルドアップで後ろからつなぐ意識を強める。レッズの後半のボール保持が改善されたのは相手の変化によって前からプレスをかけやすくなったためだった。先制後はさらに全員でハイプレス。奪ったらなるべく後ろからやり直してゆったり遅攻。「守って逃げ切る」意識がチーム全体で共有されていたいい守備だった。

■攻→守
ボール非保持同様高い集中力をもっていい守備ができていた。

■守→攻
相手のネガトラが優秀なせいもあってレッズのカウンターは不発ばかり。

―まとめ―

■ポジティブ
選手個人のことになってしまうが、コンディションが万全ではない選手をベンチに回し代わりに入った選手がその役割をこなして見せたこと。全く同じ振る舞いを見せる必要は無いし持っている特性も違うためこのパフォーマンスでこれくらいの計算が立つならば相手によって代えるプランも可能だろう。WGやCFにも同レベルの競争が早く起こって欲しい。

■課題
ビルドアップにおける岩波の負担が大き過ぎる。チーム内で約束事になっているかの如く、槙野も西川も岩波へボールを集め岩波からビルドアップを開始させようとする。確かにフィードの精度はチーム随一と言っても過言ではないほどだがその右足の性能をフルに発揮させないための対策は既にバレているように思える。おそらく岩波自信も自分に足りないものは気付いているだろうしチームメイトも彼に頼りすぎなことにも気付いていると思う。それでも岩波に頼らざるを得ないのは偏に左サイドの組み立てが余りに拙いからに他ならない。西が右SBとして日に日にその存在感を増していることや、この日は柴戸がいなかったことも影響しているはず。とにかくこのままではいつか致命的なミスが失点に直結する日が来てしまう。岩波自身に弱点を克服させるより負荷を分散させる方がリスク低減になるはず。槙野、山中、小泉、敦樹は問題意識を持って取り組んで欲しい。

それともう一つ気になったのは交代枠が3人までしか使われなかったこと。元々フルで使うことが少ない監督ではあるものの後半リードした展開でこの日のベンチメンバーを投入できないと判断されたことはここまでの試合を見てきた側からしても実に納得の采配だった。今後も厳しい連戦が続く日程となっているため使わざるを得ない瞬間はきっと来るため彼らの巻き返しに期待。

■気になった選手
杉本
武田の負傷交代により緊急登板となった杉本は投入直後はミスを連発。他にもエリア内でボールが入っても結局シュートまで持ち込めずこの日のパフォーマンスは最後まで低調。
岩波
ビルドアップの要としてこの日何度も中盤や前線へボールを供給した。失点もののミスを犯したのは課題にも挙げたように負担をかけすぎなせい。
西
相手のプレスがレッズの右へ右へと追い込むプレスだったため岩波と同じく西にもかなりのプレッシャーがかかっていたはずだがやはり経験もスキルも豊富でとにかくボールロストしない。誰よりクレバーで周りがよく見えている。そのサッカーIQの高さはビルドアップだけでなく崩しの局面でも発揮されアシストを残した前々節以上に活躍ぶりが目立った。
敦樹
柴戸がどうも万全ではなかったようで同ポジションを敦樹が務めた。この日一番タックルでボールを止めたのが敦樹。守備面では如何なくその意識の高さをもって何度も相手からボールを奪ったが攻撃面ではビルドアップでボールを前進させられなかったのが気がかり。
西川
前半だけで3度ものファインセーブで最後までゴールを守り抜いたチームの守護神が問答無用のマンオブザマッチ。86分に見せた西への超絶高精度ロングフィードは戦術兵器。


2021年4月11日日曜日

2021 J1リーグ 第8節 清水エスパルス戦

■スタメン
前節鹿島戦の翌日、新型コロナウイルス感染症陽性判定がトップチームの選手1名に出たことが発表された。そのため4日と5日の2日間はクラブハウスを使用した全体練習ができず6日に全体練習が再開された。

一方清水は4日に徳島との試合があり中2日でレッズとの試合に臨んだ。

レッズは前節からスタメンどころかベンチメンバーすら入れ替え無し。清水は前節徳島戦から福森が原に、エウシーニョが奥井に、金子翔太が中山に、河井が宮本に、西澤が中村に、後藤がディサロに入れ替わり6枚替えのターンオーバー。

■ボール保持
基本ボールは持とうとしない清水とボールを持ちたいレッズの思惑は一致し序盤からレッズがボールを握り続ける。レッズのビルドアップ時、清水は最終ラインにはプレスをかけずボールが1列前へ進むとプレス開始。槙野、西川は横パスしか選択せず基本は岩波から開始。たまに柴戸や小泉が下りてビルドアップ開始。右SHの中山が内に絞りすぎなせいか山中がフリーで浮く場面が序盤から何度か見られる。とは言え相変わらずアタッキングサードでの前線の動きはまだ物足りなさが残る。

後半清水はプレス開始を早めレッズの最終ラインにもプレスをかける。球際の厳しさもやや強くなりレッズのシュート数も減るが相手の決定機も作らせず前半のリードを保ったまま試合をクローズ。後半終了間際にダメ押しの追加点を奪い理想的な試合運びで勝利。

■ボール非保持
前節から6人も入れ替えおそらくはベストメンバーではないと思われる清水。ビルドアップで足元が覚束ない場面が多々見られ容易くボールロスト。結局はロングボール頼みになるもこの日も槙野の読みは冴えわたり悉く跳ね返し続けた。最近のレッズの守備で重要だと思っているのは跳ね返したボールをきちんと回収してマイボールにできていることだと思う。

