2021年6月20日日曜日

夏場にゴール数が減った外国人ストライカーがいるか調べてみた

浦和レッズに移籍して以降ハイペースでゴールを量産しJリーグを席巻しているキャスパー・ユンカー選手。あまりにも絶好調過ぎるからか彼に対する心配のコメントで最近やたらと見かけるのが「日本の夏ガー」「暑さへの慣れガー」といった文言。涼しい北欧出身の選手だからアフリカ人でもキツイと言われる日本の夏に適応できるか?という疑問は確かにわかる。しかしここまで心配されるというのは「北欧の選手は暑さに弱そう」という短絡的な思い込みだけではなく、夏場に大きく調子を落とした具体的な過去の選手名をJリーグサポーターは思い浮かべているのかもしれない。何しろ筆者は2012年以降のJリーグしか知らないのでそういう選手が過去にいたとしても不思議ではない。そこでJリーグに来た外国人選手を調べてみることにした。

全外国人選手をしらみ潰しに調べるのは無理なので
・北欧から来た選手
・J草創期と今とでは同じ夏場でも気温差があるので2000年以降
・J1でシーズン11ゴール以上を記録
以上に絞って調査開始。
なおソースは全てJリーグデータサイト。Jリーグデータサイトには試合ごとの気温が載っているため気温ごとの出場時間とゴール数をグラフにした。

まずはノルウェーのフローデ・ヨンセン。計13ゴールを挙げた2007年の名古屋グランパスでの気温ごとのゴール数。

計12ゴールを挙げた翌年のグラフ。

少なくともヨンセンに関しては暑くても涼しくても点が取れている。
さすがにサンプルが1人では説得材料として弱いので本当は当初シーズン12ゴール以上としていた条件を11ゴールにしてギリギリひっかかったスウェーデンのシモヴィッチの場合。計11ゴールを挙げた2016年のこれまた名古屋の記録。

シモヴィッチに関しては気温が低いほど点が取れているのが見て取れる。北欧出身で11ゴール以上縛りだとこの2人のみになるので欧州の中でも比較的涼しいイングランドから来たジェイも調べてみた。計14ゴールを挙げた2016年のジュビロ磐田での記録。

ヨンセン同様暑くても涼しくても点が取れている。出場時間当たりのゴール数では若干気温が低い方がゴールが増える傾向にはあるが。
念のため北欧縛りを除外し2人のブラジル人でも調べてみた。まずは2005年にガンバ大阪で計33ゴールを挙げたアラウージョの場合。

気温が高くなるほどゴールを量産している。もう一人のブラジル人は2018年の名古屋のジョーの場合。

31℃以上の試合で2度もハットトリックを達成しているジョー個人の成績もさることながら、この年は30℃越えの試合が6度もある地獄の猛暑シーズンだった。ちなみにこの2人を選んだ理由は年間33ゴールが最多記録だったことと、年間最多ゴール数を順に並べて割と最近のデータを選んだ場合2018年のデータが相応しかったため。昨シーズンはクラブ数が20だったり大幅な中断期間や降格なし等イレギュラーが多すぎるため通算28ゴールのオルンガはあえて除外。

「気温だけじゃなくて湿度も考慮に入れるべきだろ」とか「日本人外国人関係なく調べるべきじゃね?」とかそういう感想を抱く人もいそうな調査内容であることは認めるが、結論としては「夏場に極端にゴールが減った外国人ストライカーなど存在しなかった」という結論に至った。

そもそもユンカーのリーグデビュー戦となった5月9日の仙台戦は(レッズの)今季最高気温の27.6℃で、つい10日ほど前の天皇杯富山戦は26.2℃でユンカーはどちらもゴールを挙げている。なので正直なところ暑さへの不安視をするくらいなら他にもっと懸念事項はあるのではないかというのが個人的な感想になる。このまま使い詰めでもコンディションは落ちないか、休ませるならどのタイミングか、休ませた時にユンカーが来る前までのサッカーを表現できるか(既にユンカーに依存しすぎてはいないか)といった懸念になる。しかしそれらの懸念を吹き飛ばしてくれそうなさらなる大型補強も既に発表されている。いちサポーターとしては今の浦和レッズには大きな期待しかない。

