2022年3月30日水曜日

2022 J1リーグ 第5節 ジュビロ磐田戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは岩波が犬飼に、明本がユンカーに変更。磐田は前節から契約上レッズとの試合に出られない杉本がジャーメインに変更したのみ。

■おおまかな流れ
レッズは開始6分でCKからの先制に成功したため一見再現性のない偶発的な先制に見えたかもしれないが、CKを得るに至った過程が決定機演出によるものなので必然の先制点と言っていい。この日レッズがビルドアップする上でのいつもと最大の違いは犬飼がスタメンで出たこと。開幕京都戦も犬飼は出たが隣はショルツではなく岩波だった。この日は真ん中に犬飼、右にショルツ、左に大畑の3人でビルドアップを開始する。酒井は大きく前に出てライン際に立つと割とフリーになって45秒に岩尾から酒井、5分に小泉から酒井とどちらも磐田DFラインの裏に抜け出してクロスを供給できている。いつもの酒井はここまで高い位置を取れないがこの日は酒井サイドの右にショルツが立ちショルツがボールを持って前に出れると酒井も高い位置を取れていた。さらにこの日はスタメンにユンカーがいたため先制する6分までの間に3度もユンカーを狙ったボールを供給できていた。

2点目は江坂のプレスで相手のビルドアップのミスを誘い最後はユンカーの個人技で追加点というもの。しかし2点目から僅か3分後に関根が危険な位置で鈴木を倒しFKを献上するとあっさり1点返されてしまう。レッズの守備は十分に人数は揃っていて抜かれて即失点となるような状況でも無かったように見えた。その後磐田にボールを握られる時間が続く。磐田のビルドアップのキーマンは松本。彼が常に幅を取る役目を担ってジャーメインに縦に出したり、遠藤とのコンビネーションから自身が裏に抜け出したりして繋ぐビルドアップでは常に松本からボールが出ていた。とは言え松本がいる左サイドはショルツと酒井がいるレッズの右サイド。決定機はおろかシュートも打たせない。ただレッズの不用意なロストからのカウンターのほうが磐田はゴール前に迫れていた。レッズはボールを失った直後のプレスが上手くハマらなかった。

21分にユンカー、31分に関根の決定機がどちらもカウンターから生まれるレッズ。一方押し込む場面も増えたものの最後の肝心なところを好きにさせないレッズの守備に33分伊藤槙人が頭で合わせようとした1本しかシュートを打てない磐田。その直後にまたもレッズがカウンター。そしてPK獲得。ショルツが落ち着いて決めて3-1。前半終了間際に岩尾のロングフィードに酒井が裏に抜けてクロス、疑似カウンターから関根の裏抜けと相手にチャンスを与えず逆に決定機を作るレッズ。

後半は互いに選手交代もあり配置も変わる。レッズはユンカーと関根に代わって明本と初出場のモーベルグ投入。ショルツと犬飼も左右入れ替わり小泉が左WG、モーベルグが右WGに。磐田は大井に代わってゴンザレス。CBの大井が抜けて左右のWBがSBに入り4バックに変更。すると後半開始から僅か3分弱で来日初ゴールをモーベルグが独力で決め切る。その後スコアは動かずレッズの勝利で試合は終わるが磐田は前半より余程チャンスを作りシュートも打てていた。1番の理由は後半から入ったゴンザレスが前を向いたレッズの選手の背後から何度もプレスをかけてそこからボールを奪えていたこと。とは言えレッズも4点目以降ノーチャンスだったわけではなく三浦のビッグセーブが複数回見られたように決定機を作ることに成功していた。

■ポジティブ
不安視されていた得点力不足を払拭するスコアで勝てたこと。新加入選手がいきなり結果を出せたこと。実戦が久々のモーベルグのコンディションがかなり良いこととユンカーは今季初スタメンで前半のみとは言え今季最も長くピッチに立てたことからもコンディションが上向いてきた。