■攻→守
ただでさえ試合のコントロールに定評あるロティーナとの試合なのでトランジションすらコントロールされているかのように奪っても奪われてもお互いに激しくプレスには行かなかった。なんせ相手のミスが多かったため相手のトラップを待てば簡単にボールを奪えるシーンが目立った。

■守→攻
前節に引き続きこの日も奪って速攻を仕掛けるようなシーンは殆ど無し。ただ試合終了間際の途中交代選手によるカウンターからの追加点はさすがに痺れた。

■得点
先制目はCK一発。追加点はカウンターから。終了間際もあって相手は前がかりだったかも。

―まとめ―

■ポジティブ
クリーンシートで試合を終えたこと。不振の続いたFWに短い出場時間でゴールが生まれたこと。前者はDF陣の自信に繋がる。後者もゴールを決めた本人よりもチームメイトのほうが安心している辺りどれだけ周りが心配していたかが窺える。

■課題
アタッキングサードにおけるシュートまでの拙い設計。後半立ち上がりの試合の入りの悪さ。交代選手の守備強度の低さ。最も緊急度の高い課題は最後の点では。長いシーズン連戦はまだあるし交代選手を使わないわけにはいかない。リードした展開で守備に比重を置き逃げ切るつもりなのに逆に守備強度が下がったのでは本末転倒。この試合だけの現象であれば心配しすぎる必要もないが。

■気になった選手
武田
受けたら即パスが出せるのは周りが見えてる証拠でもあるがフリーで持ち運べるタイミングでも機械的にパスを出してしまうプレーが気になった。明本が武藤の空けたスペースに飛び込む動きに対し武田がそれをやろうとしないのも物足りない。まだまだやれるはず。
岩波
先制ゴールはお見事。だが交錯して倒れている柴戸にぶつける縦パスを出したあのプレーだけは故意ではないとわかっていても許せなかった。ノータイムで次のプレーを迫られた時の判断力が槙野も含めレッズのCBは悪すぎる。
明本
前節4人までしか使わなかった交代枠をこの日も全く同じ4人が交代し5人目は西だった。2試合とも90分フルでピッチに残された明本が今どれだけ監督に信頼されているか。少なくともゴールだけで評価されたわけではないことは明白。
柴戸
明本同様2試合連続でフル出場した柴戸もまた監督の信頼を勝ち得た一人。チャレンジするタイミングと成功率は向上しているのでなんでもないショートパスがズレてロストするようなミスが減れば不動のアンカーとして定着するはず。
槙野
引きつけてロングフィードも持ち運ぶビルドアップも殆どなかったものの相手の長いボールを悉く跳ね返し続けた。先制シーンでは相手DFを引きつけて岩波をフリーにする動きがあったことも忘れてはならない。マンオブザマッチ


2021年4月7日水曜日

2021 J1リーグ 第7節 鹿島アントラーズ戦

■スタメン
レッズはルヴァンカップ柏戦からの入れ替えは鈴木が西川に、涼太郎が山中に、敦樹が小泉に、田中が関根に、興梠が武田に、杉本が武藤になり6枚替えの大幅なメンバー変更。さらには2種登録の工藤までもがベンチ入りしていて明らかにエリートリーグの結果を受けての布陣。鹿島はルヴァンカップ福岡戦からの入れ替えはクォンスンテが沖に、犬飼が町田に、舩橋が三竿に代わったのみだが関川の位置は左CBから右CBになっていた。

■ボール非保持
レッズのいい守備があったにしてもこの日の鹿島の出来は悪すぎた。土居と犬飼という主力を欠いたとは言えルヴァンカップ福岡戦では土居と町田を欠いても4点差で勝利している。ここまであまりリーグ戦に出ていなかった選手もレッズ戦を見据えそこで起用され試運転も上々だったはず。福岡もリーグ戦においてはレッズ、鹿島の上位にいることからも容易く勝てる相手ではないはず。戦評に軽く目を通してみてもネガティブな言葉は並んでいない。何故あそこまで悪い出来だったのか。

具体的に鹿島がどう悪かったかと言えばボール保持。長いボールを蹴ってはロスト、スローインを入れてはロスト、引っ掛けてトランジションが発生しても奪い切れずロスト、とにかく簡単にボールを手放し過ぎていた。ではレッズの守備の何が良かったか。まず相手は後方からのつなぐビルドアップをしてこなかったため中盤でのセカンドボール回収合戦が多発。この日のレッズのメンバーがこの勝負に強かったのかわからないがまずここで殆ど負けなかった。相手のロングフィードの精度が悪かったこともあった。レッズの素早いプレスも相手に時間を与えずフィードの精度を下げる効果をもたらした。レッズのスタメンに大幅なメンバー変更があったことも相手の虚をついたのかもしれない。

■ボール保持
鹿島があまりにも容易くボールを手放すものだからポゼッションは終始レッズが圧倒。鹿島は序盤から2トップが積極的にレッズ最終ラインへのプレスを仕掛けていたがレッズは安易に長いボールに逃げずしっかり引きつけてからつなげてビルドアップできていた。前節課題として挙げた前線の選手のアタッキングサードでの振る舞いだがこの試合ではかなり改善されていた。まずシュート数が増えていたことが一つ。攻撃をシュートで終われずとも迷わずクロスを放り込んだり、迷わずドリブルを仕掛けたりとにかくアタッキングサードで迷いが消えたように攻め立てていた。

