2021年3月21日日曜日

2021 J1リーグ 第5節 北海道コンサドーレ札幌戦

■スタメン
レッズは前節から中2日、札幌は前節ガンバとのホームゲームが中止になったため中6日の日程。菅野が中野に、高嶺が駒井に代わったのみであとは前節広島戦と同じメンバーの札幌。一方レッズは宇賀神がベンチ外、敦樹がベンチスタートで金子大毅がレッズ加入後初スタメンに。

■ボール保持
レッズのボール保持はそれまでのつなぐビルドアップではなくひたすら前線へのロングフィード一択。宇賀神、敦樹がいないこと。相手が札幌であること。どちらもこの手を選択した理由ではなかったように思える。完全な憶測でしかないがこの試合の戦い方は前節マリノスを相手にしてこそ活きる手段のはず。だが真っ向勝負を選び見事に玉砕してしまった。次の再戦は半年以上先。せめて同じ試合展開に再び巡り合った時のためにも復習の場としてこの日の試合を選んだのでは。滅茶苦茶なことを言っていると自分でも思うが「何故こうしたか」の答えに辿り着けなかったが故の憶測に過ぎないのでそれ以上考えることはやめた。

札幌の守備は今では「オールコートマンツーマン」と呼ばれているらしい。誰が誰にマークにつくかはっきりするので選手が迷わないのは勿論メリットだが一人かわされた時にはかなりのリスクが伴うとか、人に食いつくのでスペースを作られやすいとか素人目にはデメリットのほうが大きいように思える。だがそのやり方で昨季12連勝中で絶好調の川崎に0-2で勝ち連勝をストップして見せたのだから素人が想像するほどの単純なマンツーマンではないはず。

レッズのロングフィードのターゲットは大体杉本。相手の最終ラインで待ち構えるのではなく必ず少し下がってハーフレーンで受けようとしていた。ただエアバトルの勝率は良くなかった。

■ボール非保持
レッズのボール非保持はボールが敵陣深い位置にある場合は前からプレスに行きミドルサードまで運ばれたら潔く引く。札幌はこのプレスに手を焼いていたようには見えないがレッズ同様前線へのロングフィードを選択。山中の裏のスペースへルーカスを走らせるボールが前半に3回。ビルドアップで汰木を食いつかせてその裏のスペースを取られるシーンも複数回あり。前半レッズの左サイドを集中的に狙ってきたかと思えば後半は一転、菅に阿部との1on1を挑ませたり駒井に楔を入れてエリア内への危険なボールを入れさせたりレッズの右サイドを脅かした。

■攻→守
ロングフィードを多用したレッズのおかげで中盤でトランジションが多発。ロングフィードのターゲットになった杉本のエアバトル勝率があまり良くなかったためセカンドボールは札幌に拾われる回数も多かったがファーストディフェンスがしっかりプレスに行けていたためそこからポンポンパスを繋がれて一気にシュートといったシーンは見られなかった。つまりレッズのこの戦い方はチーム内でしっかり共有され練習された形だった。

■守→攻
札幌の小泉への警戒が異常に高く一度ボールを戻させるプレスをかけたり、タックルでボールを奪ってショートカウンターを仕掛けるシーンなどが見られこの日のレッズのカウンターはほぼ不発。

―まとめ―

■ポジティブ
前節同様守備をセットした状態からゴールを奪われなかったこと。山のように蹴らせたCKからも最後まで失点しなかったのでやはり今のレッズのセット守備は堅守と呼んで差し支えない水準の強度と言えそう。それと汰木と代わって入った大久保がアピールに成功したこと。主に攻撃面で持ち味が光った。

■課題
結果的に無失点に抑えたとは言え相手の攻撃を許容するラインは越えられていたように思われる。単純なシュート数を見ても、決定機と言える危ういシーンを作られたことからももう少し相手の攻撃を制限したい。「それでも何故か守り切れている」は選手には自信になるかもしれないが監督には問題意識を持って微修正していって欲しい。また前節の3失点目同様リスタートで気を抜きあっさりとエリア内でシュートを許すシーン(42分)も見られまだ反省が足りないように見られる。