■課題
よくない失点の仕方をしたこと。2-0は危険なスコアと言われる所以は1点入ることによって流れを持っていかれ一気に逆転される可能性を恐れる心理から来ているが実際この日も失点後はしばらく相手にボールを握られてしまった。それでもチャンスは与えずシュートすら打たせなかったことは評価できるが。

■気になった選手
ユンカー
単純に相手のビルドアップが拙かっただけかもしれないが、江坂とユンカーの前からのプレスはよく連携していた。決定力は確かだがユンカーを使う際の懸念は守備面にあると思われていたがあれだけ前から連携してプレスをかけられるなら十分なのであとは90分やれる位コンディションが戻ってくれれば最高のユンカーが見られるはず。
ショルツ
元々レッズのCBの中では1番足元が確かで運べるCBなのに基本は動かずボールを前に出すのは専ら岩波だった。しかしショルツが前に出ることは本人が持つ資質以上に周りにもたらすメリットの大きさを証明した試合になった。この発見は非常に大きい。守備においても相変わらずの安定感を見せつけミスらしいミスなくレッズのゴール前に蓋をした。文句なしのマンオブザマッチ
モーベルグ
鮮烈デビュー弾もさることながら直前に打った1本目のシュート然り、62分のシュート然り、モーベルグのプレーは相手ゴールを脅かすことに成功していた。あとはボール非保持の守備対応で穴にならないような存在になれるか。前からプレスをかける動きは見られたが押し込まれた時の対応は殆ど見られなかったため未知数。守備も出来て当たりにも強いマルティノスの完全上位互換であって欲しい。
伊藤敦樹
PK獲得のシーンに代表されるような積極的な攻撃参加はカウンター時のみならず押し込んで崩しの局面でもボールに絡んでいたし、被カウンター時にもギリギリのところでタックルやインターセプトで相手の攻撃を寸断。勿論ビルドアップでも顔を出すしあらゆる局面で欠かせない選手だった。西川、江坂に次いで3番目の出場時間の長さも納得の活躍。

2022年3月24日木曜日

2022 J1リーグ 第4節 サガン鳥栖戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは平野が敦樹に、松崎が小泉に変更。鳥栖は前節からファンソッコが田代に、島川が原田に、藤原が宮代に変更。

■おおまかな流れ
立ち上がりに後ろからパスを繋いでビルドアップする鳥栖。対照的に長いボールを蹴ってビルドアップを省略しようとするレッズ。レッズが本来やりたいサッカーを相手にやられ逆にレッズはプレスに苦しみダイレクトプレーを強いられる展開。とは言えこういう展開は何もこの試合に始まった話ではなく開幕京都戦でも既に体験済み。おそらくこうなることも織り込み済みで監督は準備していたと思われる。しかし誤算もあったはずでそれこそが開幕戦ほどセカンドボールを拾えなかったこと。ダイレクトプレーの肝とも言えるセカンドボール争いに勝てずボールを収められないシーンが目についた。

早めに蹴っ飛ばしてボールを手放すレッズと後ろから丁寧に繋ごうとする鳥栖では分かりやすくポゼッションに差が出て開始15分で鳥栖64:36レッズ。とは言え一方的に押し込まれたわけでもシュートを打たれまくったわけでもなくボールが互いの陣地を行ったり来たりするオープンな展開が続く。13分を過ぎたあたりから落ち着き敵陣深くまでボールを運ぶことにお互い成功するもシュートは相変わらず打てず30分を過ぎてお互いにシュート2本ずつ。しかしこの時間から徐々に鳥栖がペースを掴みエリア内への進入とシュートが増える。スローインから逆サイドへ大きく展開したりレッズのビルドアップに対し前からのプレスでミスを誘い奪って一気にシュートまで持ち込む場面が見られる。