■攻→守
この日レッズの動きで際立って良かったのはこのネガトラ。武藤、武田、柴戸、西といったリーグ戦初スタメンの選手が4人もいたが前線から中盤にかけてほぼ全員が高い集中力をもって素早いプレスをかけていた。かなりラインを上げてコンパクトな陣形にしたことはセカンドボール回収にも大きく寄与したのでは。

■守→攻
前線や中盤で引っ掛けてのカウンターよりは最終ラインで相手を引きつけての疑似カウンターのほうが多かった。先制点もそこから。

■得点
1点目は流れの中から。自陣左のライン際で小泉から逆サイドの西へ。持ち上がってファーサイドの明本へ長いアーリークロス。鹿島DFラインの裏に抜け出しワントラップすると飛び出した沖をすり抜けゴール右隅に流し込んだ。2点目はPK。明本が常本に倒されVARの介入もありPK獲得。

■失点
失点はCKから。

―まとめ―

■ポジティブ
90分試合をコントロールして相手の狙いを封じこちらの狙いに沿った試合運びができたこと。おそらく選手・監督らも気にしていたであろう流れの中からのゴールもようやく生まれたこと。相手の調子は確かに悪かっただろうし主力も欠いていた。だが調子を落とした相手にすら勝ち点3を取れずに連戦に突入すれば立ち直るきっかけすら掴めない。

それともう一つ忘れてはならないのがエリートリーグの存在。武藤、関根、武田、そしてベンチ入りした工藤の4人は明らかにこのエリートリーグの結果を受けての起用となった。規定さえ守ればこの大会をどう活用するかはクラブそれぞれだしトップチームに直接勝ち点をもたらす効果を期待できるのなら今後もエリートリーグで積極的にトップの選手を起用していって欲しい。

■課題
無失点で終われなかったこと。武田の関川に対する対応はさすがに軽すぎたか。そしてマリノス戦、川崎戦に続きこの試合でも後半の立ち上がりが良くなかったこと。失点してもおかしくないシュートを許しているしボールを持ってからのパス回しにもミスが目立った。良くない時間帯に守備陣の奮闘で失点を許さなかったことが再び流れを引き寄せ勝ち越しゴールを得るに至ったとも言えるが。

■気になった選手
武田
オーバーラップする選手に素直に縦に出す。ワンツーで素直にリターンする。プレーがシンプルで素直。
武藤&明本
武藤と明本の関係が抜群。相手CBを武藤に食いつかせて明本が空いたスペースに飛び込む動きで再三鹿島ゴールを脅かしPK獲得もこの動きから生まれた。2人とも最高だったがフル出場した分、明本がマンオブザマッチ
柴戸
4-1-4-1のアンカーという大役を任され見事その役目を果たしたのでは。守備だけでなく先制シーンでは明本の右をしっかり並走していたことも忘れてはならない。
小泉
今日も中盤で縦に逆サイドに自在にボールを散らしていた。個人的には何度もボールを奪う守備対応のほうが印象に残った。


2021年4月3日土曜日

2021 J1リーグ 第6節 川崎フロンターレ戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは阿部が宇賀神に、明本が敦樹に代わったのみ。川崎も三笘と家長のFW2人が小林と長谷川に代わったのみ。

■ボール保持
この日のポゼッションは前半後半ともに高め。右からボールを前進させようとすると宇賀神がいい位置に浮いていてそこから前線へ展開することが多々あった。対照的に逆サイドの山中はポジショニングが悪いせいか山根の警戒が高いせいか度々山中へのボールをカットされた。ただその山中へのボールの出し手は概ね小泉だったので予見できない小泉も同罪。相変わらずアタッキングサードまでボールを運んでからは何も出来ずシュートすら打てていないことが気になる。

■ボール非保持
サポーターの間で概ね好評な前半は前からのプレスも上手くハマり自陣に引いて構えた際も集中力高く守れていた。問題はやはり後半でCBとSB間のチャンネルを使われて易々失点した3失点目が一番致命的に思われる。何度見てもシュートこそ上手かったものの相手は特別なことを何もしていない。

■攻→守
序盤に敦樹のいい守備が目立つ。いい位置にいて相手のミドルパスをひっかけたり、飛び出してかわされた岩波の尻拭いで全開スプリントでボール奪ったり。ただマリノス戦での課題として浮き彫りになったネガトラ対応の弱さがそのまま残っていることが再確認されてしまった。連戦続きで修正する時間もなく当然と言えば当然だが。

■守→攻
相手のボールを奪うシーンこそ前半に何度も見られたもののそこからのカウンターはほぼ不発。何か起きそうに見えたのは7分に相手を自陣へ引きつけて槙野から小泉へのフィードが通った疑似カウンターのシーンくらい。

