キャンプ期間中の札幌とのトレーニングマッチでもビルドアップのボールを奪われて失点という報告があったことからも戦前の不安はやはりこのビルドアップ。どんな状況でもつなぐことに固執して前からのプレスにハメられ失点するようなサッカーを見ていると素人としてはどうしても「さっさとボール蹴っ飛ばせ!」と思ってしまう。ところがそんな素人の不安をよそにリカルドのサッカーはずっと柔軟だった。後ろからのつなぐビルドアップに固執することもなく長いボールも併用していた。むしろ長いボールのほうが多かったかも。
今季からリカルドのサッカーを見るに当たって自分なりにポジショナルなプレーとは何かを調べてみたところ、一番しっくりきた説明が「中間ポジションをとる」ということ。マークを曖昧にして相手に2択を迫ることが主な目的のようだが前を向く時間が作れることも大きなメリットのように感じた。幻の先制点になったスルーパスを出した瞬間の小泉のポジションはまさにそれを体現していた。とにかく昨季のレッズはボールを受けた時点で既に敵を背負った状態で選手が前を向けずにバックパスするだけに終わるシーンばかり見続けていたせいでこのメリットを強く感じた。
■攻→守
新生レッズのビルドアップをじっくり見てみたかったものの試合序盤は明確に後ろから開始するシーンはあまりなく中盤で奪った奪われたのトランジションが多発。ただ単純なポゼッションの数値を見てもこの中盤の攻防を制したのはレッズ。即時奪回を掲げるその言葉通りの素早い切り替えからのプレッシング。特に目立っていたのが明本の守備。右のWGのはずが左のハーフレーンでプレスバックで奪ったりエリア内まで戻って相手のクロスをそらしたりその運動量もプレスの強度も90分変わることなく最後まで走り続けた。明本だけに限らずチーム全体にネガトラ時の猛プレスは徹底されていた。東京はこの猛プレスに最後まで手を焼きなかなか前を向かせてもらえずアドリブ的なワンタッチプレーが続きボールロストしていた。
■守→攻
幻の先制点となったシーンもショートカウンターからで後ろからのビルドアップよりもポジトラからの素早い展開のほうがチャンスに繋がっているように思えた。40分に見せた宇賀神のカットからの一連のロングカウンターは実に気持ち良かった。個人的にはああいったシーンはもっと見たい。
■ボール非保持
東京は4-3-3で長いボールを多用し早めに前線の3人に預けようとする。とは言え前半だけで替えられてしまったことからもこの日のディエゴは絶不調。ロングボールはレッズのDFに跳ね返されるばかりで全然ディエゴにボールは入らず。本来の東京のビルドアップの姿はどんなだったかは今後の試合で復習できたらしていきたい。
―まとめ―
■ポジティブ
とにかく攻→守の切り替えの速さ、プレスの速さ、その強度。ボール非保持の守備も見たかったのに殆ど見られずその結果が相手の総シュート数5。うち枠内2に抑えるという昨季の体たらくからは考えられない変貌ぶり。東京を相手にトランジション合戦に勝ったというのも自信になるはず。
■課題
アタッキングサードまでボールを運んでからの最後の崩し。今のJ1において堅守の部類に入る東京を相手にする以上最後までゴールを割れないことも覚悟のうえだったものの開始5分であのプレーを見せられて見てるこっちに欲が出てしまったのも事実。後半の序盤に阿部、汰木、山中の3人が見せたアーリークロスは明確な狙いを持ったクロスではなく苦し紛れに見えて今のレッズの崩しのアイデアの無さを現していた。78分に山中のマイナスクロスから杉本が頭で合わせ決定機を作ったことからも時代はマイナスクロスです。状況にもよりますがアーリークロスはDFがゴールを背にして前向きに跳ね返せるので楽です。きちんと抉ってからマイナスで上げましょう。
■気になった選手
- 杉本
- アバウトなボール、荒れたボール、雑なパス、どれも収める技術が向上。何より嬉しかったのはVARにより幻の先制点となったものの杉本のファーストシュートがちゃんと枠内に飛んでゴールに突き刺さったこと
- 明本
- とにかく守備で献身性が光る。29分に見せた岩波縦パスからの裏抜けや37分に汰木のアーリークロスを頭で合わせに行ったシーン等攻撃面でも見せ場を作る。マンオブザマッチ
- 宇賀神
- 左サイドの山中・汰木のコンビと比べると明本とのコンビネーションは練度不足
- 小泉
- ポジショニングが抜群でこれが初のJ1公式戦とは思えない落ち着きで自信を持って前を向いてプレーできていた。ずっと渇望していた選手
- 伊藤敦
- 中盤のボールハンターとして存分に力を発揮し、チャンスと見るやエリア内に飛び込みゴールを狙うシーンもあり
- 岩波
- 後半FKで宇宙開発、ファウルで同点に追いつかれるFKを献上する等、結果的に悪目立ちしてしまったもののビルドアップにも関与していたし序盤に山中への目の覚めるようなサイドチェンジは見事だった
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