前半のラスト15分は完全に劣勢を強いられながらもなんとか耐え忍び0-0のまま前半終了。後半レッズは関根の配置を替えたり敦樹が前に顔を出したりシンプルにワンタッチで前線へ繋いだり前への圧を強め立ち上がりに反撃に成功する。46分にはレッズにとってこの試合最大の決定機となる明本のシュートも見られるが先制ならず。ボール非保持でもレッズのプレスがようやくハマり始め後半開始から15分は内容の伴った攻撃を見せる。

流れは依然としてレッズが握っていると思われた中で唐突に先制点が生まれたのが70分。敦樹と小泉のビルドアップのミスから自陣深い位置でボールを奪われ堀米の短いクロスに垣田が頭で合わせ失点。その後86分に一度だけ決定機を作るも奮闘虚しく敗戦。

■ポジティブ
劣勢だった前半からHTで監督が持ち前の修正力を発揮し後半盛り返したこと。

■課題
失点に繋がった敦樹と小泉のミスはあの瞬間2人とも疲れているように見えた。敦樹はフリーなのにワンタッチで小泉へリターンしてしまったし、小泉はそれに反応できなかった。ここまでの5試合で敦樹は492分。小泉は221分。小泉は敦樹に比べればそこまでの出場時間ではないし何と言っても前節から中6日あったのだからしっかりリカバリーできていなければこの先困る。では何がそこまで2人を疲弊させたのか。攻めても攻めても点が入らないことではないだろうか。終わりの見えない作業を続けることの精神的負担というのはサッカー経験のない人でも皆知っている。体はまだ動くのに集中力が続かない状態。それがあの瞬間の2人の状態だったのでは。ウノゼロの負けはスコアだけ見れば守備に問題があったように見えかねないが本を正せばゴールを決め切れないという開幕節から続いている最大の課題を解決できていないことが全ての原因になっている。いつの時代もどんな国でもサッカーについて回る永遠の悩みなので簡単な解決法は無いが「信じて続けるだけ」と言い続けてもう6試合が終わってしまった。

それと前半のゲームプランも失策のように思える。このサッカーは結果が出なかった開幕京都戦で既に見切りをつけたものと思っていた。相手は2人交代直後に先制しこちらも2人交代直後に失点したことからも采配で相手に劣っていたことも気になった。

■気になった選手
酒井
前半はかなり良くなかった。岩崎に体を入れられ頭で合わされたり、岩崎にインターセプトされたり何度かマッチアップした岩崎には負けていたようにも見えた。
小泉
酒井よりも良くなかった。小泉慶にかなりマークされボールを奪われたり背後から倒されたりしていた。危険な位置でファウルしFK献上する場面も。
関根
ボール前進にも絡めばゴール前でラストパスやシュートシーンにも絡むいつも通りの関根だったがトラップミスやパスミス等、残念ながら彼も肝心なところでミスが多かった。

2022年3月9日水曜日

2022 J1リーグ 第3節 湘南ベルマーレ戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは馬渡が大畑に、敦樹が岩尾に、柴戸が平野に、小泉が松崎に変更。湘南は前節から畑が舘に、大野が大岩に、山田が平岡に、タリクが町野に変更。

■おおまかな流れ
開始10分までにCK3本、シュート2本、相手はゼロ、自陣より敵陣でのプレーが長かったレッズが立ち上がりは主導権を握る。ただし、後ろから繋いで前線へ供給できたビルドアップはゼロ。スローインやセカンドボールを奪ってからのカウンターでボール前進が出来ていた。圧倒的にボールを握り倒して好き放題攻め続けていたわけではないもののレッズの先制点が唐突に生まれる。この日何度かあった最終ラインからの長い楔が高い位置の江坂に入りワントラップから前を向いて大畑へのスルーパス。左ペナ脇からマイナスクロス。江坂が飛び込んで右足ダイレクトのシュートは谷の左膝に当たってゴール右上隅に突き刺さりレッズ先制。