■失点
カウンターでの失点が3本とセット守備での失点が2本。

―まとめ―

■ポジティブ
前半に守備面で相手に自由に攻めさせなかったこと。

■課題
やはり依然としてアタッキングサードでの前線の振る舞いに改善の兆しが見られないこと。ポゼッションも上回り比較的試合を優勢に進めていたとされる前半でさえレッズのシュート数はたったの2本。川崎は5本。今季ここまでの試合を振り返るとシュート数が相手を上回ったのは開幕FC東京戦のみであとは勝った試合も負けた試合も引き分けた試合も全て相手のシュート数が多い。川崎のゴール前での振る舞いと比べるとレッズの選手にはまだ迷いがあるかの如く一瞬の躊躇いが見られる。見てから、考えてから、次の行動を決定しているのでは。そこが整理されオートマチックに動けるだけでももう少しシュート数が増えるのではないかと。守備においても相手は迷いが無く即パス即クロス即動き出すことができているから何でもないようなプレーに見えてあっさり失点してしまうのでは。シュート数が全てではないがシュートが打てなければゴールも生まれない。改善のための模索の跡は見られるしようやく開幕からの7連戦がこの試合で終わるので期待している。

■気になった選手
杉本
攻撃において長いボールを何度もつなげ、守備においても長い距離を走って他の選手の空けた穴をカバーした。
山中
11分の杉本がボレーを合わせたクロスを上げたあのシーンと7分に汰木がアーリークロスを上げる前にインナーラップして相手を2人引きつけたシーン以外何もできなかった。
伊藤敦樹
ネガトラにおいていい守備が目立ち何度も相手のボールを奪った。
金子
敦樹同様中盤での守備に加え後方からのビルドアップでも落ち着いて相手のプレスをかわすシーンが見られた。


2021年3月21日日曜日

2021 J1リーグ 第5節 北海道コンサドーレ札幌戦

■スタメン
レッズは前節から中2日、札幌は前節ガンバとのホームゲームが中止になったため中6日の日程。菅野が中野に、高嶺が駒井に代わったのみであとは前節広島戦と同じメンバーの札幌。一方レッズは宇賀神がベンチ外、敦樹がベンチスタートで金子大毅がレッズ加入後初スタメンに。

■ボール保持
レッズのボール保持はそれまでのつなぐビルドアップではなくひたすら前線へのロングフィード一択。宇賀神、敦樹がいないこと。相手が札幌であること。どちらもこの手を選択した理由ではなかったように思える。完全な憶測でしかないがこの試合の戦い方は前節マリノスを相手にしてこそ活きる手段のはず。だが真っ向勝負を選び見事に玉砕してしまった。次の再戦は半年以上先。せめて同じ試合展開に再び巡り合った時のためにも復習の場としてこの日の試合を選んだのでは。滅茶苦茶なことを言っていると自分でも思うが「何故こうしたか」の答えに辿り着けなかったが故の憶測に過ぎないのでそれ以上考えることはやめた。

札幌の守備は今では「オールコートマンツーマン」と呼ばれているらしい。誰が誰にマークにつくかはっきりするので選手が迷わないのは勿論メリットだが一人かわされた時にはかなりのリスクが伴うとか、人に食いつくのでスペースを作られやすいとか素人目にはデメリットのほうが大きいように思える。だがそのやり方で昨季12連勝中で絶好調の川崎に0-2で勝ち連勝をストップして見せたのだから素人が想像するほどの単純なマンツーマンではないはず。

レッズのロングフィードのターゲットは大体杉本。相手の最終ラインで待ち構えるのではなく必ず少し下がってハーフレーンで受けようとしていた。ただエアバトルの勝率は良くなかった。

■ボール非保持
レッズのボール非保持はボールが敵陣深い位置にある場合は前からプレスに行きミドルサードまで運ばれたら潔く引く。札幌はこのプレスに手を焼いていたようには見えないがレッズ同様前線へのロングフィードを選択。山中の裏のスペースへルーカスを走らせるボールが前半に3回。ビルドアップで汰木を食いつかせてその裏のスペースを取られるシーンも複数回あり。前半レッズの左サイドを集中的に狙ってきたかと思えば後半は一転、菅に阿部との1on1を挑ませたり駒井に楔を入れてエリア内への危険なボールを入れさせたりレッズの右サイドを脅かした。

■攻→守
ロングフィードを多用したレッズのおかげで中盤でトランジションが多発。ロングフィードのターゲットになった杉本のエアバトル勝率があまり良くなかったためセカンドボールは札幌に拾われる回数も多かったがファーストディフェンスがしっかりプレスに行けていたためそこからポンポンパスを繋がれて一気にシュートといったシーンは見られなかった。つまりレッズのこの戦い方はチーム内でしっかり共有され練習された形だった。

■守→攻
札幌の小泉への警戒が異常に高く一度ボールを戻させるプレスをかけたり、タックルでボールを奪ってショートカウンターを仕掛けるシーンなどが見られこの日のレッズのカウンターはほぼ不発。

―まとめ―

■ポジティブ
前節同様守備をセットした状態からゴールを奪われなかったこと。山のように蹴らせたCKからも最後まで失点しなかったのでやはり今のレッズのセット守備は堅守と呼んで差し支えない水準の強度と言えそう。それと汰木と代わって入った大久保がアピールに成功したこと。主に攻撃面で持ち味が光った。

■課題
結果的に無失点に抑えたとは言え相手の攻撃を許容するラインは越えられていたように思われる。単純なシュート数を見ても、決定機と言える危ういシーンを作られたことからももう少し相手の攻撃を制限したい。「それでも何故か守り切れている」は選手には自信になるかもしれないが監督には問題意識を持って微修正していって欲しい。また前節の3失点目同様リスタートで気を抜きあっさりとエリア内でシュートを許すシーン(42分)も見られまだ反省が足りないように見られる。