2021年6月9日水曜日

2021 J1リーグ 第17節 名古屋グランパス戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは汰木が山中に、田中が関根に、敦樹が武田に変更。名古屋は前節から相馬が長澤に、齋藤が山崎に変更。

■おおまかな流れ
立ち上がりこそ五分の内容で攻め合っていたものの7分ぐらいから名古屋が確実にゴールに迫り始める。
名古屋はまずビルドアップにおいて蹴っ飛ばすのをやめて後方から丁寧につなぐことを選択。起点は左SB吉田。名古屋は柿谷山崎の2トップの関係が非常に良く7分と17分の決定機はどちらも2人の連携によって演出されていた。ただし、どちらも鈴木のファインセーブによって失点を阻止。
名古屋はネガトラにおいてもハマり始めそこからのショートカウンターでゴール前までボールを運ばれていた。特に米本の出足の速さが光っていた。
名古屋は守備も前からのプレスがハマりレッズは再三ボールをGK鈴木まで戻させられロングフィードを蹴らされ早々にロストしていた。

控えめに言っても防戦一方のレッズはビルドアップではロングボールを蹴っ飛ばしあっさりロスト。守備においては前からのプレスもハマらず簡単に押し込まれ最終ラインで何とか跳ね返すばかり。ネガトラは多少成功したシーンもあったものの、奪ってからのポジトラにおいては多くの選手にミスが多発しこれまたロスト。

後半頭から武田を下げて敦樹を投入。これがいきなり奏功してか立ち上がりはレッズがボールを握り名古屋を押し込む時間が増える。
前半と比べ最も変わったのは守備。前半はボール非保持でユンカーと武田で前からプレスをかけていたのが武田が交代になり小泉がこの役目を担うと後ろの連動性が前半と全く変わり見事に守備のスイッチ役として機能していた。あるいは監督がもう少し前から守備に行くようハーフタイムに修正があったのかも。
前からの守備がハマり出すと中盤でのセカンドボール回収率も上がりこれもまたポゼッションが上がる効果になった。名古屋のビルドアップでボールをランゲラックまで戻させて長いボールを蹴らせて奪うシーンも何度か見られ前半と逆の構図になった。

ボール保持においても選手一人一人の落ち着きが前半と段違いで圧倒的にミスが減った。60分の槙野や65分の柴戸のフェイント等は前半のビルドアップ時には一切見られなかったプレーだった。

後半、試合の流れは支配できていたものの相変わらずシュートが殆ど打てない。しかも後半2本のシュートは2本とも関根の宇宙開発。一番ゴールが生まれそうだったシーンは70分に汰木の裏抜け成功からのユンカーへのクロスを入れたシーン。結局お互い決定機は作れずスコアレスドローで決着。

■ポジティブ
これまで再三課題として挙げてきた交代カードを切ってからの守備強度低下の問題だが、この試合に関しては交代で入った選手が組織として機能し交代前までの流れを途切れさせることなく最後まで締まった内容で試合を終われた。勿論ゴールを奪えれば理想的ではあったもののコンディション向上の兆しが見えただけで今は満足。もうここまで来たらはっきりと言ってしまうと興梠のことなのだが前節の試合後コメントで「近いうちに取れるだろうという思いはありました」とか「もっと良くなると思います」とか言っていたのでようやく調子が上向いてきたのは間違いないものと思われる。