■気になった選手
杉本
思うように攻められないからかなりフラストレーションを溜めていたのか知らないが36分に手に持ったボールを叩きつけていた行為は最低。主審によっては警告も有り得る。単純なミスも多発。猛省すべき。ワーストプレーヤー
小泉
元々「何故その狭いスペースで受けて前を向けるのか?」と不思議で仕方ないくらい収まるしロストしなかった小泉がこの日は危険な位置でボールを奪われるシーンが複数発生。やはり周りの適切なフォローなくして簡単に為せる業ではないように思われる。
槙野
危険な位置にボールが入ると相手の選手の背後から足を出す、カットする、クリアするといった集中力高い守備で相手のチャンスを摘み取った。
西川
ひたすら長いボールを蹴って蹴って蹴りまくった。槙野も岩波も蹴ろうとはせず必ず西川に戻して蹴らせることが徹底されていた。相手の決定機を止めるファインセーブも2度見せた。


2021年3月17日水曜日

2021 J1リーグ 第4節 横浜Fマリノス戦

■スタメン
レッズは前節からの変更一切なし。マリノスは両SBとボランチの3人を前節から入れ替え。高野がティーラトンに、小池が松原に、渡辺が岩田に。第2節の広島戦とは全く同じスカッド。手持ちの選手名鑑に載っているポステコグルー監督のコメントには「連戦でも戦える選手を作り、固定ではないが、ほぼほぼ変えない形で戦っていくほうがいいと考えている」とあるので前節の入れ替えもこの日のメンバーも相手を見て決めたメンバーというわけではなさそう。

■ボール保持
3失点もしたためマリノスの攻撃、ボール保持に目が行きがちだがこの日の試合を見ていて気になったのはむしろマリノスの守備。カメラが寄りすぎで前の選手のポジションがどうなってるかが全然わからないが、とにかくレッズの後ろの選手にボールが入った時に全然前にボールを蹴れない、もしくは躊躇してバックパスするシーンがこの日は何度も見られた。おそらくパスコースを切られていたか受け手がマークされていたのだろうがGKを使って+1を作っている状況でも出せなかったので相手のプレスが上手いかこちらのポジショニングがよほど悪かったか。2失点目の扇原の敦樹へのプレスでボールを奪うシーンはガッツリカメラに収まってるので相手のいい守備が分かり易いシーンではあるが。

気になったのはこちらのビルドアップでロングボールをあまり蹴らなかったこと。相手が前から前からひたすらプレスをかけ続けていたのはわかっていたはずだが一番単純なプレス回避策になるロングボールが少なかった。相手のハメて奪い切ろうとするプレスで蹴ろうにも前を向かせてもらえなかったとか、十分に時間があっても躊躇してバックパスしてしまった理由とおそらく直結しているものと思われる。

■ボール非保持
後ろからの丁寧なビルドアップで綺麗に崩されての失点は無く3失点ともカウンターによるものなので、セットした守備は危ういシーンも多少あったものの致命的なミスは無かったという認識。

■攻→守
この日一番悪かったのはこのネガトラの部分。レッズはボール保持時に宇賀神と山中の両SBがやたらと高い位置をとっていた。最初の失点の杉本を追い越す山中のインナーラップにしても、再三明本と入れ替わって前線に顔を出していた宇賀神にしても、ボランチの立ち位置にしても、この日のレッズは前への意識だけが高くボールを奪われた際にまるっとそのリスクを負わされた。そのリスク管理に関してはいつもなら阿部と敦樹のボランチがこなすはずだが前半だけで交代させられてしまったことからもネガトラでいつもの効果的な守備を見せることはできなかった。もっとも交代で入った選手も抑えきれなかったことからもマリノス攻撃陣の剥がし方、カウンターの設計が一枚上手だっただけかもしれないが。

■守→攻
こちらのカウンターより相手のネガトラ対応のほうが光った。

■失点
失点は全てカウンターから。

―まとめ―

■ポジティブ
セット守備ではゴールを割らせなかったこと。しっかり帰陣して構えて相手の攻撃を受ければ受け切れるだけの守備は見せられたこと。使い減りする選手、しない選手の見極めができたこと。というより疲れればミスするのは当たり前なので、ちょっとやそっとじゃ疲れないしミスも少ない選手が分かったことが収穫か。