■気になった選手
杉本
思うように攻められないからかなりフラストレーションを溜めていたのか知らないが36分に手に持ったボールを叩きつけていた行為は最低。主審によっては警告も有り得る。単純なミスも多発。猛省すべき。ワーストプレーヤー
小泉
元々「何故その狭いスペースで受けて前を向けるのか?」と不思議で仕方ないくらい収まるしロストしなかった小泉がこの日は危険な位置でボールを奪われるシーンが複数発生。やはり周りの適切なフォローなくして簡単に為せる業ではないように思われる。
槙野
危険な位置にボールが入ると相手の選手の背後から足を出す、カットする、クリアするといった集中力高い守備で相手のチャンスを摘み取った。
西川
ひたすら長いボールを蹴って蹴って蹴りまくった。槙野も岩波も蹴ろうとはせず必ず西川に戻して蹴らせることが徹底されていた。相手の決定機を止めるファインセーブも2度見せた。


2021年3月17日水曜日

2021 J1リーグ 第4節 横浜Fマリノス戦

■スタメン
レッズは前節からの変更一切なし。マリノスは両SBとボランチの3人を前節から入れ替え。高野がティーラトンに、小池が松原に、渡辺が岩田に。第2節の広島戦とは全く同じスカッド。手持ちの選手名鑑に載っているポステコグルー監督のコメントには「連戦でも戦える選手を作り、固定ではないが、ほぼほぼ変えない形で戦っていくほうがいいと考えている」とあるので前節の入れ替えもこの日のメンバーも相手を見て決めたメンバーというわけではなさそう。

■ボール保持
3失点もしたためマリノスの攻撃、ボール保持に目が行きがちだがこの日の試合を見ていて気になったのはむしろマリノスの守備。カメラが寄りすぎで前の選手のポジションがどうなってるかが全然わからないが、とにかくレッズの後ろの選手にボールが入った時に全然前にボールを蹴れない、もしくは躊躇してバックパスするシーンがこの日は何度も見られた。おそらくパスコースを切られていたか受け手がマークされていたのだろうがGKを使って+1を作っている状況でも出せなかったので相手のプレスが上手いかこちらのポジショニングがよほど悪かったか。2失点目の扇原の敦樹へのプレスでボールを奪うシーンはガッツリカメラに収まってるので相手のいい守備が分かり易いシーンではあるが。

気になったのはこちらのビルドアップでロングボールをあまり蹴らなかったこと。相手が前から前からひたすらプレスをかけ続けていたのはわかっていたはずだが一番単純なプレス回避策になるロングボールが少なかった。相手のハメて奪い切ろうとするプレスで蹴ろうにも前を向かせてもらえなかったとか、十分に時間があっても躊躇してバックパスしてしまった理由とおそらく直結しているものと思われる。

■ボール非保持
後ろからの丁寧なビルドアップで綺麗に崩されての失点は無く3失点ともカウンターによるものなので、セットした守備は危ういシーンも多少あったものの致命的なミスは無かったという認識。

■攻→守
この日一番悪かったのはこのネガトラの部分。レッズはボール保持時に宇賀神と山中の両SBがやたらと高い位置をとっていた。最初の失点の杉本を追い越す山中のインナーラップにしても、再三明本と入れ替わって前線に顔を出していた宇賀神にしても、ボランチの立ち位置にしても、この日のレッズは前への意識だけが高くボールを奪われた際にまるっとそのリスクを負わされた。そのリスク管理に関してはいつもなら阿部と敦樹のボランチがこなすはずだが前半だけで交代させられてしまったことからもネガトラでいつもの効果的な守備を見せることはできなかった。もっとも交代で入った選手も抑えきれなかったことからもマリノス攻撃陣の剥がし方、カウンターの設計が一枚上手だっただけかもしれないが。

■守→攻
こちらのカウンターより相手のネガトラ対応のほうが光った。

■失点
失点は全てカウンターから。

―まとめ―

■ポジティブ
セット守備ではゴールを割らせなかったこと。しっかり帰陣して構えて相手の攻撃を受ければ受け切れるだけの守備は見せられたこと。使い減りする選手、しない選手の見極めができたこと。というより疲れればミスするのは当たり前なので、ちょっとやそっとじゃ疲れないしミスも少ない選手が分かったことが収穫か。

■課題
最早疑いようもなく疲れている。ボール保持時の些細なミスの多さ、切り替えの遅さ、帰陣の遅さ。肉体的な疲労は集中力、判断力の低下も招く。疲れているなら休ませればいい。ところが選手を交代させる度に攻撃が停滞していったようにベンチメンバーでは今のレッズがやりたいサッカーを実現できない。つまり真の問題点は主力の代わりがいないこと、選手層の薄さにある。今季に入って前半よりも後半の内容のほうが改善したと言える試合はルヴァンカップ湘南戦で主力組が出た後半戦くらいなことからもそれは明白。次々節が終われば開幕からの7連戦が終わりようやく中5日のインターバルになる。サブ組の成長は主力の疲労回復以上の急務になりそう。