■気になった選手
鈴木
前半2CBがいいようにあしらわれ柿谷や山崎に簡単に抜け出されるせいでこの日の鈴木は大忙し。前半だけで2度のファインセーブ。防戦一方と言って差し支えない内容で勝ち点1を取れたのは間違いなく鈴木の尽力が一番大きかった。マンオブザマッチ
小泉
鈴木の次にゴール前で最も相手のチャンスを摘み取ったのが小泉。危機察知に長けているというか攻め込まれると最後はいつも小泉がラストパスを中央で止めていた。一方で攻撃面は不発。
敦樹
足元のない選手というのはボールを止めて収めることが苦手でラフなボールをワンタッチで返して次の受け手にもラフなまま出してしまうことが多い。今季ここまで敦樹の試合を見てきた個人的な評価で言えば敦樹には足元がある。なので受け手に負債を負わせるパスを減らして欲しい。
関根
判断力の悪さ遅さばかり目立った。リーグ戦は4試合ぶりのスタメンなのにこの出来では再びベンチ生活に戻ったとしても不思議ではない。


2021年6月3日木曜日

2021 J1リーグ 第16節 サンフレッチェ広島戦

■スタメン
レッズは前節からの入れ替えは阿部が柴戸に、武藤が小泉に変更。広島は前節から柏が東に、川辺が柴崎に、浅野が長沼に、青山がハイネルに、森島がエゼキエウに、浅野が長沼に変更の大幅なターンオーバー。
また、レッズは前節から中3日の日程に対し広島は中2日。しかも第7節の4月3日から17連戦中の16試合目。

■おおまかな流れ
立ち上がりはお互いに長いボールを蹴り合って中盤でのセカンドボール争いが多発。広島のロングフィードのターゲットは主にジュニオールサントス。サントスへのボールはマンマークのタスクを与えられたかのように槙野が徹底的に跳ね返す。一方レッズのロングフィードは主にユンカーがターゲット。広島同様ユンカーまでボールを届けることはできない。

8分くらいからお互い最終ラインから最前線へ一気のロングフィードは止めて後方からつなごうとするビルドアップが見られ始める。ただここでもお互いにビルドアップを完結し崩しの局面まで持っていくことはできない。

そんな中、レッズがこの試合初めてラインブレイクできた13分に最初のチャンスをいきなりものにしたユンカーが先制点をあげる。どちらかと言えば撤退守備をベースにした堅守のイメージがある広島だがこの試合に関して言えばラインは高めに設定されていて、その高いラインの裏のスペースを狙った田中とそれに呼応した小泉のスルーパスがまず見事。こぼれ球にしっかり詰めて左から再度クロスを上げた汰木も、そして倒れた後すぐに立って押し込む準備が出来ていたユンカーも良かった。
おそらく広島としてはトランジションに全集中の呼吸で中盤でボールを奪ったら速攻でカウンターをかけて一気にゴール前に迫りたい意図があり、そのための高いライン設定だったのではと思われる。

流れの無い中から不意打ち気味に先制点を食らった広島だがその後ほどなく同点にする。左CKをハイネルが直接ねじ込んだ。
問題は試合を振り出しに戻されたこの後の展開。ポゼッションは確かにレッズが上だったがピッチの中では広島の選手の方が手応えを感じていたのではないかと思えるほどレッズのビルドアップは上手くいかなかったし、対照的に広島のビルドアップはアタッキングサードまでボールを運ぶことに成功していた。もっともシュートは殆ど打たせなかったが。

レッズのビルドアップが何故上手くいかなかったかは広島の守備がハマっていた以上のことはわからなかったが、広島のビルドアップが何故上手くいっていたかは幾つか思い当たる節があった。
1つはCBである野上と佐々木が思い切って前に出る回数が多いこと。サイドの攻防において数的有利を作ることに成功していた。
2つ目に中盤でボールを持てて簡単に後ろに下げない選手が何人かいたこと。
最後にユンカーの前からのプレスが弱いこと。時折気まぐれにユンカーがプレスをかけると中盤で奪い返せることが多かったのでもっと行って欲しかった。