■課題
最早疑いようもなく疲れている。ボール保持時の些細なミスの多さ、切り替えの遅さ、帰陣の遅さ。肉体的な疲労は集中力、判断力の低下も招く。疲れているなら休ませればいい。ところが選手を交代させる度に攻撃が停滞していったようにベンチメンバーでは今のレッズがやりたいサッカーを実現できない。つまり真の問題点は主力の代わりがいないこと、選手層の薄さにある。今季に入って前半よりも後半の内容のほうが改善したと言える試合はルヴァンカップ湘南戦で主力組が出た後半戦くらいなことからもそれは明白。次々節が終われば開幕からの7連戦が終わりようやく中5日のインターバルになる。サブ組の成長は主力の疲労回復以上の急務になりそう。

■気になった選手
小泉
今のレッズのボール保持を支えているのは小泉。開幕戦でそれは理解したつもりでいたがこの日はさらに強く認識させられるほどビルドアップで頼り切りになった。特に後半。
汰木
ビルドアップの要が小泉ならこの日敵陣で最も相手の脅威になるプレーを披露できたのは汰木。
明本
田中との交代が多くスタメンの中で最も出場時間の短い明本が序盤からミスを連発。あの出来で90分使われたのは単純な駒不足。この日のワーストプレーヤー
山中
無謀なシュート、無謀なクロス、無謀なインナーラップ。顔には出さないものの入れ込み過ぎだった?古巣相手だからこっちがそういう目で見てしまっただけだろうか。
伊藤敦樹
ミスを連発。プロデビューしてたかだか4試合出ただけでおかしな言い方だがらしくないミスが多かった。前半一杯で交代も納得の采配。
宇賀神
最初の失点シーン然り、51分のフリーで前田にシュートを打たれたシーン然り、宇賀神にだけ前田が透明になって見えなくなる術をかけられたのかと疑うほど目の前の前田についていく素振りを見せない宇賀神が謎。


2021年3月14日日曜日

2021 J1リーグ 第3節 横浜FC戦

■スタメン
レッズは前節からの変更は田中が明本に代わったのみ。開幕戦と全く同じスタメン。ベンチには関根と興梠が復帰。前節と比べてベンチ外になったのは武藤と大久保。一方の横浜FCは前節と同じ選手は小川と松尾のみでそれ以外は入れ替えの大幅なターンオーバー。

■ボール非保持
横浜FCは中村が下りて2CBと3人でビルドアップ開始。これまでレッズは守備時の4-4-2では杉本と小泉の2トップで相手CBへプレスをかけていたがこの日は小泉ではなく明本との2トップ。小泉より田中より明本のほうがプレスのスイッチはかかりやすいように見えた。バッチリハメ切ったとは言えないものの相手に苦し紛れのロングボールを蹴らせるプレスは成功していたように見える。

後半になると横浜FCはやり方を変えてくる。レッズの4-4ブロックの外側の、前の列と後ろの列の間あたりにSBを立たせる。最終ラインからのボールを大体フリーで収められるのでレッズはSBが出て対応。そこからシンプルにクロスを放り込むパターン。FWが下りて中で受けて外に展開するパターン、SBからSHへ外→外のパターンと複数のパターンを織り交ぜアタッキングサードまでの前進は前半よりもスムーズに出来ていた。後半上手く回り出した理由はおそらく後半頭から最終ラインに交代で入った選手、特に手塚のフィードの精度が高かったため。手塚はフィードだけでなくチャンスには積極的に前に出て57分にはシュートまで打っていた。

■ボール保持
ここまでリーグ戦全て同じDFラインのメンバーではあるもののこの日は左CBが岩波、右CBが槙野でいつもと逆。前節鳥栖戦などはビルドアップに関してその大半が岩波から開始していて槙野は横パスかバックパスとセーフティなプレーに終始したがこの日は槙野がビルドアップで、時にSBへ、時に小泉か敦樹の中盤へ、時にギリギリまで持ち運んでフィードと、積極的にビルドアップに関与していた。特に注目は相手がかなり深い位置までプレスをかけてくるためそれを利用して相手の陣形を縦に広げ前線のプレス部隊と最終ラインとの間に広大なスペースを作りそこを使って前進していたこと。それが見事に表現できたのが9分の岩波から山中へのパスだった。(そこから詰まって戻していたが)