先制後も引き続きレッズ優勢のまま試合が進む。ただし相変わらず後ろから丁寧に繋ぐビルドアップは無く長い楔が最終ラインからズバッと前線に入るシーンが目立つ。この時楔を受けるのが決まって江坂なので相手も徐々に対応してくると24分にこの日湘南1本目のシュートをエリア内で打たれる。27分にも岩波が正面から腹で受けたもののエリア内で町野にシュートを打たれる。直後に山本に強引にミドルシュートを打たれるとなんと前半30分に平野を敦樹と交代。どうも平野にアクシデントがあったようだがこの交代以後シュートは打たれなくなる。ボールを握られ押し込まれる時間は減らなかったが。プレスがハマらなくなり押し込まれる時間は増えたものの相手も前がかりなせいか奪ってからのカウンターは精度高く実行できて2度ほど決定機を作れていた。

湘南はHTに平岡を米本に、茨田を永木に交代。湘南は後半球際の強度を高め少しラフでも強引に相手のドリブルを止めたりボールを奪おうとするシーンが増える。前半から引き続きカウンターが何度も発動するレッズ。60分までの間に3度明本にシュートチャンスが訪れるがまともに打てたのは大岩のタックルでゴールに飛ばなかった1本だけ。あとの2本はどちらもクロスに飛び込むも届かなかった。

レッズは59分に3枚替えを敢行。関根を小泉に、松崎を大久保に、大畑を馬渡に交代。リカルド監督にしては珍しく早い時間の交代策だったが関根の疲労などははっきり見てとれたのでこれは英断。3度のチャンスをものに出来なかったことからも明本の疲労も考慮してか、ボール非保持で前からのプレスを小泉や馬渡が担当する場面が目につき明本は左SBに下がって守備対応をするようになる。このあたりの時間からレッズはボールを奪ってから速攻をかけずゆっくり攻めるようになる。これもまた疲労の蓄積を考慮した切り替えと思われる。

その後も明確なボール前進の手立てが見当たらない湘南とカウンターに勝機を見出し何度かゴール前に迫るレッズ。湘南がウェリントンを投入するとレッズも江坂を犬飼と交代。馬渡と明本の位置を入れ替え再び明本が前線に。すると西川のゴールキックのセカンドボール争いから敦樹が前線へアバウトに蹴ると明本が抜け出し舘と大岩に前に立たれてペナルティアークでストップ。少し溜めて左をオーバーラップした馬渡へクロス。左足一発で収めて左足でニアをぶち抜きダメ押しの追加点。その後唯一恐れていたウェリントンを使ったパワープレーも見られず相手にシュートを打たせないまま2-0クリーンシートで5試合目にしてようやくリーグ戦初勝利を飾った。

■ポジティブ
ベストコンディションでなくともしっかり勝ち切ったこと。90分を通して相手に決定機を作らせずほぼ完封して勝てたこと。

■課題
ポジティブが守備面のことなら課題はやはり攻撃。この日も何度も決定機を作りながらなかなかゴールを決め切ることが出来なかった。追加点をもっと早い時間に取れればもっと有利な試合運びも出来たはず。とは言え選手も指揮官も「続ける事が大事」と何度も口にしている。この意識がチーム全体に共有されていることは重要なこと。そして実践できていることも大事なこと。信じて続けた結果が5連戦のラストにようやく結実した。次節も忘れず継続できているか注意深く見守りたい。