■気になった選手
小泉
今のレッズのボール保持を支えているのは小泉。開幕戦でそれは理解したつもりでいたがこの日はさらに強く認識させられるほどビルドアップで頼り切りになった。特に後半。
汰木
ビルドアップの要が小泉ならこの日敵陣で最も相手の脅威になるプレーを披露できたのは汰木。
明本
田中との交代が多くスタメンの中で最も出場時間の短い明本が序盤からミスを連発。あの出来で90分使われたのは単純な駒不足。この日のワーストプレーヤー
山中
無謀なシュート、無謀なクロス、無謀なインナーラップ。顔には出さないものの入れ込み過ぎだった?古巣相手だからこっちがそういう目で見てしまっただけだろうか。
伊藤敦樹
ミスを連発。プロデビューしてたかだか4試合出ただけでおかしな言い方だがらしくないミスが多かった。前半一杯で交代も納得の采配。
宇賀神
最初の失点シーン然り、51分のフリーで前田にシュートを打たれたシーン然り、宇賀神にだけ前田が透明になって見えなくなる術をかけられたのかと疑うほど目の前の前田についていく素振りを見せない宇賀神が謎。


2021年3月14日日曜日

2021 J1リーグ 第3節 横浜FC戦

■スタメン
レッズは前節からの変更は田中が明本に代わったのみ。開幕戦と全く同じスタメン。ベンチには関根と興梠が復帰。前節と比べてベンチ外になったのは武藤と大久保。一方の横浜FCは前節と同じ選手は小川と松尾のみでそれ以外は入れ替えの大幅なターンオーバー。

■ボール非保持
横浜FCは中村が下りて2CBと3人でビルドアップ開始。これまでレッズは守備時の4-4-2では杉本と小泉の2トップで相手CBへプレスをかけていたがこの日は小泉ではなく明本との2トップ。小泉より田中より明本のほうがプレスのスイッチはかかりやすいように見えた。バッチリハメ切ったとは言えないものの相手に苦し紛れのロングボールを蹴らせるプレスは成功していたように見える。

後半になると横浜FCはやり方を変えてくる。レッズの4-4ブロックの外側の、前の列と後ろの列の間あたりにSBを立たせる。最終ラインからのボールを大体フリーで収められるのでレッズはSBが出て対応。そこからシンプルにクロスを放り込むパターン。FWが下りて中で受けて外に展開するパターン、SBからSHへ外→外のパターンと複数のパターンを織り交ぜアタッキングサードまでの前進は前半よりもスムーズに出来ていた。後半上手く回り出した理由はおそらく後半頭から最終ラインに交代で入った選手、特に手塚のフィードの精度が高かったため。手塚はフィードだけでなくチャンスには積極的に前に出て57分にはシュートまで打っていた。

■ボール保持
ここまでリーグ戦全て同じDFラインのメンバーではあるもののこの日は左CBが岩波、右CBが槙野でいつもと逆。前節鳥栖戦などはビルドアップに関してその大半が岩波から開始していて槙野は横パスかバックパスとセーフティなプレーに終始したがこの日は槙野がビルドアップで、時にSBへ、時に小泉か敦樹の中盤へ、時にギリギリまで持ち運んでフィードと、積極的にビルドアップに関与していた。特に注目は相手がかなり深い位置までプレスをかけてくるためそれを利用して相手の陣形を縦に広げ前線のプレス部隊と最終ラインとの間に広大なスペースを作りそこを使って前進していたこと。それが見事に表現できたのが9分の岩波から山中へのパスだった。(そこから詰まって戻していたが)

■守→攻
後半は前半に輪をかけて相手の中盤がスカスカになり最終ラインから中盤にボールが入ると一気にカウンターチャンスになるシーンが複数回発生。相手はおそらく前からプレスをかけてボールを奪おうという算段だったと思われるが不発に終わったどころかかえってピンチを招いていた。

■攻→守
前半は相手にボールを握らせネガトラはあまり発生しない展開に。対照的に後半は特に金子が入ってからは金子がボールを奪う場面が確認される。「当初想定された理想的な選手の活かし方」をようやく見れた。

■得点
得点はどちらもPK。最初のPKは右大外の明本から右エリア角を縦に突破しようとした宇賀神を中村が倒しVARによってPK判定に。2点目のPKはカウンターから。相手のFKのロングボールを最終ラインから岩波が跳ね返したボールが前を向いた明本に収まると汰木へつないで一気にスピードアップ。最後はエリア内で中塩のタックルで汰木を倒しPK。

―まとめ―

■ポジティブ
またもこれまでとは違うビルドアップのパターンを見せたこと。しかもそれが実戦で通用したこと。途中交代で入った選手がしっかりとゲームに絡んで他の選手との違いを見せたこと。金子は何度もボールを奪ったし、武田は才能の片鱗をうかがわせるプレーを披露したし、興梠に至っては怪我明けでたったの8分の出場にもかかわらず未遂とはいえ決定機に絡むプレーを見せたのだから期待せずにはいられない。

■課題
前節同様、再現性のあるカウンターを繰り出せたうえ決定機を作ることにも成功したにもかかわらず結局最後まで流れの中からゴールを奪えなかったこと。それとオフサイドにかかりすぎでは。ボールを出すタイミングと飛び出すタイミングの息を合わせるだけのはずなのでやはりまだ時間が必要か。しかし限られた時間の中で結果を出せないと怪我から復帰した選手に席を奪われてしまうこともある。