■守→攻
後半は前半に輪をかけて相手の中盤がスカスカになり最終ラインから中盤にボールが入ると一気にカウンターチャンスになるシーンが複数回発生。相手はおそらく前からプレスをかけてボールを奪おうという算段だったと思われるが不発に終わったどころかかえってピンチを招いていた。

■攻→守
前半は相手にボールを握らせネガトラはあまり発生しない展開に。対照的に後半は特に金子が入ってからは金子がボールを奪う場面が確認される。「当初想定された理想的な選手の活かし方」をようやく見れた。

■得点
得点はどちらもPK。最初のPKは右大外の明本から右エリア角を縦に突破しようとした宇賀神を中村が倒しVARによってPK判定に。2点目のPKはカウンターから。相手のFKのロングボールを最終ラインから岩波が跳ね返したボールが前を向いた明本に収まると汰木へつないで一気にスピードアップ。最後はエリア内で中塩のタックルで汰木を倒しPK。

―まとめ―

■ポジティブ
またもこれまでとは違うビルドアップのパターンを見せたこと。しかもそれが実戦で通用したこと。途中交代で入った選手がしっかりとゲームに絡んで他の選手との違いを見せたこと。金子は何度もボールを奪ったし、武田は才能の片鱗をうかがわせるプレーを披露したし、興梠に至っては怪我明けでたったの8分の出場にもかかわらず未遂とはいえ決定機に絡むプレーを見せたのだから期待せずにはいられない。

■課題
前節同様、再現性のあるカウンターを繰り出せたうえ決定機を作ることにも成功したにもかかわらず結局最後まで流れの中からゴールを奪えなかったこと。それとオフサイドにかかりすぎでは。ボールを出すタイミングと飛び出すタイミングの息を合わせるだけのはずなのでやはりまだ時間が必要か。しかし限られた時間の中で結果を出せないと怪我から復帰した選手に席を奪われてしまうこともある。

■気になった選手
伊藤敦樹
ここまでリーグ戦3試合270分フル出場し最終ライン、中盤、そして前線にも顔を出し未遂に終わったとはいえプロ初ゴールになるはずだったあのシュート。誰より攻守に欠かせない存在になるとは開幕前は予想していなかった。マンオブザマッチ
槙野
在籍10年目にしてまたも新しいことにチャレンジしそれが様になっているから見事。何故これを今まで見せる機会が無かったのか不思議にさえ思うほど。
小泉
前節は殆ど見れなかった前を向いて縦に出すボールがこの日はまた見れて安心。ちょっとやそっとのプレスでは簡単にロストしないキープ力があることにも気付いた。
田中
明本に代わって後半頭から出ていたが、ビルドアップ時に下りてくる動きに疑問。空けたスペースを誰かが埋める動きをするとかもっと効果的にできないのは連携不足ということなのかどうか。


2021年3月10日水曜日

2021 J1リーグ 第2節 サガン鳥栖戦

■スタメン
レッズは前節からの変更は明本が田中に代わったのみ。一方の鳥栖も酒井が小屋松に代わったのみ。

■ボール非保持
鳥栖のビルドアップは2CBから丁寧につないで開始。左右のSBをタッチラインギリギリに立たせ相手のSHの背後をとる。鳥栖のSHは中に入って相手のSH、ボランチ、SBの中間に立つ。そうすると相手のSHは大外を警戒してボランチとの距離が開く。4分にCBファンソッコ→CF山下レイオフ→SH樋口からCF林へスルーパス、5分にファンソッコ→樋口、30秒後にファンソッコ→SB飯野が縦に抜け出しクロスと右からのビルドアップはかなりスムーズだった。とにかく鳥栖はピッチを横に広く使ってレッズの守備網を間延びさせようとしそれに成功していた。

それに対するレッズの守備は相手のビルドアップを前節のように絡めとることができなかった。理由は複数。まず開始4分までは前からプレスをかけていたが4分を過ぎるとプレスをかけなくなった。この時点で相手CBが自由にボールを出せていたことが一つ。次に鳥栖は一度左から展開するように見せかけ素早く右CBに戻しやり直す、この時のレッズのスライドが間に合っていないこと。最後に相手のSH、特に樋口の立ち位置が抜群に上手いこと。