■気になった選手
ショルツ
最後に相手が触ってラインを割りそうになったボールをわざわざ残してパスしたら相手にひっかけるミス。ビルドアップ時になんでもない横パスを危険な位置で相手にひっかけるミス。らしくないミスの連続はやはり5連戦の疲労だろうか。今のレッズにとって最も替えのきかない選手だと思っているので疲れていてもなんとかやってもらう他ない。
江坂
先制ゴールもさることながらかなり高い位置で何度も中間ポジションをとって最終ラインからの縦パスを引き出しスルーパスを狙っていた。ボール非保持での前からのプレスも周りとよく連動し相手のビルドアップを阻害できていた。マンオブザマッチ
明本
もう2度としてくれるなと願っていたサイドバックへの配置転換だが試合中とは言えまたも便利屋の如くそこでの任務を命じられてしまった。しかし腐らず疲れていても決してサボらず最後の最後に再び巡ってきたCFWのポジションでも懸命に走りボールを収めそれこそマンオブザマッチ級の仕事をして試合を決定付けた。9節神戸戦は心底腹が立ったがやはり彼を信じて送り出した監督は正しかった。

2022年3月7日月曜日

2022 J1リーグ 第10節 川崎フロンターレ戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは宮本が酒井に、大畑が馬渡に、出場停止中の岩尾が柴戸に、松崎が明本に変更。川崎は前節から佐々木が登里に、知念がダミアン、小林が遠野に変更。

■おおまかな流れ
立ち上がりは拮抗した五分の流れ。川崎は家長の単独持ち上がりからレッズを押し込む。川崎が相手を押し込んでからのサイド攻略を急がずゆっくりやれるといつもの川崎のペースになりやすいがレッズはここの引いてからの守備で慌てることなく無理に奪おうとせず食いつかずどっしり構えて迎え撃つことができた。レッズは長いボールを蹴ってからのセカンドボールの回収でやや分がありそこからのカウンターでボール前進を図る。川崎がバックパスをすれば追撃プレスをかけ長いボールを蹴らせて回収のシーンを複数回確認できた。

16分あたりからレッズが自陣深くまで相手を引き付けての擬似カウンターを見せるようになり試合はレッズ優勢の流れに。擬似カウンターだけでなく前からのプレスもハマり始め川崎のミスが増える。26分に登里にアクシデントが発生し塚川の緊急登板があったこともミスが増えた原因の一つ。CKとシュートが増えるレッズ。川崎はファウルも増え始め自ずとセットプレーも増えていたレッズに先制点が生まれたのは偶然ではなかった。塚川が江坂に対し遅れて頭から突っ込みイエローカード。敵陣右ペナ角の手前からFKを獲得。キッカーは馬渡。蹴る瞬間誰もがゴールに向かう中唯一人岩波だけがバックステップでマークを外すとフリーで頭で合わせニアサイドに流し込み先制点。

先制後もプレスの手を緩めず前から厳しくプレスをかけるレッズ。先制後の川崎のシュートを1本に抑え1点リードのまま前半終了。後半は立ち上がりこそレッズも決定機を作るほどの流れだったもののセカンドボールが握れなくなり徐々に流れは川崎ペースに。レッズは前半に比べボールを奪ってから後ろに戻してやり直そうとするシーンが減って縦に急ぐ攻撃が増えていた。それで上手く相手のプレスをかいくぐれれば51分の明本のような決定機も作れはするが後ろがついてきていないのでやはり単発に終わっていた。奪ってからが短く終わるレッズに対し、敵陣でもじっくり時間をかけて守備ブロックを攻略しようとする川崎。

61分に後半1本目の川崎のCKから同点ゴール被弾。そして2分後にあっさり逆転。こう書くといかにも守備崩壊したかのような印象も受けるが逆転された後ではっきりと崩され決定機を作られたシーンは無かった。押し込まれるシーンは多々あったものの。その後74分に3枚替えでユンカーを今季初登板させるものの結局ユンカーのボールタッチはATにサイドに流れてクロスを上げようとした1回のみ。相手のファウルで何度かバイタルエリアからのFKを得るものの決定機創出には至らずむしろ無駄に時間ばかり浪費させられあえなくタイムアップ。