■気になった選手
伊藤敦樹
ここまでリーグ戦3試合270分フル出場し最終ライン、中盤、そして前線にも顔を出し未遂に終わったとはいえプロ初ゴールになるはずだったあのシュート。誰より攻守に欠かせない存在になるとは開幕前は予想していなかった。マンオブザマッチ
槙野
在籍10年目にしてまたも新しいことにチャレンジしそれが様になっているから見事。何故これを今まで見せる機会が無かったのか不思議にさえ思うほど。
小泉
前節は殆ど見れなかった前を向いて縦に出すボールがこの日はまた見れて安心。ちょっとやそっとのプレスでは簡単にロストしないキープ力があることにも気付いた。
田中
明本に代わって後半頭から出ていたが、ビルドアップ時に下りてくる動きに疑問。空けたスペースを誰かが埋める動きをするとかもっと効果的にできないのは連携不足ということなのかどうか。


2021年3月10日水曜日

2021 J1リーグ 第2節 サガン鳥栖戦

■スタメン
レッズは前節からの変更は明本が田中に代わったのみ。一方の鳥栖も酒井が小屋松に代わったのみ。

■ボール非保持
鳥栖のビルドアップは2CBから丁寧につないで開始。左右のSBをタッチラインギリギリに立たせ相手のSHの背後をとる。鳥栖のSHは中に入って相手のSH、ボランチ、SBの中間に立つ。そうすると相手のSHは大外を警戒してボランチとの距離が開く。4分にCBファンソッコ→CF山下レイオフ→SH樋口からCF林へスルーパス、5分にファンソッコ→樋口、30秒後にファンソッコ→SB飯野が縦に抜け出しクロスと右からのビルドアップはかなりスムーズだった。とにかく鳥栖はピッチを横に広く使ってレッズの守備網を間延びさせようとしそれに成功していた。

それに対するレッズの守備は相手のビルドアップを前節のように絡めとることができなかった。理由は複数。まず開始4分までは前からプレスをかけていたが4分を過ぎるとプレスをかけなくなった。この時点で相手CBが自由にボールを出せていたことが一つ。次に鳥栖は一度左から展開するように見せかけ素早く右CBに戻しやり直す、この時のレッズのスライドが間に合っていないこと。最後に相手のSH、特に樋口の立ち位置が抜群に上手いこと。

これらの理由から鳥栖は前半からボールを握りゲームの流れを支配し続けた。

■ボール保持
後方から丁寧につなぐビルドアップは殆ど成立しなかった。主に岩波のミドル及びロングボールが前線に通ればそこを起点に仕掛けるシーンもあったもののシュートどころかゴール前に迫るシーンすら殆どお目にかかれず。鳥栖は前線から激しくプレスをかけてくるため槙野と岩波は時間とスペースを十分に与えてもらえず苦し紛れのロングフィードが多かった。思えば前節開幕戦も守→攻のポジトラでチャンスメイクしたシーンばかりで後方からのつなぎで最終的にシュートまで至ることができたシーンは無かったのでは。前半はとにかく田中が周りとまるで合わず仕掛けているわけでもないのにボールロストが多く目立った。

■攻→守
前からプレスに行こうとしたのは開始4分まで。それ以降は前節から打って変わって撤退守備。ドン引きのブロック形成ではなくラインは高くコンパクトに。リカルド監督が何故この策を選んだのかがわからなかったためひょっとすると田中を下げて明本を投入した後半勝負のつもりだったのかと思い後半開始早々のプレスを見た瞬間は期待したが結局最後まで続かず失点する62分まででそれ以降はまたプレスをやめて前半に逆戻りしてしまった。

■守→攻
14分に杉本との連携で抜け出す汰木、17分に敦樹のスルーパスで抜け出す汰木、19分に山中の超絶コントロール縦パスに抜け出す汰木。この日はカウンターで光る汰木の姿が再三見られた。ただ3度とも結局ゴールどころかシュートすら打てていないことは重く受け止めるべき。

44分に山中からカウンターを開始し小泉が田中へスルーパスを出すもパクイルギュの飛び出しでキャッチされてしまったシーンはルヴァンカップ湘南戦の絶好のリベンジの機会だと思っただけに惜しかった。

■失点
失点はどちらもセット守備から。最初の失点は小屋松と交代で入ったばかりの本田のエリア内への単独突破を容易く許しシュートまで打たれた。2失点目は相手のペナ脇突破を山中が体を張って阻止して残したボールを目の前の槙野がみすみす相手に献上し悠々とクロスを上げさせ中央で山下がフリーで合わせ2点目。

―まとめ―

■ポジティブ
再現性を持って3度もカウンターで相手ゴールに迫れたこと。開幕戦とは違う姿、違う戦い方を見せようとした姿勢。未来を見据えより多くの引き出しを作ろうとしたこと。でも今は一つの戦い方を突き詰めるほうが先かもしれない。

■課題
コンディションや各々のスキルの問題以前に意思疎通やイメージの共有がまだまだできていないシーンが見られる。守備においては「俺が奪いに行くからお前はステイ」とか。攻撃においては「俺がニアに入るからお前はファー」といったシンプルなイメージの共有が上手くいっていない。守備に関しては混乱させるプレーを相手がしてくることもあるから仕方ない面もあるが、攻撃に関しては武藤と興梠のような阿吽の呼吸の関係を築くにはまだ時間が必要ということか。ビルドアップに関しても前半田中達也が全然周りと合っていなかったことも、2-0という結果からも、交代で入った相手の選手の見事な活躍からも、全ての事実が今のレッズの完成度の低さを突き付けている。特効薬は控えの選手の突き上げか、負傷中の選手の復帰といったところか。