これらの理由から鳥栖は前半からボールを握りゲームの流れを支配し続けた。

■ボール保持
後方から丁寧につなぐビルドアップは殆ど成立しなかった。主に岩波のミドル及びロングボールが前線に通ればそこを起点に仕掛けるシーンもあったもののシュートどころかゴール前に迫るシーンすら殆どお目にかかれず。鳥栖は前線から激しくプレスをかけてくるため槙野と岩波は時間とスペースを十分に与えてもらえず苦し紛れのロングフィードが多かった。思えば前節開幕戦も守→攻のポジトラでチャンスメイクしたシーンばかりで後方からのつなぎで最終的にシュートまで至ることができたシーンは無かったのでは。前半はとにかく田中が周りとまるで合わず仕掛けているわけでもないのにボールロストが多く目立った。

■攻→守
前からプレスに行こうとしたのは開始4分まで。それ以降は前節から打って変わって撤退守備。ドン引きのブロック形成ではなくラインは高くコンパクトに。リカルド監督が何故この策を選んだのかがわからなかったためひょっとすると田中を下げて明本を投入した後半勝負のつもりだったのかと思い後半開始早々のプレスを見た瞬間は期待したが結局最後まで続かず失点する62分まででそれ以降はまたプレスをやめて前半に逆戻りしてしまった。

■守→攻
14分に杉本との連携で抜け出す汰木、17分に敦樹のスルーパスで抜け出す汰木、19分に山中の超絶コントロール縦パスに抜け出す汰木。この日はカウンターで光る汰木の姿が再三見られた。ただ3度とも結局ゴールどころかシュートすら打てていないことは重く受け止めるべき。

44分に山中からカウンターを開始し小泉が田中へスルーパスを出すもパクイルギュの飛び出しでキャッチされてしまったシーンはルヴァンカップ湘南戦の絶好のリベンジの機会だと思っただけに惜しかった。

■失点
失点はどちらもセット守備から。最初の失点は小屋松と交代で入ったばかりの本田のエリア内への単独突破を容易く許しシュートまで打たれた。2失点目は相手のペナ脇突破を山中が体を張って阻止して残したボールを目の前の槙野がみすみす相手に献上し悠々とクロスを上げさせ中央で山下がフリーで合わせ2点目。

―まとめ―

■ポジティブ
再現性を持って3度もカウンターで相手ゴールに迫れたこと。開幕戦とは違う姿、違う戦い方を見せようとした姿勢。未来を見据えより多くの引き出しを作ろうとしたこと。でも今は一つの戦い方を突き詰めるほうが先かもしれない。

■課題
コンディションや各々のスキルの問題以前に意思疎通やイメージの共有がまだまだできていないシーンが見られる。守備においては「俺が奪いに行くからお前はステイ」とか。攻撃においては「俺がニアに入るからお前はファー」といったシンプルなイメージの共有が上手くいっていない。守備に関しては混乱させるプレーを相手がしてくることもあるから仕方ない面もあるが、攻撃に関しては武藤と興梠のような阿吽の呼吸の関係を築くにはまだ時間が必要ということか。ビルドアップに関しても前半田中達也が全然周りと合っていなかったことも、2-0という結果からも、交代で入った相手の選手の見事な活躍からも、全ての事実が今のレッズの完成度の低さを突き付けている。特効薬は控えの選手の突き上げか、負傷中の選手の復帰といったところか。

■気になった選手
汰木
シュートこそ打てなかったもののカウンターで見せるテクニックとスプリントはビルドアップが未完成な今のレッズにとって欠かせない存在であることを証明した。マンオブザマッチ
岩波
ビルドアップでは頼りっぱなしになった岩波。守備では体を張った殊勲の負傷。


2021年3月2日火曜日

2021 J1リーグ 第1節 FC東京戦

■ボール保持
キャンプ期間中の札幌とのトレーニングマッチでもビルドアップのボールを奪われて失点という報告があったことからも戦前の不安はやはりこのビルドアップ。どんな状況でもつなぐことに固執して前からのプレスにハメられ失点するようなサッカーを見ていると素人としてはどうしても「さっさとボール蹴っ飛ばせ!」と思ってしまう。ところがそんな素人の不安をよそにリカルドのサッカーはずっと柔軟だった。後ろからのつなぐビルドアップに固執することもなく長いボールも併用していた。むしろ長いボールのほうが多かったかも。