■ポジティブ
疑似カウンターをかなりの再現性を持って発動できていたこと。そこから1点でも取れていれば相手にチラつかせる価値のある強力な武器になっていたが。

■課題
後半のレッズの試合運びを見るに、ひょっとするとチームの狙いとして明確に自陣に守備ブロックを敷いてからのカウンター狙い、所謂堅守速攻を狙っていた可能性もあったのかもしれないが結果だけ見れば川崎相手にそれは悪手だった。あるいは後半頭からユンカーを使って谷口一人では帳尻を合わせられない一撃必殺のカウンターを決められれば追いつかれる前に先に追加点もあり得たのかもしれない。しかしスーパーカップでは江坂と明本の2人でやり切った追加点の記憶もまだ新しく監督もそこに期待していたと思われるが期待通りにはならなかった。川崎の修正以上に出場停止明けの明本のメンタルもスーパーカップとは大きく異なったのではないか。何せやらかし明けからの禊の1戦。自分で決めようとする意志はスーパーカップよりも強く感じたし周りも明本に取らせようとするプレーが見られた。逆転弾を浴びたきっかけになった脇坂にかわされた柴戸の食いついたシーンにしても同様にメンタル的な未熟さが起因したミスのように見受けられる。若返りを果たしたチームの宿命と割り切るか、プロとして甘いと切って捨てるかはこの先の補強の動向で伺えるはず。

■気になった選手
岩波
殊勲の先制弾を挙げたこともさることながらこの日はダミアンへの守備対応を強く意識してやっていたと感じた。ダミアンにボールが入りそうになると必ず前に出てボールをカットしていた。
馬渡
セカンドボールに対する予測が正確で速い。カバーエリアも広い。機を見て前にもガンガン顔を出せる。そして先制点を演出したキックの正確さ。試合を重ねる度に馬渡の魅力が増すばかり。彼を獲得し6番という番号を背負わせたフロントへの信頼もさらに上昇。マンオブザマッチ
明本
暴力行為による退場から出場停止明けの1戦。これまでと変わらない奮闘ぶりを見せてくれたことにまずは一安心。極力使わないようにしている言葉だがこの試合に関しては明本の「気持ち」がこもったプレーが見えた気がした。

2022年3月4日金曜日

2022 J1リーグ 第2節 ガンバ大阪戦

■スタメン
レッズは神戸戦からの入れ替えは馬渡が宮本に、柴戸が岩尾に、明本が小泉に変更。ガンバは前節から石毛が三浦に、パトリックがレアンドロペレイラに変更。レッズはミッドウィークに神戸とのリーグ戦があり同日ガンバはルヴァンカップを戦っている。ガンバは三浦とレアンドロペレイラのみ連戦となる。

■おおまかな流れ
立ち上がりガンバが黒川の左サイドからの縦の突破や昌子のサイドチェンジでレッズゴールに迫るのに対しレッズは初手から繋ぐビルドアップを選択。8分には岩尾から縦に関根、前を向いて江坂、クロスに松崎がエリア内中央で合わせる決定機。13分にも敦樹から江坂へ縦が通り関根へスルーパス。ガンバのボール非保持は前からの規制もかからなければ軽く左右に振っただけでスライドも間に合っていないような守備だった。そのうえ奪ってからのポジトラもレッズのプレスがきつく収まる選手もいないため10分以降はほぼほぼレッズがボールを握り続けるワンサイドゲーム。相手を自陣に押し込んでボールを握り続けひたすら攻め続けるというリカルド監督がやりたいサッカーが体現できていた前半ではあった。

しかし22分に関根の決定機、24分に敦樹がシュートを打ったのを最後にレッズの攻撃はやがて沈黙。ガンバがレッズの猛攻を耐え凌いだことで後ろでしっかり構えた守備で十分守り切れる自信を与えてしまったように見えた。岩波や岩尾の無茶な縦パスや小泉や松崎のトラップミスも発生。引き続きレッズがボールを握り続けてはいたしゴール前にも迫ってはいたものの肝心のシュートは34分に関根が放ったミドル1本のみで0-0のまま前半は終了した。

