レッズは前節からの入れ替えは岩波が犬飼に、明本がユンカーに変更。磐田は前節から契約上レッズとの試合に出られない杉本がジャーメインに変更したのみ。
■おおまかな流れ
レッズは開始6分でCKからの先制に成功したため一見再現性のない偶発的な先制に見えたかもしれないが、CKを得るに至った過程が決定機演出によるものなので必然の先制点と言っていい。この日レッズがビルドアップする上でのいつもと最大の違いは犬飼がスタメンで出たこと。開幕京都戦も犬飼は出たが隣はショルツではなく岩波だった。この日は真ん中に犬飼、右にショルツ、左に大畑の3人でビルドアップを開始する。酒井は大きく前に出てライン際に立つと割とフリーになって45秒に岩尾から酒井、5分に小泉から酒井とどちらも磐田DFラインの裏に抜け出してクロスを供給できている。いつもの酒井はここまで高い位置を取れないがこの日は酒井サイドの右にショルツが立ちショルツがボールを持って前に出れると酒井も高い位置を取れていた。さらにこの日はスタメンにユンカーがいたため先制する6分までの間に3度もユンカーを狙ったボールを供給できていた。
2点目は江坂のプレスで相手のビルドアップのミスを誘い最後はユンカーの個人技で追加点というもの。しかし2点目から僅か3分後に関根が危険な位置で鈴木を倒しFKを献上するとあっさり1点返されてしまう。レッズの守備は十分に人数は揃っていて抜かれて即失点となるような状況でも無かったように見えた。その後磐田にボールを握られる時間が続く。磐田のビルドアップのキーマンは松本。彼が常に幅を取る役目を担ってジャーメインに縦に出したり、遠藤とのコンビネーションから自身が裏に抜け出したりして繋ぐビルドアップでは常に松本からボールが出ていた。とは言え松本がいる左サイドはショルツと酒井がいるレッズの右サイド。決定機はおろかシュートも打たせない。ただレッズの不用意なロストからのカウンターのほうが磐田はゴール前に迫れていた。レッズはボールを失った直後のプレスが上手くハマらなかった。
21分にユンカー、31分に関根の決定機がどちらもカウンターから生まれるレッズ。一方押し込む場面も増えたものの最後の肝心なところを好きにさせないレッズの守備に33分伊藤槙人が頭で合わせようとした1本しかシュートを打てない磐田。その直後にまたもレッズがカウンター。そしてPK獲得。ショルツが落ち着いて決めて3-1。前半終了間際に岩尾のロングフィードに酒井が裏に抜けてクロス、疑似カウンターから関根の裏抜けと相手にチャンスを与えず逆に決定機を作るレッズ。
後半は互いに選手交代もあり配置も変わる。レッズはユンカーと関根に代わって明本と初出場のモーベルグ投入。ショルツと犬飼も左右入れ替わり小泉が左WG、モーベルグが右WGに。磐田は大井に代わってゴンザレス。CBの大井が抜けて左右のWBがSBに入り4バックに変更。すると後半開始から僅か3分弱で来日初ゴールをモーベルグが独力で決め切る。その後スコアは動かずレッズの勝利で試合は終わるが磐田は前半より余程チャンスを作りシュートも打てていた。1番の理由は後半から入ったゴンザレスが前を向いたレッズの選手の背後から何度もプレスをかけてそこからボールを奪えていたこと。とは言えレッズも4点目以降ノーチャンスだったわけではなく三浦のビッグセーブが複数回見られたように決定機を作ることに成功していた。
■ポジティブ
不安視されていた得点力不足を払拭するスコアで勝てたこと。新加入選手がいきなり結果を出せたこと。実戦が久々のモーベルグのコンディションがかなり良いこととユンカーは今季初スタメンで前半のみとは言え今季最も長くピッチに立てたことからもコンディションが上向いてきた。
■課題
よくない失点の仕方をしたこと。2-0は危険なスコアと言われる所以は1点入ることによって流れを持っていかれ一気に逆転される可能性を恐れる心理から来ているが実際この日も失点後はしばらく相手にボールを握られてしまった。それでもチャンスは与えずシュートすら打たせなかったことは評価できるが。
■気になった選手
- ユンカー
- 単純に相手のビルドアップが拙かっただけかもしれないが、江坂とユンカーの前からのプレスはよく連携していた。決定力は確かだがユンカーを使う際の懸念は守備面にあると思われていたがあれだけ前から連携してプレスをかけられるなら十分なのであとは90分やれる位コンディションが戻ってくれれば最高のユンカーが見られるはず。
- ショルツ
- 元々レッズのCBの中では1番足元が確かで運べるCBなのに基本は動かずボールを前に出すのは専ら岩波だった。しかしショルツが前に出ることは本人が持つ資質以上に周りにもたらすメリットの大きさを証明した試合になった。この発見は非常に大きい。守備においても相変わらずの安定感を見せつけミスらしいミスなくレッズのゴール前に蓋をした。文句なしのマンオブザマッチ。
- モーベルグ
- 鮮烈デビュー弾もさることながら直前に打った1本目のシュート然り、62分のシュート然り、モーベルグのプレーは相手ゴールを脅かすことに成功していた。あとはボール非保持の守備対応で穴にならないような存在になれるか。前からプレスをかける動きは見られたが押し込まれた時の対応は殆ど見られなかったため未知数。守備も出来て当たりにも強いマルティノスの完全上位互換であって欲しい。
- 伊藤敦樹
- PK獲得のシーンに代表されるような積極的な攻撃参加はカウンター時のみならず押し込んで崩しの局面でもボールに絡んでいたし、被カウンター時にもギリギリのところでタックルやインターセプトで相手の攻撃を寸断。勿論ビルドアップでも顔を出すしあらゆる局面で欠かせない選手だった。西川、江坂に次いで3番目の出場時間の長さも納得の活躍。