今季からリカルドのサッカーを見るに当たって自分なりにポジショナルなプレーとは何かを調べてみたところ、一番しっくりきた説明が「中間ポジションをとる」ということ。マークを曖昧にして相手に2択を迫ることが主な目的のようだが前を向く時間が作れることも大きなメリットのように感じた。幻の先制点になったスルーパスを出した瞬間の小泉のポジションはまさにそれを体現していた。とにかく昨季のレッズはボールを受けた時点で既に敵を背負った状態で選手が前を向けずにバックパスするだけに終わるシーンばかり見続けていたせいでこのメリットを強く感じた。

■攻→守
新生レッズのビルドアップをじっくり見てみたかったものの試合序盤は明確に後ろから開始するシーンはあまりなく中盤で奪った奪われたのトランジションが多発。ただ単純なポゼッションの数値を見てもこの中盤の攻防を制したのはレッズ。即時奪回を掲げるその言葉通りの素早い切り替えからのプレッシング。特に目立っていたのが明本の守備。右のWGのはずが左のハーフレーンでプレスバックで奪ったりエリア内まで戻って相手のクロスをそらしたりその運動量もプレスの強度も90分変わることなく最後まで走り続けた。明本だけに限らずチーム全体にネガトラ時の猛プレスは徹底されていた。東京はこの猛プレスに最後まで手を焼きなかなか前を向かせてもらえずアドリブ的なワンタッチプレーが続きボールロストしていた。

■守→攻
幻の先制点となったシーンもショートカウンターからで後ろからのビルドアップよりもポジトラからの素早い展開のほうがチャンスに繋がっているように思えた。40分に見せた宇賀神のカットからの一連のロングカウンターは実に気持ち良かった。個人的にはああいったシーンはもっと見たい。

■ボール非保持
東京は4-3-3で長いボールを多用し早めに前線の3人に預けようとする。とは言え前半だけで替えられてしまったことからもこの日のディエゴは絶不調。ロングボールはレッズのDFに跳ね返されるばかりで全然ディエゴにボールは入らず。本来の東京のビルドアップの姿はどんなだったかは今後の試合で復習できたらしていきたい。

―まとめ―

■ポジティブ
とにかく攻→守の切り替えの速さ、プレスの速さ、その強度。ボール非保持の守備も見たかったのに殆ど見られずその結果が相手の総シュート数5。うち枠内2に抑えるという昨季の体たらくからは考えられない変貌ぶり。東京を相手にトランジション合戦に勝ったというのも自信になるはず。

■課題
アタッキングサードまでボールを運んでからの最後の崩し。今のJ1において堅守の部類に入る東京を相手にする以上最後までゴールを割れないことも覚悟のうえだったものの開始5分であのプレーを見せられて見てるこっちに欲が出てしまったのも事実。後半の序盤に阿部、汰木、山中の3人が見せたアーリークロスは明確な狙いを持ったクロスではなく苦し紛れに見えて今のレッズの崩しのアイデアの無さを現していた。78分に山中のマイナスクロスから杉本が頭で合わせ決定機を作ったことからも時代はマイナスクロスです。状況にもよりますがアーリークロスはDFがゴールを背にして前向きに跳ね返せるので楽です。きちんと抉ってからマイナスで上げましょう。

■気になった選手
杉本
アバウトなボール、荒れたボール、雑なパス、どれも収める技術が向上。何より嬉しかったのはVARにより幻の先制点となったものの杉本のファーストシュートがちゃんと枠内に飛んでゴールに突き刺さったこと
明本
とにかく守備で献身性が光る。29分に見せた岩波縦パスからの裏抜けや37分に汰木のアーリークロスを頭で合わせに行ったシーン等攻撃面でも見せ場を作る。マンオブザマッチ
宇賀神
左サイドの山中・汰木のコンビと比べると明本とのコンビネーションは練度不足
小泉
ポジショニングが抜群でこれが初のJ1公式戦とは思えない落ち着きで自信を持って前を向いてプレーできていた。ずっと渇望していた選手
伊藤敦
中盤のボールハンターとして存分に力を発揮し、チャンスと見るやエリア内に飛び込みゴールを狙うシーンもあり
岩波
後半FKで宇宙開発、ファウルで同点に追いつかれるFKを献上する等、結果的に悪目立ちしてしまったもののビルドアップにも関与していたし序盤に山中への目の覚めるようなサイドチェンジは見事だった