レッズはHTに大畑を馬渡と交代。ガンバも柳澤と石毛、レアンドロペレイラを山見に交代。レッズは前半の終盤からもそうであったように長いボール多用したビルドアップを見せ繋ぐビルドアップは殆ど見られなくなる。ロングフィード自体はなかなか通らないもののセカンドボール争いには分があるレッズが前半に引き続きボールを握るもののシュートはなかなか打てない。

ボールは持てども打てないレッズとひたすら耐え忍ぶガンバの構図のまま膠着状態が続いた80分。岩尾が2枚目のイエローカードで退場になった直後失点。失点後レッズは柴戸と犬飼を投入するも効果もなく、盛り返すどころか1人少ないせいか逆に攻め込まれるシーンが増える。犬飼に至っては完全にパワープレー要員として前線に張り付かせたままにしたものの特に見せ場もなく試合終了。

■ポジティブ
監督が本来やりたいサッカーを体現できたこと。その時間帯を作れたこと。

■課題
迂闊なカードトラブルが多いこと。この試合はたまたま岩尾が退場になったものの敦樹もどうなっていたかわからない。特に今季のレッズはトランジションやセカンドボール争いでの接触プレーを厭わずガンガン体をぶつけている。中盤の選手はなおのこと。調べてみると警告を受けた選手をすぐに交代させずに引っ張るこの傾向は昨季からのようなので選手が気を付ける以外ない。監督の選手交代が遅いことも気になる。局面を打開できる選手が少ないせいで膠着状態で切れるカードがないことには同情するが選手交代でもたらされる効果は局面の打開だけでないことくらい監督は百も承知だろう。だがこの日のような事態は想定していただろうか。中盤の選手だけは豊富に人材が揃っているだけに交代はもう少し早くてもよかったのではないかと思ってしまう。

■気になった選手
江坂
前線に決定力の無い選手が多いのだからせめて江坂にはフィニッシュワークにもっと専念させたい。ビルドアップの出口になることはおろか中盤まで下りてビルドアップに参加するなど言語道断としたい。これで下りても絶対に奪われないならまだしも背中に張り付かれると案外簡単にロストするのだから控えるべき。周りの選手もそれが出来るように振る舞うべきだと思う。とにかく簡単に下りて来ないでもっと前で我慢して欲しい。
馬渡
この試合に限らずオフザボールでやや動きすぎのきらいがある。動いてる選手に合わせるのはボールの出し手、受け手双方に技術が求められるが受け手である馬渡本人のボールタッチに自身のスピードを許容できるほどの技量は無いように見受けられる。
宮本
ボール保持においては何も出来ずバックパスに終始した。80分以上も出場させたのはひとえに人材不足なだけ。フィジカル的にももう少し強さが欲しい。

2022年3月1日火曜日

2022 J1リーグ 第9節 ヴィッセル神戸戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは酒井宏樹が大畑に、犬飼がショルツに、安居が松崎に変更。神戸は前節から大崎が初瀬に、出場停止の扇原が郷家に、汰木がボージャンに変更。

■おおまかな流れ
勝っているのに退場して試合を壊した選手が本当に不快だったためいつも以上に内容薄目でさらりと振り返り。

4:30にペナルティエリアギリギリで松崎が大迫の足を踏んでしまいPK献上。キッカーは武藤。西川は体を右に倒しながら広げた右手でボールを弾くとバーに当たってエリア内に残る。槙野が誰より早く反応したが蹴り損じて岩波がクリア。しかし直後のスローインで初瀬が入れて大迫がコーナーフラッグ付近で初瀬に戻して山口に出すとワンタッチで岩波を抜いてエリア内ゴールラインギリギリで武藤へ。浮き球を右足でワントラップして左足ボレーを放つとループ状のシュートが左サイドネットに突き刺さり神戸が先制。