後半に向けて見えた僅かな光明もあって、それこそが前半終盤に小泉が見せた前線からの守備のスイッチ。小泉が前からプレスをかけた場合は中盤でボールを奪うことに成功していたシーンが実は前半終盤だけでなく16:35や18:20のシーンなど序盤にもあった。

後半、広島は小泉に対し佐々木がマンマーク気味に再三背後からプレス。そのせいか前半から引き続きレッズのビルドアップはままならない。立ち上がりに2度カウンターを仕掛けるシーンがあったがどちらも決定機には至らず。後方から細かくつなぐことを諦めたように無茶なスルーパスを通そうとするも前の選手は触れずにロストするシーンが増える。「光明」と表現した小泉の前プレスは後半も見られたが前半ほどのボール奪取は成功せず。

広島のボール保持は立ち上がりこそ上手くいかないものの57分に浅野と川辺を投入すると57分に浅野のフリックでエゼキエウにラストパス、61分に川辺のチャンネルランで裏抜け即シュート、63分に川辺のスルーパスに浅野の裏抜け成功とそれぞれアタッキングサードで決定的な仕事を再三見せてレッズゴールを脅かした。

後半飲水タイムの前後にユンカーが少し下りてビルドアップが成功するシーンが計3度見られるがいずれもシュートは打てず。惜しまれながらもユンカーは興梠と交代。
その興梠が83分にエリア内で荒木のハンドを誘いPKを獲得し自らこれを決める。その後AT7分を含めた残りの13分ほどは完全にポゼッションを放棄し相手に一方的に攻められ続ける時間が続く。徐々に徐々に危険なシーンを作られATに川辺のミドルによって失点。そのままドローで試合終了。

■課題
別の試合の課題でも何度か挙げているように、途中交代で入った選手が状況を改善させられなかったこと。確かに2点目は交代で入った山中のフィードと同じく交代で入った興梠の折り返しによるPK獲得だった。だがそのPK獲得のシーン以外で試合の流れを取り戻すまではいかなくとも相手の攻撃をもう少し制限をかけるくらいの働きはできなかっただろうか。ダメ押しの追加点を取りに行く素振りすら見せず完全に逃げ切る意思統一はチーム全体でできていたはずだがそれでも耐えきれず失点してしまった。前半を無失点で耐え後半に攻守の要を同時投入し相手に主導権を渡さないまま2ゴールを奪い快勝した前節との名采配ぶりと比べると今節はあまりにも残念過ぎる結果に終わってしまった。

■気になった選手
汰木
前節前半にビルドアップの機能不全を何とかしようと一人で打開してくれたあのプレーをこの日ももう一度と期待しながら見ていたが期待したプレーは最後まで見られなかった。
槙野
サントスへのフィードを何度も跳ね返し。抜かれた明本のカバー。クロスをクリア。ドリブルをブロック。1試合に1度くらい見せる持ち上がってのビルドアップが成功すれば完璧なのだがまあそれが無くても十分な働き。マンオブザマッチ
ユンカー
あっさり先制点を奪ったシーン以外前半は殆どボールを届けられなかったが、後半関根にレイオフ、フリックで柴戸へつなげて決定機のお膳立て、間で受けて前を向いてサイドに流して中央へ飛び込む等、前線で張ってるだけでも十分な脅威になるが下りてビルドアップの出口になってもしっかりと前線へつなげフィニッシュの一歩手前まで漕ぎつけていた。何か起きるとすれば彼だけのように見えたのでできれば90分最後まで見たかった。
柴戸
いつもより前を向く回数が少なかったかなとは思うものの、パフォーマンス自体に大きな不満は無い。ただもう少しプレースタイルを変えて欲しいと思うシーンが目立つ。接触プレーや交錯シーンによって倒れ足を痛めているシーンが多々見られた。体を張ってボールを守らねばならない重要なポジションであることは重々承知しているものの、自らを危険に晒すプレーを続けているといつか取り返しのつかない怪我をしそうで見ていて怖い。替えのきかない選手だけにどうしてももっと体をいたわるプレーを願わずにいられない。