■気になった選手
汰木
シュートこそ打てなかったもののカウンターで見せるテクニックとスプリントはビルドアップが未完成な今のレッズにとって欠かせない存在であることを証明した。マンオブザマッチ
岩波
ビルドアップでは頼りっぱなしになった岩波。守備では体を張った殊勲の負傷。


2021年3月2日火曜日

2021 J1リーグ 第1節 FC東京戦

■ボール保持
キャンプ期間中の札幌とのトレーニングマッチでもビルドアップのボールを奪われて失点という報告があったことからも戦前の不安はやはりこのビルドアップ。どんな状況でもつなぐことに固執して前からのプレスにハメられ失点するようなサッカーを見ていると素人としてはどうしても「さっさとボール蹴っ飛ばせ!」と思ってしまう。ところがそんな素人の不安をよそにリカルドのサッカーはずっと柔軟だった。後ろからのつなぐビルドアップに固執することもなく長いボールも併用していた。むしろ長いボールのほうが多かったかも。

今季からリカルドのサッカーを見るに当たって自分なりにポジショナルなプレーとは何かを調べてみたところ、一番しっくりきた説明が「中間ポジションをとる」ということ。マークを曖昧にして相手に2択を迫ることが主な目的のようだが前を向く時間が作れることも大きなメリットのように感じた。幻の先制点になったスルーパスを出した瞬間の小泉のポジションはまさにそれを体現していた。とにかく昨季のレッズはボールを受けた時点で既に敵を背負った状態で選手が前を向けずにバックパスするだけに終わるシーンばかり見続けていたせいでこのメリットを強く感じた。

■攻→守
新生レッズのビルドアップをじっくり見てみたかったものの試合序盤は明確に後ろから開始するシーンはあまりなく中盤で奪った奪われたのトランジションが多発。ただ単純なポゼッションの数値を見てもこの中盤の攻防を制したのはレッズ。即時奪回を掲げるその言葉通りの素早い切り替えからのプレッシング。特に目立っていたのが明本の守備。右のWGのはずが左のハーフレーンでプレスバックで奪ったりエリア内まで戻って相手のクロスをそらしたりその運動量もプレスの強度も90分変わることなく最後まで走り続けた。明本だけに限らずチーム全体にネガトラ時の猛プレスは徹底されていた。東京はこの猛プレスに最後まで手を焼きなかなか前を向かせてもらえずアドリブ的なワンタッチプレーが続きボールロストしていた。

■守→攻
幻の先制点となったシーンもショートカウンターからで後ろからのビルドアップよりもポジトラからの素早い展開のほうがチャンスに繋がっているように思えた。40分に見せた宇賀神のカットからの一連のロングカウンターは実に気持ち良かった。個人的にはああいったシーンはもっと見たい。

■ボール非保持
東京は4-3-3で長いボールを多用し早めに前線の3人に預けようとする。とは言え前半だけで替えられてしまったことからもこの日のディエゴは絶不調。ロングボールはレッズのDFに跳ね返されるばかりで全然ディエゴにボールは入らず。本来の東京のビルドアップの姿はどんなだったかは今後の試合で復習できたらしていきたい。

―まとめ―

■ポジティブ
とにかく攻→守の切り替えの速さ、プレスの速さ、その強度。ボール非保持の守備も見たかったのに殆ど見られずその結果が相手の総シュート数5。うち枠内2に抑えるという昨季の体たらくからは考えられない変貌ぶり。東京を相手にトランジション合戦に勝ったというのも自信になるはず。

■課題
アタッキングサードまでボールを運んでからの最後の崩し。今のJ1において堅守の部類に入る東京を相手にする以上最後までゴールを割れないことも覚悟のうえだったものの開始5分であのプレーを見せられて見てるこっちに欲が出てしまったのも事実。後半の序盤に阿部、汰木、山中の3人が見せたアーリークロスは明確な狙いを持ったクロスではなく苦し紛れに見えて今のレッズの崩しのアイデアの無さを現していた。78分に山中のマイナスクロスから杉本が頭で合わせ決定機を作ったことからも時代はマイナスクロスです。状況にもよりますがアーリークロスはDFがゴールを背にして前向きに跳ね返せるので楽です。きちんと抉ってからマイナスで上げましょう。

■気になった選手
杉本
アバウトなボール、荒れたボール、雑なパス、どれも収める技術が向上。何より嬉しかったのはVARにより幻の先制点となったものの杉本のファーストシュートがちゃんと枠内に飛んでゴールに突き刺さったこと
明本
とにかく守備で献身性が光る。29分に見せた岩波縦パスからの裏抜けや37分に汰木のアーリークロスを頭で合わせに行ったシーン等攻撃面でも見せ場を作る。マンオブザマッチ
宇賀神
左サイドの山中・汰木のコンビと比べると明本とのコンビネーションは練度不足
小泉
ポジショニングが抜群でこれが初のJ1公式戦とは思えない落ち着きで自信を持って前を向いてプレーできていた。ずっと渇望していた選手
伊藤敦
中盤のボールハンターとして存分に力を発揮し、チャンスと見るやエリア内に飛び込みゴールを狙うシーンもあり
岩波
後半FKで宇宙開発、ファウルで同点に追いつかれるFKを献上する等、結果的に悪目立ちしてしまったもののビルドアップにも関与していたし序盤に山中への目の覚めるようなサイドチェンジは見事だった