しかしレッズボールで再開した失点直後の11分に同点ゴールが生まれる。大畑ロングフィード、槙野跳ね返す、山口トラップ、柴戸がプレス、関根が奪って江坂とワンツーで裏へ抜けようとしてサンペールのタックル、ギリギリ倒されずにエリア内左で松崎へ、右足のタッチで体の左にボールを置いて左足でシュート、前川が指先でほんの少し触るものの右ポストを叩きボールはゴール内側へ吸い込まれ松崎移籍後初ゴール。

キックオフからずっとバタバタしていた展開がようやく落ち着き始めた矢先の18分。左CKをレッズが獲得しキッカーは馬渡。ニアに鋭く速いボールを蹴るとGK付近に張り付いていた明本が一気に回り込んで左足でフリック。ファーサイドに落ちたボールを柴戸が頭で合わせ逆転。

その後流れは神戸がボールを握る展開になるものの決定機もエリア内への進入回数もレッズが上回り神戸はむしろ押されていた。神戸のビルドアップはボージャンや大迫が下りてサンペールから直接縦パスが出るとボール前進ができていたが、サイドに展開した時に詰まってバックパスが目立っていた。レッズのラインが低いせいか敵陣には割とすんなり運べていたものの最後の崩しまではなかなか辿り着けていなかった。右サイドはマークの受け渡し含め松崎がしっかり蓋をしていたし、左サイドは大畑が若干怪しいものの関根と柴戸のカバーが効いて神戸の好きにはさせなかった。それとレッズのネガトラで目立っていたのがファウルになってでも相手を潰し切る勢いのファーストプレッシング。特に柴戸と敦樹は見てて冷や冷やするほど厳しく当たっていた。一方神戸のボール非保持はプレスには前線から行くもののパスコースを切るプレスができていないためレッズは縦にも横にもパスが通せていた。29分の決定機への一連の流れにはそれが凝縮されていた。

ただ40分を過ぎた前半終盤にはレッズにとって危険なシーンも複数回作られていた。神戸側に生まれた変化は槙野が前に出てボールを運ぶようになったこととそれに伴い酒井高徳が高い位置をとるようになったこと。関根が酒井高徳をかなり気にして酒井高徳へのプレスも行けず背後のパスコースも切れずにレッズの左サイドから前半ラスト5分だけで3度もエリア内への進入を許してしまった。それと大迫や武藤の相手をするには大畑では荷が重すぎで何度も裏を取られてしまった。

なんとか前半をしのぎ切りHTに大畑を酒井宏樹に交代したものの明本が暴力行為で一発退場し30分以上防戦一方になったレッズが最後まで耐えきれることなく槙野に同点弾を浴び試合終了。

■課題
昨季チーム内3位の出場時間を叩き出した主力中の主力が暴力行為を働いてしまったこと。幸いにして1試合の出場停止で済んだものの事はそう単純ではない。なぜなら1度やった選手は2度やる可能性も考慮しなければならないからだ。チーム内3位の出場時間を出したのに昨季は1発レッドどころか累積警告による出場停止すら無かった。では昨季と今季の違いは何かと言えばポジションだ。駒不足のせいで昨季は専らサイドバックとして出ていたがプレスの上手さや運動量やフィジカルの強さを買われ今季はようやく本来のポジションであるFWとして出ることになった。しかし前のポジションは後ろよりも相手の守備で厳しくしつこいプレスを受けることになりファウルをとってもらえないこともあってか遂に爆発してしまったということか。しかし今季まだたったの2試合目。スーパーカップを入れてもたったの3試合でこんなことになってしまった。明本が試合後どんな反省の弁を述べたとしても自分が指揮官の立場だったら正直なところ出場停止が明けても使えない、使いたくないのが本音。それほどに彼のやったことはあまりに重すぎる問題行為だったと言える。